Project/Area Number |
23K00354
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 太助 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 准教授 (90523176)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2027: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | アメリカ演劇 / ケア / 演劇理論 |
Outline of Research at the Start |
演劇では、様々な対立を軸にドラマを構成することが一般的であるが、20世紀末から21世紀初頭にかけてのアメリカ演劇では、社会における対立の克服と他者との連帯の模索がテーマとして前景化され、アメリカ社会における分断と対立の諸相が浮き彫りにされる一方、そうした変動により様々な身体的・精神的トラウマを抱えることとなった人々に対するケアの重要性も議論されるようになった。本研究では、アメリカ演劇におけるケアの表象を軸に、対立から連帯へのパラダイム転換の歴史的変遷の検証およびその理論的枠組みの構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、対立を軸に演劇を分析する従来のアメリカ演劇研究のアプローチを批判的に検討するために、他者との連帯や他者への気遣いを前景化し、ケアによる人間同士の関係性構築と社会の分断の克服という新たな機運の演劇における表れ方を具体例に即して検証することで、分断から連帯へのパラダイムシフトの歴史的変遷を跡付け、その理論的枠組みを構築することを目指すものである。 初年度にあたる令和5年度は、当該研究分野における重要概念および論点を基礎の部分から洗い出すことに専念し、文献資料の収集と調査および演劇の上演ならびに関連する展示やパフォーマンスを実際に観覧・鑑賞することで、理論と実践の両面におけるデータ収集を行った。また学会においてシンポジウムの企画立案と司会を担当し、当初計画では令和7年度に実施する予定の現代女性劇作家に関する研究成果の報告を行った。その成果は、令和6年夏に発行予定の学会誌に論文として投稿し、現在同誌の編集作業が進行中である。 初年度の実例調査において特に留意したのは、ケアという行為またはその経験を物語内容として演劇がどう取り込むかだけでなく、演劇を作り・届け・受容するという一連の具体的かつ社会的なプロセスそのものが、ケアというものの実際の在り方やそれを取り巻く社会の状況を表現し伝達するための有効な手段となりうるという視点である。配信や映像作品として鑑賞するのではなく、演劇により多数の他者とともに同じ空間と感情を共有することの意義が見直されるコロナ禍以後の現在、演劇という文化的営為そのものがケアを施す場となり、またコロナ禍によりダメージを被った演劇というジャンルそのものがケアを受け修復するという点で、演劇とケアの関係には多面的なアプローチが可能であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度中に論文や著書の形で成果を発表することはできなかったが、当初計画では初年度を基礎的な文献調査とデータ収集に充てる予定であったため、計画からの大きな逸脱はないものと考えられる。ケアの概念とその文学や演劇における応用と発展について概略をまとめ、今後の研究で取り上げるべき具体的な作品や事例を選定し研究のアウトラインを定めることができたため、令和6年度中のしかるべきタイミングでその成果を研究発表や論文の形で報告することを目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、エイズと新型コロナウイルス感染症などに関連する作品と事例を中心に研究を進める。また病だけでなく、テロ事件や戦争などの大きなトラウマを生じさせる事象とケアの関連性と演劇におけるケアの実践についても同時進行で調査を進めたい。後者は令和8年および令和9年に実施予定の研究内容となるが、複数のテーマにまたがって扱うべき作品や事例も多いため、年度をまたいで継続的に研究を進めるようにしたい。具体的には『RENT』や『カムフロムアウェイ』などのミュージカル作品や、『カラーパープル』などの翻案作品におけるケアの表象およびその時代ごとの変化について分析を進め、研究発表と論文の執筆を行うものとする。
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