Project/Area Number |
23K00363
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
金子 千香 日本大学, 工学部, 講師 (10825673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 宗央 松山大学, 経営学部, 准教授 (10707920)
天海 希菜 日本大学, 文理学部, 助手 (60961604)
上滝 圭介 埼玉医科大学, 保健医療学部, 講師 (60973500)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2027: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2026: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | John Milton / Heroism / Dual Heroism / Female Hero / Latin Elegies / Italian Sonnets / Poems 1645 / Imitatio Christi / ネオラテン語 / ジョン・ミルトン / 英雄観 / 国民概念 / キリストに倣いて |
Outline of Research at the Start |
本研究は、17世紀に「国民概念」を逸早く提唱し、イングランド国内のみならず国外にも広めたジョン・ミルトン(John Milton, 1608-74)を取り上げ、当時ヨーロッパの国際共通語であったラテン語と、英語を用いて執筆されたミルトンの作品群を、一つの総合テキストとして扱いながら多角的、包括的、総合的に考察し、ミルトンの「国民概念」がネオラテン語言説圏と英語言説圏という二つの言説圏を通じて胚胎され、成熟していく軌跡を解明するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、令和5~9年までの5年間計画において、17世紀に国民概念をいち早く提唱したジョン・ミルトンを取り上げ、当時イギリスの精神風土ともいえる「正しき範例=イエス・キリストに倣いて」を中心的な視座としながら、国民概念がネオラテン語言説圏と英語言説圏という二つの言説圏を通じて胚胎され、成熟していく軌跡を解明することである。以下は、初年度である令和5年度の研究実績の概要である。①トマス・ア・ケンピス著『キリストに倣うことについて』とその関連書籍の通読を通して、基軸概念が15世紀以降キリスト教社会の精神風土をなすまでに伝播、浸透し、17世紀の英国においては清教徒革命を起因する要因の一つとなっていた時代背景を検証した。②志鷹英行による英雄像の二層構造論と野呂有子による女性英雄論を援用し、これまで合わせて研究されることのなかった詩作品群(イタリア語ソネット群とラテン語エレゲイア群)を分析、自らを「第一女性英雄(=キリスト的資質を備えた詩人)に倣いて」歌う「第二英雄(=情欲を克服し理想を志向する詩人)」とみなすミルトンの自己像の形成過程を解明した。③第二英雄=詩人ミルトンによる英雄的行為が、誘惑に陥りかけるものに向けられる勧告・説得という形で表現されることを検証、ミルトン的論述形式の事例を考察した。それにより、これまで未確定であった「第七エレゲイア」の創作年代の確定に有力な論拠を示すに至った。④19世紀のDavid Masson による信頼できる伝記Life of John Miltonと、これを補完するGordon Cambell著A Milton Chronology(1997)他を基盤として、伝記的事実からミルトン家の系譜を再精査している。⑤Webサイト『ミルトン・デジタル・アーカイブズ』を創設。新たに二冊の電子ブックを公開した。今後の基礎研究の基盤となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、17世紀における「キリストに倣いて(Imitatio Christi)」の社会的受容を精査し、本概念がミルトン自身の中でいかに受容され作中に表れているかを検証した。具体的には、研究分担者及び研究協力者との共同研究において当初の計画通り、研究対象となる小詩作品86篇の原典のデジタルアーカイブ化を完了、加えてラテン語詩、ギリシア語詩、イタリア語詩に関するコンコーダンスを作成し、原典精査を中心とする基礎的研究の基盤を整えた。(なお、これらは研究サイト『ミルトン・デジタル・アーカイブズ』(https://milton-digital-archives-nykkntkcak.com/)を創設し、Web上で一般公開している。)そのうえで『1645年版詩集』収録の小詩作品からイタリア語ソネット二篇、ラテン語エレゲイア四篇、ラテン語改詠詩一篇、そして英語頌詩一篇を厳選し、ミルトンの「国民概念」の中心となる英雄観の萌芽と発展について考察し、若き詩人が最も完璧な英雄とみなすキリストとその教えを模範としながら、自覚的成長を遂げていく姿を跡付けた。検証過程で、イタリア語ソネット群における英雄観の解明、改詠詩の執筆年の特定、小叙事詩としての頌詩「キリスト降誕の朝に」の位置と戦略の構図の解明他に至った。これにより仮説としていた「キリストに倣いて」の主題とミルトンの作品群を一つの総合作品として構造的に分析・読解することの有意性が確信された。 同時に、ミルトン作品に表れる女性英雄観に関連して、ミルトンにとって身近な女性である「娘たち」との関係を示す伝記的事実の再精査を実施し、詳細な家系図を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度(研究計画2年目)は、引き続き主題『1645年版詩集』収録の小詩作品を俯瞰的に分析し、「キリストに倣いて」を中心的視座としながらミルトンの英雄観およびそれを表す論述形式を検証していく。ここまでの研究で、英雄像の二重構造、「自己確立と内なるSatan追放」の図式、小叙事詩としての頌詩「キリスト降誕の朝に」の位置と戦略の構図などが、イタリア語ソネット群、ラテン語エレゲイア連作詩群、エレゲイアと頌詩の同時誕生、過去の作品と現在の作品を合併させて新たな作品とする「脱構築者ミルトン」の「自由なる叙事詩人」像を確定し、後の作品群に継承されていることが確認された。さらに「賞賛から勧告へ」という説得のひとつの型、そして深化し拡充された論述形式・方法・内容は、離婚論争や宗教論争、政治論争を経て、『偶像破壊者』(1649)『第一弁護論』(1651)『第二弁護論』(1654)『自己弁護論』(1655)等における論敵との議論の応酬の中で一層、精緻に練られ精製されて後の作品へと継承され、収斂していくことになる。これらの具体的検証と証明については、今年度以降の研究の課題とする。 具体的には、研究計画1年目で作成した『ジョン・ミルトン「1673 年版詩集」と「1645 年版詩集」原典比較対照版テキスト』(https://milton-digital-archives-nykkntkcak.com/poems/)を基に『1645年版詩集』と『1673年版詩集』の比較考察に基づき、本概念に関するミルトンの意識の通時的変化を分析する。これは、最終的に青年期の小詩作品から散文作品へ視野を広げ、「1673年版詩集」に付して再版された「教育論」(Of Education, 1644)における「キリストに倣いて」の主題を分析することにつながる。
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