Project/Area Number |
23K00365
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
和氣 一成 中央大学, 人文科学研究所, 客員研究員 (10614969)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2027: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | トラウマ / 新奴隷体験記 / 憑在論 / ポストメモリー / ポストコロニアリズム / ハイチ / ネオ・スレイヴ・ナラティヴ(新奴隷体験記) / ト ラウマ / アフロフューチャリズム |
Outline of Research at the Start |
奴隷制度の歴史は過去にのみ属する「歴史的事実」ではなく、アメリカ国家の主体形成に いまだに根深く大きな影響を与え続け、亡霊(的存在)として反復的に回帰し続けている。公民権運動以降のアフリカ系アメリカ文学の、19 世紀の奴隷体験記の語り直しを通じて歴史の不在に抗うネオ・スレイヴ・ナラティヴ(以下、新奴隷体験記)では、作家たちがトラウマとしての奴隷制度の記憶と歴史とその表象を再想像/再創造し、「歴史」を揺るがす。本研究では新奴隷体験記の作品を対象として、トラウマとしての奴隷制度の概念/表象を、トラウマ、憑在論1、ポストメモリー、ポストコロニアリズムの観点から探究する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度の研究計画(Edwidge DanticatのThe Farming of Bones [1994]研究)に従って研究を実施した。 本作品における主人公アマベルは、1937年ドミニカ共和国軍事独裁政権下(総統トルヒーリョ)に起きたハイチ人虐殺という民族浄化の悲劇を経験する。作品中でアマベルがハイチとドミニカ共和国の間に一本の川を渡る際に、アマベル個人の記憶を超えて、民族の記憶が彼女の記憶へと接続される。Fred Motenの“underommons”という概念と、逃亡性というキーワードをもとに、本作品中に見られる逃亡の表象が、単に受動的なものではなく肯定的抵抗としての「逃亡」という可能性を胚胎している点を精査した。 アマベルの物語は、単なる個人の経験だけでなく、より広い社会的・政治的な背景と密接に結びついていると捉えることが可能である。彼女の旅は、個人的な苦難だけでなく、民族全体の苦難として語られている。その川を渡る瞬間は、単なる移動だけでなく、境界を超える勇気と決意の象徴として描かれている。 この作品では、逃亡が単なる身体の行動だけでなく、精神的な抵抗としても描かれている。アマベルが逃れることで、彼女は自らの尊厳とアイデンティティを守るための自己主張の行為として提示される。彼女の行動は単なる逃亡ではなく、抵抗の行為として位置付けられる。 さらに、作中の逃亡のテーマは、個人の物語だけでなく、歴史的な闘争と結びついている。アマベルの逃避行は単なる個人的な行動ではなく、抑圧された民族の声を象徴している。その意味では、彼女の行動は歴史の一部として語られ、将来の世代に受け継がれる可能性を内包している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
19世紀の奴隷体験記の語り直しを通じて歴史の不在に抗うネオ・スレイヴ・ナラティヴ(以下、新奴隷体験記)の一例として本研究を実施した。Edwidge Danticatがトラウマとしての奴隷制度の記憶と歴史とその表象を再想像/再創造し、「歴史」を揺るがそうとする痕跡を活写することを目的とした。。本研究ではThe Farming of Bones を対象として、トラウマとしての奴隷制度の概念/表象を、トラウマ、憑在論、ポストメモリー、ポストコロニアリズムの観点から探究した。研究成果は論文として発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和6年度の研究計画(Teju ColeのOpen City [2011]研究)を実施予定 本研究では、帝国主義を背景とした日系人強制収容所の記憶、ネイティヴ・アメリカン虐殺の記憶、奴隷制度というアメリカ国家の複層的トラウマが3つの大陸の歴史の交差点においてどのような力学を形成するかに着目し、批評家Paul Gilroyの“Black Atlantic”(黒い大西洋)という視座から、トラウマとしての奴隷制、黒人の抵抗と自立の歴史について検証していく。
|