Project/Area Number |
23K00391
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
高橋 美知子 福岡大学, 人文学部, 教授 (90389388)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | スコット・フィッツジェラルド / ゼルダ・フィッツジェラルド / モダニズム / 剽窃 / 女性作家 / フィッツジェラルド |
Outline of Research at the Start |
本研究では社会的弱者としてのゼルダ・フィッツジェラルドに注目する。彼女の夫スコットは作家としての地位を確立する過程で、その作品にゼルダの文章を利用し、それを剽窃だとする彼女の告発は無視された。スコットの作家活動への彼女の貢献の全容は未だ解明されていない。また、ゼルダの作家活動の認知度は低く、彼女自身の<声>は断片的にしか検証されていない。本研究は夫妻の作品・日記・手紙類のテクスト分析を行なうとともに、モダニズム期の社会状況や出版状況の研究・分析を通して、ゼルダの声の搾取を引き起こしたジェンダー観や市場原理の仕組みの解明に取り組みつつ、ゼルダのスコット文学への貢献の全容の整理・解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿い、1920年代前半にスコット・フィッツジェラルドがゼルダ・フィッツジェラルドの日記や手紙をどのように作品に取り込んでいたかについての研究を行った。特に、スコットの作品に取り込まれる過程でゼルダの<声>が、如何にスコットの<声>に上書きされていったかに着目した。ゼルダは作家として広く認知されている人物ではないが、彼女がスコット以上にモダニスティックな<声>を持つ書き手であるということは、デボラ・パイクや高橋の過去の研究により指摘されている。また、自由で口語的な彼女の<声>のユニークさは、スコットや、彼の周囲の文学者にも認められていた。 スコットはゼルダのエクリチュールに認められる鮮烈なイメージや独自の言語チョイスを活かしつつも、自身のスタイルに合わせたチューニングを行うことで、ゼルダの日記や手紙からの抜粋をを違和感なく自身の作品に組み込むことに成功している。 一方で、ゼルダのプライベートなエクリチュールは、スコットの作品の一部として取り込まれ公にされる過程で、彼女らしい<声>を失ってしまう。結婚生活の初期においてゼルダはスコットの行為を公に「剽窃」と糾弾したが、それが問題となることはなく、現在に至るまでスコットの行為は批判を免れており、ゼルダ自身も当時のジェンダーシステムの中では、彼の行為を黙認せざるを得なかったことなどを明らかにした。 今年度の研究成果については、2024年3月10日に北九州大学で行われたWorkshop in Kitakyushu において、"Unveiling the Artistic Interplay of Zelda and F. Scott Fitzgerald" のタイトルで口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1920年代前半においてスコットがゼルダの言葉をどのように自身の作品に取り込んでいるかの研究は進んだが、その箇所が作品全体の成立に如何に貢献しているかや、ゼルダの声の搾取を出版業界の市場化という観点から分析する点については十分に研究を進められなかった。このような点においてやや遅れはあるものの、総合的に見ておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度はスコットのThis Side of Paradise (1920)、The Beautiful and Damned (1922)の中にゼルダのエクリチュールがどのように取り込まれているかの研究を継続しつつ、ゼルダのエクリチュールがスコットの作品の成立にどのような役割を果たしているかという観点からの分析や、出版業界の商業化が彼女の声の搾取にどのように影響したかについてリサーチを進める予定である。
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