Project/Area Number |
23K00411
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山内 功一郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20313918)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | アメリカ詩 / 現代詩 / オブジェクティヴィズム / オッペン |
Outline of Research at the Start |
本研究の概要を端的に述べれば、次の通りである――「アメリカの詩人ジョージ・オッペンが実践した「オブジェクティヴィズム」が、「非人間中心主義」の有効性を示していることを証明する」。ジョージ・オッペンは現在最も再評価の機運が高まっている20世紀アメリカの詩人の一人である。 一見すると正論であり美徳であるかのように思われる「人間中心主義」は、特に近代以降から現代に至る時代的変遷の中で様々な弊害を生じさせてきた。本研究は、この点を是正する視点をオッペンの作品が示していることを証明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究計画期間の初年年度にあたる2023年度には、『早稲田大学大学院文学研究科紀要』第69号に論文「「不連続の連続」について――ジョージ・オッペンの『ディスクリート・シリーズ』を読む」を発表した。副題に示している通り、これは本研究課題の中心的な対象となる詩人ジョージ・オッペンの第一詩集を分析する試みである。特にこの論文は、モダニズム(特にパウンド・ウィリアムズ)の系譜に位置付けられる詩人オッペンが、どのように先行世代の詩人たちによる成果を継承し、さらにそこから新たな局面を切り拓いたかという点について分析した。とりわけ本論文の成果は、オッペンがパウンドの提唱した「光り輝く細部」の探求を自らの課題としていながらも、敢えてそれらの細部が全体主義的な叡智を構成しないよう作品中に空白を呼び込んでいる点を解明できた点において認められるだろう。この点は、初期オッペンの本質的な特徴(すなわち「不連続の連続」)が本研究課題と密接に結びついていることを示している。 また今年度の主要な成果として、カリフォルニアに渡り現地においてオッペンやその周辺領域の詩人や研究者たちに対する取材およびリサーチを遂行することができた点にも触れておきたい。特に現在アメリカを代表する詩人の一人に数えられるマイケル・パーマーに対するインタビューを複数回にわたって行うことができたので、パーマーによるオッペンの作品解釈や詩人としての評価も確認することができた。この成果の一部は、既に上述の論文「「不連続の連続」について」の作成に組み込むことができたし、さらに今後も活用していく予定である。 総じて2023年度には、主に学術論文とリサーチによって、当初の予定通り本研究課題を推進することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述のように、研究計画の初年度に本研究課題の中心的な対象であるジョージ・オッペンをめぐる論文「「不連続の連続」について」を発表できたことの意義は大きい。端的に言えば、これはオッペンがモダニズムをどのように批判的に継承したか(あるいは継承しつつも批判したか)という点を解明した論文なので、その射程は本研究課題の主要テーマ「非人間中心主義」の探求へとつながっていくはずである。 先行世代の詩人エズラ・パウンドとオッペンの影響関係にフォーカスを絞り、両詩人の共通点のみでなく相違点についても解明した本論文は、学術的にも新たな貢献となった。と同時に、余白や欠損が詩において有する機能を分析した点において、アメリカ詩の領域を超えた現代詩論をめぐる成果にもなったと言える。 また2023年度に行ったカリフォルニアでのリサーチ中でも、特にマイケル・パーマーとのインタビューから得られた情報の一部が論文作成に役立ったことは既に述べた。パーマー自身の作品も空白や欠損を敢えて呼び込むことによって詩人の主体的な意思を凌駕する詩的言説の可能性を示しており、この点が彼にとって先行世代のオッペンと通じている。こういったことをリサーチによって確認できたことは極めて有益であったし、今後研究課題を推進する上でも大いに役立つことが予測できる。 なお、本研究課題を推進するにあたっては、さらにオッペンの第二詩集以降の作品分析も推進する必要がある。これについては、リサーチを行いつつ個々の作品解釈を周到に行うことができた。 さらに進捗について述べれば、2023年度は国内外の研究者や詩人との情報交換を十分行えたので、3年に渡る予定の本研究課題の基盤造りを極めて順調に推進できたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に行ったカリフォルニアにおける現地リサーチの成果の御蔭で、広い視座に立って本研究課題を推進するための土台ができた。具体的に言えば、オッペンの同世代または後続世代の詩人たちまで含めた展望のもとで、オブジェクティヴィズムの現代的意義について考察することが、現時点においては可能となっている。 そのために2024年度は、20世紀半ばのアメリカ詩を牽引したブラックマウンテン派の詩人として知られるロバート・ダンカンとデニーズ・レヴァトフについて学会で研究発表を行う予定である。オッペンよりわずかに後の世代に属するこれらの詩人たちが、パウンド・ウィリアムズ経由のオブジェクティヴィズムをどのように受け止め、さらにそれをどのように展開することによってモダニズムの限界を突破したかを解明すれば、本研究課題を推進するうえで重要な示唆が得られるだろう。ダンカン=レヴァトフとの共通点と相違点を確認しつつ、さらにオッペンにおける「非人間中心主義」の詩学の本質を今後は追求していく予定である。その際には、第一詩集『ディスクリート・シリーズ』のみでなく、それ以降のオッペン作品の分析を踏まえた包括的な研究を推進していくことになるだろう。それを実現するためには、前年度のリサーチの成果を踏まえつつ個々の作品の分析を丹念に行うことが何よりも重要となっていくはずである。 最終的には本研究課題がアカデミズムの観点から見て学術的達成を有するものとなることを目指しつつ、さらにその達成が詩における余白や欠損の機能を巡る本質的な洞察を示すことまでを目標とする。そのための布石を確実に打つために、2024年度の本研究課題をめぐる活動は充てられる予定である。
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