Project/Area Number |
23K00425
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
竹岡 健一 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (30216874)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | ナチス時代 / 第三帝国 / 通俗科学的著作 / 科学技術 / ナチズム |
Outline of Research at the Start |
ナチス時代の文学に関するこれまでの研究には、いわゆるナチス文学の範疇に収まらない作品を見落としたのみならず、一見そうとは見えない愛国主義的な作品を見落としたという、二重の問題点があった。 そこで、本研究では、従来ほとんど考慮されてこなかった科学小説を含む通俗科学的著作に焦点をあて、ナチス時代のドイツに科学技術に対して肯定的な著作が多数存在したことを跡づけるとともに、それらが強い反近代性を帯びたナチズムと共存し得た理由を明らかにする。 このような本研究には、ナチス時代の文学に関する常識の見直しを迫り、新しい研究の枠組みを確立することが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、通俗科学的著作とナチズムのかかわりを詳しく考察することにより、ナチス時代のドイツにおいて、科学技術や工業の発展を肯定的に描いた多数の文学作品が強い反近代性を帯びたナチズムと共存し得た理由を明らかにすることにある。令和5年度には、研究計画に基づいて研究を進め、次のような成果を得た。 (1)予備的研究の結果を踏まえ、主な先行研究とドイツ国立図書館の書誌情報に基づいて、本研究の対象となり得る通俗科学的著作として約40タイトルを選定し、それらを「指導者原理」、「民族共同体」、「人種的優越性」、「再軍備」、「自給自足化」という5つの項目に分類した上で、各項目の特色を解明する上で適した著作を約20タイトルにまで絞り込んだ。 (2)続いて、各分類項目の特色に関する考察に入り、「民族共同体」と「自給自足化」の項目に取り組んだ。前者については、ヴルフ・ブライの『取り憑かれた人々』(1939年)を詳しく分析し、本作品の「ナチス時代の工業小説」としての特色を明らかにした。後者については、『科学は独占を破る』(1936年)など、「人造石油」を扱ったアントン・ツィシュカの3つの著作を詳しく考察し、これらの著作がナチス政権と四か年計画のプロパガンダをなしたことを明らかにした。 これらのうち、ブライの著作に関する研究については、本年度口頭発表を行って、反響を得ており、次年度中に印刷発表を行う予定である。また、ツィシュカの著作に関する研究については、次年度中に口頭発表と印刷発表を行う予定である。 なお、今年度は、ライプツィヒのドイツ国立図書館での資料収集も予定していたが、短期間で効率的な収集を行う上で十分な予備調査を行う必要があることを考慮し、次年度に延期した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次の3つの理由から、おおむね順調に進展していると判断した。 (1)暫定的な段階ではあるが、本研究の対象となり得る約40タイトルを把握し、ナチス時代の通俗科学的著作における科学技術とナチズムのかかわりを解明する上で最も適切と思われる5つの項目に分類した上で、それらを代表する著作を約20タイトルにまで絞り込み、各項目の特色を検討するための準備を整えることができた。 (2)各項目の特色の検討を開始し、「民族共同体」と「自給自足化」という2つの項目を代表するヴルフ・ブライとアントン・ツィシュカの著作について詳しい考察を行い、前者については口頭発表を行って、次年度中に印刷発表を行う準備を整え、後者についても、次年度中に口頭発表と印刷発表を行う準備を整えることができた。 (3)上記の著作の考察において、非合理的な愛国主義的衝動と近代的な産業テクノロジーが結びつけられていることや、ナチス政権と四か年計画のプロパガンダをなしているといった特色が明らかとなり、ナチス時代の通俗科学的著作において科学技術的な営為がナチズムの理念や政策とどのように結びつけられているのかという問題を解明する上で大変有意義な興味深い成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.令和6年度から令和7年度前半には、残る3つの項目である「指導者原理」、「人種的優越性」、「再軍備」について、代表作品を取り上げて詳しく考察し、それぞれの特色を解明する。また、事前の準備が整い次第、ライプツィヒのドイツ国立図書館において資料収集を行う。 2.令和7年度後半には、5つの項目の考察を総合し、ナチス時代の通俗科学的著作における科学技術とナチズムのかかわりについて詳しい特色を明らかにした上で、研究成果の総括を行う。予備的研究で得られている仮説を考慮しながらも、本研究で得られた新たな知見に基づいて十分検討した上で、最終的な結論を導く。 3. 最後に、本研究全体の成果を総括する報告書を作成し、配布するとともに、ホームページを通じて広く公開する。
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