Project/Area Number |
23K00450
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
溝井 裕一 関西大学, 文学部, 教授 (60551322)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | パレンベルク / ハーゲンベック / 古生物学 / 帝国主義 / 彫刻 / 恐竜 / 古生物 / 文化史 / 動物園 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ケルン出身の動物彫刻家ヨーゼフ・パレンベルク(1882-1946)が、ハーゲンベック動物園のために制作した実物大の古生物模型と、20世紀前半の古生物学や帝国主義的な思潮との関係を明らかにすることである。とくに、パレンベルクが訪問した欧米各国の博物館展示ならびに古生物美術、さらに社会ダーウィニズムやドイツ人を熱狂させたドイツ領東アフリカでの発掘が、彼の古生物の表現方法にどう作用したかを、当時の展示、資料、書簡などから明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画に従い、資料収集に集中した。 まず、アメリカ自然史博物館(ニューヨーク)のスタッフとコンタクトをとって、ヨーゼフ・パレンベルクおよびカール・ハーゲンベックの古生物彫刻に関する書簡を入手し、その分析にあたった。また、2023年8月に同館を訪問して、パレンベルクの時代に展示されていた骨格も調査している。この時の調査結果をまとめるのに時間を要したため、国立自然史博物館(ワシントン)とパレンベルク/ハーゲンベックのつながりについては、2024年以降に調べることとした。 また2024年3月には、ロンドンの自然史博物館を訪問して、当時の書簡を調査した。さらに、クリスタル・パレス(シドナム)の恐竜模型がハーゲンベックの恐竜園構想に影響を与えた可能性が高いため、その地においてもフィールドワークを実施している。なおパレンベルクの古生物彫刻と日本人の関係も調査するため、2024年1月に乃村工藝社の資料室を訪問し、関係資料を閲覧している。 現在、ハーゲンベックと関係が深かったと報告者が見ているのが、ヘンリー・F・オズボーンである。彼がアメリカ自然史博物館を率いていた時代の展示、彼の古生物美術(パレオアート)との関係や進化論についても調査を行い、その成果は(パレンベルク/ハーゲンベックを中心テーマに据えたものではないが)英語論文Rise of Lost Worlds. A Cultural History of the Dinosaur Park, Part 3(関西大学文学論集、2023年)のなかで一部公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、2023年度はアメリカ中心、2024年度はヨーロッパ中心で調査する予定であったが、研究が進むにつれて、調査対象とする地域は柔軟に訪問する方が効率的と判断し、そのように行動している。資料収集は順調である。特に、アメリカ・イギリスの関係書簡を閲覧できたことは大きな成果であり、人間関係ややりとりの内容についても、推測していたことや、新聞を通してしか知り得なかった部分を補うことができた。パレンベルク/ハーゲンベックの古生物彫刻が日本に与えた影響についても、乃村工藝社や国会図書館でさらに調べることができた。 一方で、まだ手をつけられていないのが、ベルリン、フランクフルト・アム・マイン、ブリュッセルなどヨーロッパ大陸諸都市の資料である。このうち、ベルリン自然史博物館にはコンタクトを取ろうとしたものの、同館はサイバーアタックの標的となった結果、ITインフラに問題が生じ調査するのが困難になっているとのことであった。またこれと関連して、ドイツ帝国時代のテンダグル発掘について、研究が進められていない。 そこで2024-2025年の期間に、上記の都市におけるパレンベルク/ハーゲンベックの活動を確認していくこと、テンダグル発掘とハーゲンベックの関わりについて調査することが必要となるであろう。合わせて、古生物とそのイメージに関する資料の収集も引き続き行い、専門知識を蓄えることによって、パレンベルク/ハーゲンベックの彫刻の特徴を文化史的に評価できるようにすることが重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに述べたように、現時点ではアメリカ、イギリス、日本の資料の収集と分析は進んでいるが、ドイツの各都市やベルギー(パレンベルクはここでも活動したと見られる)における調査をさらに進める必要がある。ただし、訪問する国の順番に変更が生じている点をのぞけば、おおむね計画通りに研究が進んでいる。 具体的には、2024年4-10月のあいだは、未訪問のヨーロッパの博物館において、関係資料を閲覧し、パレンベルクが参照した化石も確認する。ベルリン自然史博物館については、機能の復旧するタイミングを見て訪問したいと考えている。 11月以降は、こうして収集した資料の内容をまとめることで、パレンベルク/ハーゲンベックの古生物復元作業がどのようにして行われたのかを、いっそう正確に知ることができると期待される。そして、ワシントンの国立自然史博物館ともコンタクトをとり、資料の入手が可能かどうかを確認するとともに、日本人とパレンベルクの関係についても、できる限り調査を続行する。 仮に資料収集と分析が順調に進めば、2025年度は、(未入手の資料の収集をのぞいて)できるだけ研究成果をまとめることに注力したいと考えている。その際、ドイツ語、ついで日本語でそれぞれ書籍の形にまとめることも検討している。そうすることによって、パレンベルクの業績が両国においていっそう認知されるようになるだけでなく、古生物展示と帝国主義の関係についても、理解が進むはずである。
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