Project/Area Number |
23K00514
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
金澤 雄介 近畿大学, 国際学部, 准教授 (70713288)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | サルデーニャ語 / シチリア語 / 地中海 / 地域言語学 / 南ロマンス諸語 / DOM / 非屈折不定詞 / 非従属節化 / 形態統語論 / 歴史言語学 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、サルデーニャ語、コルシカ語、南部イタリア語方言の形態統語論に共通の地域特徴は、どのような歴史的過程を経て獲得されたのかを明らかにすることを目的とする。具体的な研究内容は、(a) Differential Object Marking、(b) 動詞の分析的構造、(c) 複合時制と存在文における助動詞の選択性の 3 項目である。また、サルデーニャ語を地中海の中心に位置する「仲介言語」とみなし、従来のロマンス語系統論ではとらえられなかった当該地域の諸言語の特徴を明らかにし、地域言語学的な概念としての「南ロマンス諸語」を確立させる。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023 年度の前半は、前年度に引き続いて、古サルデーニャ語における「規定」を意味する不定詞の形態統語論的特徴について分析をおこなった。その結果、「規定」を意味する不定詞は、非屈折不定詞であることと、このような不定詞は「非従属節化」によって生じたことを主張した。本研究成果は、日本ロマンス語学会第 61 回大会において発表をおこなった。以上の分析を足がかりとして、非屈折不定詞を導く補文標識には de と a、そして補文標識の省略の 3 パターンが見られることが明らかとなった。今後はこのような補文標識のバリエーションに加えて、補文標識の反復という現象についても合わせて考察する予定である。 2023 年 10 月に国立民族学博物館が主催するシンポジウムで「地中海島嶼ロマンス語の分布と系統―名詞の有生性にまつわる諸問題から考える」というタイトルで講演をおこなった。講演では、サルデーニャ語、シチリア語、コルシカ語における Differential object marking と直接目的語の有生性・数の関係についての概観と対照をおこなった。また島嶼ロマンス語の分布と系統についても議論をおこない、本講演を本研究課題の出発点として位置づけることができた。 2024 年 2 月に、パレルモの Biblioteca centrale della Regione Siciliana と、カターニアの Biblioteca Regionale Universitaria を訪れ、シチリア語学に関する資料収集をおこなった。また、パレルモ大学の Centro di Studi Filologici e Linguistici Siciliani 所長の Giovanni Ruffino 教授と面会し、シチリア語研究の今後の方向性について意見をうかがった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に述べた、国立民族学博物館が主催するシンポジウムのテーマは本研究課題と一致するもので、本研究課題の今後の進展にとって極めて有益な機会であった。講演では、Differential object marking はロマンス語圏に広く観察される現象であるが、島嶼ロマンス語はほかの地域から独立した形でこの現象を共有していることを論じた。この事実は、地域言語学的な概念としての「南ロマンス諸語」を認めることの可能性を示唆している。 またシチリア島における資料調査では、インターネットでは販売していないシチリア語学に関する書籍、また現地の図書館でしか閲覧できない論文などを入手することができた。 以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、特にシチリア語における非屈折不定詞および補文標識の形態統語論的特徴について、通時的観点からの分析を推進し、サルデーニャ語との共通点を明らかにしていきたい。同時に、サルデーニャ語とシチリア語における音韻論と動詞形態論(とりわけ動詞の分析的構造と、複合時制・存在文における助動詞の選択性)の通時的考察にも着手する予定である。これらの研究によって、従来のロマンス語系統論ではとらえられなかった当該地域の言語の地域的特徴について明らかにするための足がかりとしたい。シチリア語の古文献のコーパスについては Gatto Web が提供するオンラインコーパス"Corpus OVI dell'Italiano antico" を用いる。
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