第二次大戦期の日独関係とユダヤ人問題――「上海ゲットー」の設立を中心に
Project/Area Number |
23K00803
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03010:Historical studies in general-related
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
田野 大輔 甲南大学, 文学部, 教授 (60330122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 賢治 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 教授 (70262061)
中村 綾乃 大阪大学, 大学院人文学研究科(言語文化学専攻), 准教授 (10467053)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2027: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2026: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 上海ゲットー / ユダヤ人 / 日独関係 / ホロコースト |
Outline of Research at the Start |
本研究は、第二次大戦期の上海において日独両当局の共謀により進められ、ユダヤ難民の 「無国籍避難民指定居住区」(いわゆる「上海ゲットー」)への強制隔離に連動していたとされる「ユダヤ絶滅計画」が「神話」にすぎないことを、様々な資料体の調査・分析にもとづき検証し、その「神話」がどういう経緯で成立したのかを解明しようとするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第二次大戦期の上海において日独両当局の共謀により進められ、ユダヤ人難民の 「無国籍避難民指定居住区」(いわゆる「上海ゲットー」)への強制隔離に連動していたとされる「ユダヤ絶滅計画」が「神話」にすぎないことを、様々な資料体の調査・分析にもとづき検証し、その「神話」がどういう経緯で成立したのかを解明しようとするものである。 令和5年度は、研究代表者(田野)と研究分担者(菅野)がドイツへ赴き、一部共同で調査を行った。田野はベルリンの外務省政治文書館、連邦文書館、州立図書館、ミュンヘンの州立文書館、フライブルクの州立文書館などで、東アジアのドイツ在外公館の関係者、とりわけヨーゼフ・マイジンガーとその協力者(カール・キンダーマンなど)に関する資料の調査を行った。また、菅野と共同でミュンヘン在住の研究者アストリド・フライアイゼン氏と面会し、資料面での情報交換を行った。菅野はさらにベルリンで上海のユダヤ人難民の娘ソーニャ・ミュールベルガー氏とも面会し、戦時期の上海の状況などについての証言を得た。 ドイツでの資料調査のほか、田野はドイツで収集した資料の精査を行い、ドイツ側関係者の動向について、とりわけマイジンガーのユダヤ人協力者であるキンダーマンの活動を分析した。菅野はドイツでの調査の前にイスラエルのヤド・ヴァシェム(ホロコースト記念館)を訪問し、上海ユダヤ研究の先駆者デイヴィッド・クランズラー氏が遺した資料の調査を行った。また、日本の国立国会図書館では、戦時期の上海でユダヤ難民対策に関わった関係者の記録、とくに犬塚惟重の回想録の調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これらの調査により、ドイツの在外公館の関係者と日本側当局者のユダヤ人対策の内実に加えて、両者の摩擦と緊張に満ちた関係の一端、とりわけマイジンガーが日本と中国で構築しようとした情報網が充分に機能していなかったことが明らかになった。これは上海のユダヤ人難民の「指定居住区」への強制隔離が日独両当局の共謀により進められたとする従来の見方が、かなりの程度まで「神話」にすぎないことを示す傍証の一つとして役立つものと考えられる。また、こうした日独両当局間の関係のなかで実施されたユダヤ人対策が必然的に混乱を招き、そのしわ寄せが上海のユダヤ人難民の窮状につながった経緯も部分的に浮かび上がった。この点については、さらに当時のユダヤ人難民の証言を調査し、彼らの生活の実態を明らかにしていく必要がある。また、こうした状況に置かれたユダヤ人難民の間で「ユダヤ人絶滅計画」に関する「噂」が発生した経緯についても、さらに彼らの証言を精査・分析していく作業がもとめられる。戦後この「噂」が一部のユダヤ人関係者によって拡散されて斯界に定着した経緯の一端については、菅野が著書『「命のヴィザ」の考古学』(共和国、2023年10月)のなかで提示した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、田野・菅野が共同でアメリカ国立公文書館での資料調査を実施する。とくに戦時期に日本・中国で活動したドイツ人関係者やユダヤ人難民について、米軍当局が終戦直後に実施した尋問記録の精査・分析を行い、ドイツ当局のユダヤ人対策の実態をさらに詳細に明らかにする。同時に、国立国会図書館等で上海のユダヤ人難民対策に関わった軍関係者の記録(日記、書簡、写真など)を読み解くことで、日本当局のユダヤ人対策についての調査も進める。 また、可能であればイスラエルのヤド・ヴァシェムでの資料調査も行う。 戦時期上海のユダヤ人難民に関する研究の先駆けとなったクランズラー関連資料を精査・分析することで、当時のユダヤ難民の実態を明らかにする。同時に、ニューヨークに本拠を置くYIVOユダヤ研究所が収蔵する「アメリカ・ユダヤ合同分配委員会(JDC)」のアーカイブ中、「上海」と銘打たれたフォルダーに収められた資料を精査することで、「日独共謀のユダヤ絶滅計画」説のもととなった「噂」の出所、ならびにそうした「噂」の拡散を助長したユダヤ難民内部の社会・政治的状況を明らかにする。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)