Project/Area Number |
23K00862
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡 洋樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00223991)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2025: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | モンゴル / 清朝 / 軍事動員 / 盟旗制度 / 遊牧民 |
Outline of Research at the Start |
ユーラシア史上、北アジア・ステップの遊牧民はその軍事力によって定着農耕社会を征服するなど大きな役割を果たした。しかし遊牧民社会において軍事動員がどのようになされたのかについては、従来帝国期を中心とした知見が蓄積されているものの、必ずしも動員の現場から導出された理解ではない。そこで本研究では、清代のモンゴル文書史料を用いることによって、モンゴル盟旗が軍事動員にどのように対応していたのかを事例的に明らかにしようとするものである。そのために、19世紀後半、同治年間における回民反乱時の内モンゴル西部オルドスおよびアラシャにおける軍事動員・物資供出・補充の様態を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる本年度は、本研究課題の研究に必要な清代盟旗文書の蒐集・抽出を進めた。具体的には、内モンゴル・オルドスのハンギン旗の文書史料集である「杭錦旗札薩克衙門档案」巻32~34、「准格爾旗扎薩克衙門档案」巻13~21、「阿拉善和碩特旗蒙古文歴史档案」巻31~34所収の同治年間の文書から、回民の反乱に際しての軍事動員に関連する文書を抽出した。同治元年に発生した回民の反乱は、オルドス地域が直接戦場となり、動員された兵員が実際に回民との戦闘に従事している。この間、オルドス七旗から恒常的に兵員と軍需物資の徴発が実施されており、多数の関連文書がある。オルドス諸旗では兵員の所属組織である佐領が編成されていたが、兵の動員は佐領では足りず、佐領に登録されていない成人男子が民兵として動員されていた。一方ハンギン旗史料には同治年間の二つの比丁冊が治められており、旗の佐領構成と兵の数を知ることができる。准格爾旗(ズーンガル旗)は、当時のザサグ・ザナゲルディが副盟長として兵を率い、前線で活動しており、軍事動員に関わる多数の文書を見いだすことができる。これらの文書を見ると、各兵員が必要とする物資が、それぞれ所属の旗から調達・補充されていたこと、旗の財力の制約から、物資補給の停滞が頻発し、盟長・副盟長から度々補給の督促が当該旗になされていることなどが判明している。アラシャ旗については未着手であるが、同旗は反乱鎮圧の最前線であったことから、関連文書の発見が見込まれる。これらの文書は、清朝統治下で遊牧民に対する現実の軍事動員の様態を如実に示すものであり、遊牧民社会と軍事との間の従来の漠然とした理解を具体的な実情によって再検討することを可能とすることが見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初入手を想定した史料集は、ほぼ手元に置くことができた。現在までに同治年間のハンギン旗の文書についてはほぼ全貌を把握し、ズーンガル旗に関しても抽出と解読を進めている。アラシャ旗についてはいまだ着手できていない情況であるが、今年度前半期中に抽出作業を終えたいと考えている。 これまでの作業により、同治年間の回民反乱に際するこの三旗の軍事動員態勢を明らかにするのに必要な文書が多数存在することを確認している。ハンギン旗については、所収文書のほとんどが他の旗や駐防官衙門との往復文書であり、旗内での動員事務の処理に関わる情報は限定的である。ただ派遣された兵が前線で直面した物資不足などの問題で、盟長・副盟長からの補充命令が発せられ、旗ザサグ衙門からの対応が非常に鈍かった様子が窺われる。ここから、軍事動員の問題を考えるにあたり、戦闘などの実際の軍事行動よりも、物資補給に焦点を当てることが有効であるとの見通しを得ている。今後ズーンガル旗・アラシャ旗についても、補給・兵站面に関わる文書に注目していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度はハンギン旗・ズーンガル旗・アラシャ旗に関して、同治年間の回民反乱鎮圧の軍事行動に関わる文書を抽出する作業を進めるが、研究成果の発信という点では、利用可能な史料の内容の傾向から、二つの問題に焦点をしぼる方向を考えている。一つは物資補給の問題である。これまでの作業で、前線で行動する部隊が食料・衣服・家畜・武器・弾薬などの物資の補給を、すべて所属旗に頼っており、清朝当局からの供給はなかったことが知られる。従って所属旗からの補給が途絶えれば、直ちに部隊の行動能力は失われることになる。これは補給の情況が軍事行動を大きく制約する要因となっていたことを示す。もう一つは、軍事情報の伝達である。回民軍の行動や、前線での戦闘の展開情況は、どのように把握され、関係官衙の間で共有されたのか。この問題を、前線司令官であったズーンガル旗ザサグ・ザナゲルディと盟長・盟内各旗、八旗軍・緑営・強勇などの諸群との文書往来の情況から解明することが可能と思われる。今後はこの二つの問題に焦点を当てて論文化を図っていきたい。
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