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ダライ・ラマ政権の村落統治と領民支配の研究:クンデリン文書の検討から

Research Project

Project/Area Number 23K00872
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Allocation TypeMulti-year Fund
Section一般
Review Section Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

大川 謙作  日本大学, 文理学部, 教授 (20431827)

Project Period (FY) 2023-04-01 – 2028-03-31
Project Status Granted (Fiscal Year 2023)
Budget Amount *help
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2027: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Keywordsチベット旧社会 / ダライ・ラマ政権 / 社会史 / ミジェ / ミボー / クンデリン文書 / チベット語行政文書 / 身分制度 / チベット
Outline of Research at the Start

本研究では、クンデリン文書と呼ばれる新史料に基づき、チベット旧社会の基層社会の構造を精緻に再構築する。具体的にはダライ・ラマ政権の村落統治の実態や、個々の領民たちがいかなる制約のもとで政府や領主たちとの関係を構築していたのかを、土地安堵文書・検地帳・領民の身請け文書など諸ジャンルのチベット語史料の読解をもとに精緻に再構成する。

Outline of Annual Research Achievements

本研究計画の初年次である今年度は、ボン大学が公開しているチベット語世俗文書関係のデータベースであるDTABDigital Tibetan Archives at Bonn)の中の「クンデリン文書群」に収録されている文書の精査を行なった。とりわけ今年度はミボーと呼ばれる人身賃借制度に関する文献及びミジェと呼ばれる領民交換制度に関連する文書を収集し、翻刻・読解・解釈の作業を行なった。こうした研究内容の一端を披露したのが10月28日に金沢大学で行われた日本チベット学会第71回学会大会における報告「ミジェ(mi brje)考:チベット旧社会における「領民交換制度」をめぐって」である。
ミジェとは、チベット旧社会(ダライ・ラマ政権時代のチベット社会)において、領主が自らの領民を他の領主の領民と交換していたという制度であり、主として聞き書きに基づく先行研究において、ミジェ制度は、領主が領民の身体的自由や移動の自由を統制する強い権力を有していたことの証左として言及されてきた。それに対し、上述の研究において研究代表者はクンデリン文書群の中の一次史料を元にミジェ制度について考察し、ミジェ制度の実施にあたっては実際には領民の移動は行われておらず、この制度はむしろ領主の許可を得ずに所領を移動して遠隔地に逃れてしまった領民たちを移住先の領主の領民へと所属替えを行うために実施されていたことを明らかにした。すなわち、ミジェ制度はチベット旧社会の領主たちの持つ領民の移動の自由を統制する権力を示すものではなく、むしろ領民による無許可の移動を事後追認する制度だったのであり、逆にチベット旧社会の領民たちが一定のモビリティを有していたことを示すものであったと議論した。以上の報告をもとにした論文も現在すでに草稿が完成しており、2024年に公開される予定である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究計画の最も重要な史料となるクンデリン文書の読解は順調に進んでおり、すでに多くの文書の翻刻や試訳などを行うことができた。また査読期間の関係で令和5年度内には出版されなかったが、クンデリン文書の読解に基づく論文「チベット旧社会における領民獲得競争」が査読をクリアして令和6年夏に『アジア・アフリカ言語文化研究』に掲載されることが内定している。さらに10月末のチベット学会で行なった報告「ミジェ考」の論文化も順調であり、すでに草稿が完成してあとは投稿を行うのみという段階である。これらの成果は次年度の業績となるがその作業の大部分は今年度に完了させたものである。
またチベット社会史は未開拓の領域であり、こうした領域の研究を進めるにあたっては高度に発達した西欧社会史、中国社会史、日本社会史などの関連文化の研究成果をよく吸収した比較史的考察が不可欠であるが、今年度はそうした社会史の比較研究に必要な書籍や論文の収集も順調に進めることができた。さらにチベット史独特の困難として、中国共産党の公定史観の束縛を強く受けるという政治的事情が挙げられる。そのため中国現代政治史の成果とりわけ中国共産党が台湾やチベット、モンゴルなど周辺地域の歴史をどのようにその歴史観に位置づけ表象してきたかという問題について理解することなしにはこうした研究を進めることはできないが、今年度すでにこうした方面に関連する文献収集や台湾での史料調査も順調に進めることができた。
ただしカナダにおける大火事の影響のため、バンクーバー在住のチベット人歴史家ツェリン・シャキャ氏を訪問してその私蔵史料の調査及びインタビューを行うことができなかったのは予想外であった。
以上の理由により研究は「おおむね順調に進展している」と評価する。

Strategy for Future Research Activity

チベット旧社会の社会システムとりわけ身分制(領主・領民関係)と荘園制を理解するために必要な幾つかの作業のうち、ミボー(人身賃借制度)やミジェ(領民交換制度)などの分析を終え、身分制度についての大枠を把握することにはすでに成功している。
今後の課題としてはダライ・ラマ政権と貴族・僧院などの様々な地方勢力の関係を考察することが重要になってくる。次年度においてはクンデリン文書を中心にテンツィクと呼ばれる土地安堵文書の収集と分析を行っていきたいと考えている。すでにクンデリン文書から20点余りの土地安堵文書を同定しており、実際の具体的な読解と分析はこれからの作業ではあるが、作業自体の方向性は見えている。またこれに加え、研究代表者は中国の内部出版である「西蔵トウ案」誌も入手しており、同誌に影印で掲載されている土地安堵文書も利用してこの文書ジャンルについて考察していく予定である。この土地安堵文書はダライ・ラマ政権と地方政権の間での交渉と妥協の産物であり、これまでほとんど真摯に考察されることのなかったダライ・ラマ政権内部の諸権力主体同士の互動を明らかにすることができる重要なジャンルである。テンツィクの正確な翻刻と翻訳を提供し、またその読解に基づいてダライ・ラマ政権時代の基層レベルの領民が生きた日常的世界であるチベット荘園の実態を明らかにしていくことが目指されることになる。またこうした研究を遂行するために必要な社会史の比較研究の作業や、中国共産党のチベット史の語りの問題なども引き続き詳細に研究を行っていく予定である。

Report

(1 results)
  • 2023 Research-status Report
  • Research Products

    (1 results)

All 2023

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] ミジェ(mi brje)考:チベット旧社会における「領民交換制度」をめぐって2023

    • Author(s)
      大川謙作
    • Organizer
      日本チベット学会 第71回研究大会(於・金沢大学)
    • Related Report
      2023 Research-status Report

URL: 

Published: 2023-04-13   Modified: 2024-12-25  

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