Project/Area Number |
23K00899
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前川 一郎 立命館大学, グローバル教養学部, 教授 (10401431)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | イギリス / 脱植民地化 / 冷戦 / 反植民地主義 / サハラ以南アフリカ |
Outline of Research at the Start |
本研究は、グローバルな視点でアフリカの脱植民地化を論じるにはなお実証の余地が多く残されているとの認識に立ち、1960年「アフリカの年」の震源地となった西・東アフリカで脱植民地化と冷戦が互いに影響を及ぼす実態を、反植民地主義の高まりとイギリスの対応を通じて解明する。 目立った代理戦争を経ずして1960年までにサハラ以南アフリカはいかに冷戦の主戦場と化したのか、そのことは脱植民地化の行方にどんな影響を及ぼしたのか、その実態はどうだったのか。こうした問いを実証的に検証することで、サハラ以南英領アフリカの脱植民地化を理解するうえで、なぜ、どのように、冷戦を考慮に入れる必要があるのか、一定の見解を示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、独立前夜のサハラ以南アフリカが急速に冷戦化するなかで、宗主国イギリスがいかに脱植民地化の着地点を模索したのかを明らかにすることにある。「第三世界」に冷戦の主戦場を見出したソ連は、反植民地主義の潮流に乗じて西側諸国に圧力をかけ、他方で独立後の「経済開発」を約束し、アフリカ各地にプレゼンスを確立した。それは、独立は避けられないとはいえ、旧植民地を西側陣営に繋ぎとめ、特別な対米関係を頼りに国際政治経済秩序の中心に居座ることに帝国なき時代の活路を見出したイギリスにとって、看過し得ない事態であった。サハラ以南アフリカは、近年のグローバル冷戦史研究が強調する代理戦争というより、植民地主義の歴史を背景とした「経済開発」をめぐる体制間競争の下で冷戦化し、1960年前後に一気に独立を果たしたといえるのではないか。本研究は、脱植民地期アフリカの有するそうした固有の歴史的文脈に着目し、イギリスの脱植民地化政策と冷戦の史的連関を具体的に明らかにする試みである。 本研究は、上記の目的のもとで研究を具体的に進めるために、「英領アフリカの多くが代理戦争を経ずに独立したにもかかわらず、なぜイギリスは東側諸国の進出に深刻な脅威を抱かなければならなかったのか」という主たる論点を設定した。先行研究は、東側陣営が1960年までにサハラ以南アフリカに進出し、反植民地主義=反西側プロパガンダを強力に推進したこと、他方で大規模な代理戦争を欠くなかで、イギリスの省庁、植民地諸機関、国連代表や大使館の間には、ソ連脅威論に一定の温度差があったことを示唆している。対して本研究は、(1)それでも結局イギリスはソ連脅威論を深刻に受け止めなければならず、(2)そのことが脱植民地化の方向性を決定づけたとの仮説を立て、その妥当性を史料に基づき検証し、上記の論点に対する学術的解答を導き出すことを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の前半(2023年度~2024年度半ば)は、研究実績に記した研究目的のもと、「イギリスがソ連脅威論を深刻に受け止めざるを得なかった」ことの解明に向けて、主に以下の二つの課題を設定していた。 課題① ソ連がサハラ以南アフリカに進出した1950年代後半は、世界史的にみれば、戦後復興を支えた植民地物産需要が著しく低下し、アフリカへの国際的関心が一気に薄れた時期である。代理戦争に発展しかねない深刻な利権の衝突も徐々に見られなくなったが、東西の強大国は、それでも植民地の独立が招来する国際的干渉の余地に付け込み、独立後の未来を約束してこの地を冷戦の体制間競争に巻き込んでいった。本研究を始めるにあたり、サハラ以南アフリカをめぐるこうした世界史的文脈を中心に、先行研究の到達点と論点を整理する。 課題② それを踏まえて本研究が具体的に検証するのは、イギリス当局が事態の変化をどう認識し、その脱植民地化政策を方向づけていったのかである。そこでまず、ソ連の反植民地主義プロパガンダが反英感情を醸成し、それが英帝国特有の支配理念(liberal imperial idea)を脅かし、イギリスに深刻な現状認識を抱かせる経緯を、イギリス側の史料から検討する。 このうち課題①に関しては、これまで検討してきた先行研究に加えて、最新の研究成果の一部を入手し、研究のフォローアップをはかっている。新しい知見はいくつか見出されるものの、本研究の課題設定の変更を迫るような成果は見出し難い現状を確認した。 しかし、課題②については、今年度は実施に至らなかった。その理由は、研究代表者が初夏にコロナ罹患したためである。後遺症が残り、当初予定してたロンドンへ出張を取りやめ、確保していた航空券や宿泊先もすべてをキャンセルした(現在はほぼ快復している)。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、まず2023年度に予定しながらもコロナ罹患によって実施に至らなかったロンドンでの史料調査を進めて、積み残していた課題②を遂行する予定である。その進捗如何にもよるが、それ以降は当初予定の計画に従って研究を推進していきたい。 なお、当初2024年度に予定していたのは、下記の課題③である。 課題③ 東西の援助を天秤にかけて自立性を発揮した現地ナショナリストの動向は、そうした当局の懸念に現実味を持たせた。こうしてイギリスが1960年の段階で、西・東アフリカに布陣する有力な植民地と独立後の良好な関係を構築するために、英領アフリカの「脱・植民地主義化de-colonisation」(植民地支配の負のイメージを払拭するとの意味で当局が用いた表現)をはかり、実際に具体化を急いだ経緯を、イギリス側の史料に加えて、ガーナ国立公文書館やダルエスサラーム大学所蔵「東アフリカコレクション」を利用して多角的に考証する。 以上のうち、2024年度はイギリス側の史料を用いた分析には少なくとも取り掛かりたい。積み残した課題に向けられるエフォートとのバランスを柔軟に調整しながら、今後も着実に課題を遂行していく予定である。
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