Project/Area Number |
23K00907
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
櫻井 康人 東北学院大学, 文学部, 教授 (60382652)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 十字軍国家 / 十字軍 / 貨幣封 / 封建制度 / ヨーロッパ中世 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、従来においては「封建王国」という枠組みの中でのみ考えられてきた十字軍国家の構造を、様々な社会層を内包する「運命共同体」として捉えなおした上で、「なぜ十字軍国家は200年も存続しえたのか」という問いに答えるための考察を行う。 特に本研究において検討対象とされるのは、従来の研究ではほとんど看過されてきた「貨幣封」と「分割所有」という十字軍国家に特有の封建制度についてである。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、1192年までの「貨幣封」に関する史料調査とその分析を行った。従来の研究では、「貨幣封」とは下級騎士に限定されたものとして定義されてきた。しかし、史料から明らかとなったのは、上級貴族も「貨幣封」の授与対象となっていたこと、「貨幣封」を媒介とする封建主従関係は世俗の騎士に限定されず、騎士団を抱える教会勢力や騎士修道会なども含まれることが判明した。 また、エルサレム王国を始めとする十字軍国家の経済状況の変化が、「貨幣封」の在り方そのものにも変化をもたらしたことも明らかとされた。具体的には、ボードゥアン2世期までは、概してその額は少額であり、聖俗勢力の間に大きな違いは見られなかった。しかし、金貨が製造されるなど経済的発展が見られるボードゥアン3世期より、とりわけ度重なるエジプト遠征を敢行したアモーリー期よりその額は増加し、貴族層や騎士修道会組織も「貨幣封」授与の対象となっていったこと、その一方で教会勢力は少額のままか、もしくは「貨幣封」授与の対象から外れていくことなどが確認された。 これらの成果は「貨幣封から見る十字軍国家の社会構造(1099~1192年)」『ヨーロッパ文化史研究』25号、49~72頁、という形で公にすることができた。なお、1192年で一つの区切りをつけたのは、1187年のハッティーンの戦いと、アイユーブ朝スルタンのサラーフッディーンとイングランド国王リチャード1世との間でその休戦協定となるヤッファ協定が締結された1192年を境にして、十字軍国家の地図が大きく変わったからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
有益な誤算ではあったが想定した以上に分析対象となる史料の分量が多かったために、その分析に時間を要することとなり、当初の予定よりやや遅れた進捗状況となった。次年度においては、1193年以降の「貨幣封」に関する分析を行うとともに、「分割所有」の分析にも踏み込んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、証書を中心とする文書史料の調査・収集およびその分析に取り組んでいく。上記のとおり、想定以上に分析対象とすべき史料は多いという状況にはあるが、研究手法には問題はないと考えているので、分析等のペースアップに努めたい。
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