Project/Area Number |
23K00929
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03050:Archaeology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊木 俊朗 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (20282543)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 考古学 / 擦文文化 / 北海道 / 竪穴住居 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、北海道の全域に拡がった擦文文化(7-13世紀)の竪穴住居跡を対象として、その構造や利用形態、廃絶時の儀礼的行為の実態を明らかにするものである。研究方法としては、擦文文化の遺跡に残る考古資料から、竪穴住居跡の形状・設備に関するデータや、廃絶時に家を焼く行為などの痕跡を集成して分析し、この文化の竪穴住居の上屋やカマドの構造、空間分節や儀礼などの利用形態を復元する。 さらに、それらの成果に基づいて擦文文化における時期差や地域差を検討し、北海道内における地域間交流の実態を明らかにするとともに、東北地方北部の同様のデータとも比較することで、北海道と東北北部の古代の交流を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、北海道の全域に拡がった擦文文化(7-13世紀)の竪穴住居跡を対象として、その構造や利用形態、廃絶時の儀礼的行為の実態を明らかにすることにある。 本年度の研究では、常呂川下流域の擦文文化の遺跡でこれまでに発掘された考古資料を対象として、竪穴住居の形状、カマドや炉、ベンチ状遺構等の設備の有無やそれらの位置関係、廃絶時に家を焼いたり遺物を埋納したりする儀礼的行為などの痕跡等の項目に関して、データを集成した。その結果、竪穴住居の形状に関しては、カマドの位置が住居外のカマド側から見て壁の中央部よりも右側に偏る例が多いことが再確認されたが、カマドと、出入口とみられる構造やベンチ状遺構などの位置関係については遺跡ごとの違いも大きく、明確な傾向をみてとることができなかった。また、儀礼的行為については、家を焼く行為の地域的な偏り、すなわち常呂川の右岸地域に焼失例が多いことが追認されたが、黒曜石や鉄器などを住居内に埋納する行為についてはやはり明確な傾向を把握することは出来なかった。なお、これらの埋納行為に関しては、東京大学常呂実習施設に収蔵されている発掘調査時の記録写真をデジタル化し、詳細な画像に基づく検討も試みている。 本年度の研究ではこれらのデータ集成に加えて、擦文文化の竪穴住居に関する新たなデータを得るため、北見市大島1遺跡において窪みで残る竪穴住居跡1軒の発掘調査を実施した。発掘は三ヶ年にわたる計画で、本年度は住居内の一部にトレンチを設定して床面の状況と竪穴内の土層堆積等を確認した。その結果、この竪穴も焼失住居であることが判明し、常呂川下流域内における家を焼く行為の地域的な偏りに関する上述の傾向を追認する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた擦文文化の竪穴住居の形状や構造に関する既存データの集成に関しては、地域間の比較の際の基準となる常呂川下流域の資料について概ね終了しており、今後、札幌市、小平町、枝幸町、釧路市、根室市等のデータを集成し比較する際の準備が概ね整った。一方、当初の実施計画で予定した、東京大学常呂実習施設に所蔵されている竪穴廃絶時の儀礼的行為の様子を記録した発掘調査写真のデジタル化と詳細な検討、行為の具体的な復元等については進捗がやや遅れているが、これについては本年度に集中して取り組む予定であり、問題はない。 また、当初の計画に加えて新たに開始した北見市大島1遺跡の発掘調査に関しては、本年度に定めた計画どおりに進捗しており、本研究課題の実施年度である令和6年度と7年度の2ヵ年で発掘作業を完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
擦文文化の竪穴住居の形状や構造に関する既存データの集成に関しては、常呂川下流域以外の地域、具体的には札幌市、小平町、枝幸町、釧路市、根室市等のデータを集成し、地域間の比較を行って住居の利用形態の時期差・地域差を検討し、北海道内における地域間交流の実態を明らかにする。また、竪穴住居の廃絶時に関する儀礼的行為の検討については、これも常呂川下流域以外の地域における事例の集成を進め、時期差・地域差の検討を進めるとともに、常呂実習施設所蔵の発掘調査記録写真のデジタル化をさらに進めることによって具体的な行為の再検討を試みる。 北見市大島1遺跡における擦文文化の竪穴住居跡の発掘調査に関しては、令和6年度にカマドを除く床面の発掘、令和7年度にカマドの発掘調査を実施し、発掘作業を完了して新たなデータを得る計画である。 本研究課題の最終年度である令和7年度末には、これらの成果を総括した調査報告書を刊行する予定である。
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