Project/Area Number |
23K00955
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03060:Cultural assets study-related
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
田村 朋美 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (10570129)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 北海道 / 続縄文文化 / ガラス玉 / 材質分析 / 境界領域 / 南西諸島 / 化学分析 |
Outline of Research at the Start |
日本列島では11世紀後半にガラスの生産と流通が復興する。12世紀には北海道や南西諸島といった「日本国」の境界領域にもガラス玉が流入する。しかし、これらの地域で流通したガラス玉の種類や変遷については不明な点が多い。本研究では、「境界領域」におけるガラス玉について、化学組成とその時期変遷を明らかにし、同位体比分析によって産地と流入経路を解明することを目的とする。また、日本ガラス史構築に向けて、申請者がこれまでに蓄積してきた日本列島の中心部で流通したガラス玉の研究成果と併せて、先史から近世までの日本列島で出土するガラス玉の製作技法、化学組成、推定生産地、流入時期についてのデータベース構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の初年度である令和5年度は、北海道の続縄文文化期(一部、オホーツク文化期を含む)におけるガラス小玉の基礎ガラス材質の変遷について新たなデータを加えつつまとめた。その結果、オホーツク文化にあたる礼文島の香深井5遺跡と続縄文文化の遺跡から出土したガラス小玉に連続性が認められ、続縄文文化からオホーツク文化への日本海ルート交易による流通が示唆された。 また、分析を行った遺跡を中心に主な続縄文文化期から並行するオホーツク文化期に該当するガラス小玉の基礎ガラス材質の変遷に合わせて各遺構を大まかにまとめるという作業もおこなった。その結果、北大Ⅰ式期で遺跡ごとにガラス材質の様相に違いがみられるが、本州以南の古墳文化におけるガラス玉の「様相9」(古墳時代中期後葉~後期前葉)を示すものも古段階の傾向がみられ大きな時期的乖離は少ないと考えられる。そして、少なくとも「様式9」までは、本州からガラス玉の流れがある一方、古墳時代後期末以降、特に東北地方太平洋沿岸の末期古墳にガラス玉が大量に副葬される時期になると、北海道へのガラス玉の流入がほとんど認められなくなることが明らかとなった。江別古墳群からの出土報告など、8世紀段階で東北末期古墳との関連性が認められる遺跡への流入がわずかに継続もしくは再開した可能性はあるが、東北末期古墳に大量に副葬される量と比較するとその交易は限定的かつごく僅かなものであることが確認された。そのため、当該期東北以南と北海道での何らかの交易的分断や変化があった可能性が指摘できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、北海道および南西諸島で出土するガラス玉について、蛍光X線分析を用いた化学組成分析による材質分類を行い、その時期変遷を明らかにすることを第一の目的としている。初年度に当たる令和5年度は、これまで詳細な検討が行われていなかった北海道の続縄文文化期(北海道大学構内遺跡、余市町大川遺跡、苫小牧市タプコプ遺跡、恵庭市柏木B遺跡など)およびオホーツク文化期(日本最北端でのガラス玉の出土事例である北海道礼文町香深井5遺跡出土品など)におけるガラス玉について、網羅的な分析をおこない、化学分析結果に基づいて時期変遷を明らかにすることができた。その結果、続縄文文化期の北海道におけるガラス玉について、本州以南との流通時期の比較ができるようなった。これにより、北海道への具体的な流入経路や各時期におけるガラス玉流入契機となった政治的背景についても考察することが可能となった。以上の状況から、本研究課題は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究課題2年目に当たる令和6年度においては、北海道のアイヌ文化期に流通したカリ鉛ガラスとカリ石灰ガラスの蛍光X線分析を実施する。北海道では、擦文文化期にガラス玉の流入がいったん途絶えたのち、アイヌ文化期初期に再び流入し、アイヌ文化期を通して大量に流通する。アイヌ文化期のガラス玉について、化学組成の分析を実施し、化学組成による分類を試みる。さらに、時期比定が可能な資料を選択的に分析することで、時期変遷についてのモデルを提示する。具体的には、すでに予備研究を行っている12~14世紀の資料に後続する時期にあたる15~17世紀の資料を中心に調査を予定しており、北海道余市町大川遺跡GP600、同恵庭市カリンバ2遺跡、上ノ国町勝山舘出土ガラス玉などを対象とする予定である。また、同時期または近接する時期の青森県十三湊遺跡、岩手県平泉市中尊寺、福井県一乗谷朝倉氏遺跡など本州以南の遺跡から出土したガラス玉との比較研究をおこなうとともに、中国の著名なガラス生産遺跡である山東省博山遺跡のガラス製遺物との比較検討を行うことで、アイヌ文化期におけるガラス玉の生産地と流入経路について明らかにする。 さらに、もう一方の境界領域である南西諸島の先史時代(弥生~古墳時代相当期)に属するガラス玉の蛍光X線分析を実施する。同時期における九州以北のガラス玉との比較検討を行うとともに、近年分析データが蓄積されつつある台湾における類例との比較を行い、流入経路について検討する。おもに沖縄県出土のガラス玉について調査を実施する。
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