Project/Area Number |
23K01009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04020:Human geography-related
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
橘 セツ 関西国際大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (70441409)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | ジェンダー / 女性庭師 / ライフヒストリー / 庭園(ガーデン・ガーデニング・園芸) / 英国 / 王立園芸協会 / 文化地理学 / 女子園芸学校 |
Outline of Research at the Start |
英国では、20世紀初期に、園芸分野(花卉・野菜・果樹栽培や養鶏・養蜂)の知識や技術を訓練する女子園芸学校が多く設立された。それらの学校の修了生の多くは、当時の新しい女性専門職・女性庭師となり、地主の地所・庭園・農場・公園などに派遣されて働いた。彼女たちの園芸知識の専門性は、多くの学校が連携した王立園芸協会によって担保されていた。一方、当時、働く女性庭師の身体は小説の中では「ズボンなんかをはいた、今どきの女庭師」(アガサ・クリスティ1920)と社会の中で奇異な存在として描写された。本研究では、新しい女性の職業としての女性庭師の誕生と活躍の契機となった教育機関を結節点とするネットワークを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、英国のレディング大学イングランド農村生活博物館にて、女子園芸教育機関の拠点の一つであった私立女子園芸学校レイディ・ウォリック・カレッジ・スタッドリー校 (Lady Warwick’s College, Studley)に関連する資料を閲覧して分析することが中心となった。特に、スタッドリー校とその系譜を引く学内雑誌を検討することから園芸学校に関わる教職員・学生・卒業生の活躍のネットワークと彼女たちの思考について分析した。20世紀初期の女子園芸学校創立と女性庭師の誕生の背景には、19世紀から20世紀にかけての英国では、都市化が急激に進んでおり、その反動として、カントリーサイドを見直し田舎の土地に回帰する運動 (‘the back to the land movement’)も深く関連していることが資料の分析から明らかになった。 2023年度は、特に創立者のレイディ・ウォリックとともに私立女子園芸学校スタッドリー校の初期3代の学寮長、具体的には初代学寮長エディス・ブラッドリー(任期は1898-1905年)、第2代学寮長メイベル・フェイスフル (任期は1905-1908年)、第3代学寮長リリアス・ハミルトン (任期は1908-1922年)の教育思想と実践に注目して彼女たちのライフヒストリーとネットワークについて検討した。学寮長たちのキャリアは園芸関連の著述家にとどまらず、女子教育者・医師・作家と幅広い。この3人の学寮長が1910年から協働して刊行した学内雑誌『ギルドについてのニュース』は、女子園芸学校で訓練を受けた同窓の女性同士が「ケレスの娘たちのためのギルド」において連帯し、安心・信頼できる同胞との同業者コミュニティを形成し、女性庭師として、それぞれの方法で道を切り拓いていく中で、人と人のつながりを生み出し、培っていくあらたな社会関係資本の源泉の一つとして分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で対象としている1898年に創立された私立女子園芸学校レイディ・ウォリック・カレッジの学校機関誌『スタッドリー・カレッジ農業ジャーナル』とその後続学校の雑誌資料および手稿を含む関係資料は豊富であり、英国にて計画的に閲覧を進め、分析している。その途中経過は、2023年11月に人文地理学会(於:法政大学市ヶ谷キャンパス)にて「20世紀初期英国の女子園芸学校を結節点とした「ズボンなんかをはいた,いまどきの女庭師」と「ケレスの娘たち」の理念をめぐる文化地理学」というタイトルで研究発表した。さらに論文「20世紀初期英国の女性の新職業としての女性庭師の誕生と活躍―英国の女子園芸学校レイディ・ウォリック・カレッジ・スタッドリー校の教職員の視点から―」(『関西国際大学研究紀要』25号,97-114頁)にまとめ発表した。したがって、おおむね順調に研究を進めていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、私立女子園芸学校レイディ・ウォリック・カレッジ関連の文書資料の閲覧については、1898年から1922年あたりまでの資料が中心となった。今後は、戦時における女子園芸教育の思想と実践の変化をたどることを目的に引き続きレディング大学イングランド農村生活博物館にて資料の閲覧と分析を続ける。さらに、次年度は、特に、女子園芸教育と女性庭師の活躍と王立園芸協会との関連について王立園芸協会図書館にて集中的な資料調査を計画している。初年度の調査で、20世紀初期に女子園芸学校・女性庭師に関わるネットワークと特に女性参政権を求める女性運動のネットワークが密接に関わっていることがわかったので、このような視点も内包してさらなる研究を進める。
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