Project/Area Number |
23K01083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
清水 知佳 駿河台大学, 法学部, 准教授 (10585243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 晶紀 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (20453615)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 原子力規制 / 市民参画 / 予防原則 / 廃炉 |
Outline of Research at the Start |
原子炉施設の廃炉に関する現在の法制度は、廃炉プロセスに市民が参画することが全く想定されていない。本研究は、かかる制度設計への疑問を起点として、市民の意見を廃炉プロセスに反映させる法的枠組みおよびその運用方法を検討するものである。具体的には、まず、①現行の廃炉プロセスの全体像を捉えた上で、②同プロセスのなかのどの段階に市民参画を導入するのが効果的か、という「時期」の特定、を試みる。さらに、③地方自治体が市民参画を保障・支援していく具体的方法について米国の先行事例から明らかにする。本研究は上記各作業を実施し、最終的には廃炉時代における市民参画の在り方を提示することを目指すものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
原子炉施設の廃炉の直接的影響を最も受けるのは立地自治体の住民をはじめとする市民であるにもかかわらず、現行法令においては、廃炉プロセスに市民が参画することが全く想定されていない。本研究は、かかる制度設計への疑問を起点として、市民の意見を廃炉プロセスに反映させる法的枠組みおよびその運用方法を検討するものである。 本年度は、廃炉プロセスの法的枠組みを現行法令や指針の分析によって整理したところ、立法過程における国会質疑や委員会報告等において、市民参画の導入を検討する議論や動きは特段みられなかった。市民の側からの参画を求める主だった声や動きについても同様である。原子力規制一般に内在する高度の専門性という一面がその理由として推測されるが、その一方で、米国では廃炉プロセスにおける市民参画の重要性が認められている。そこで、本年度は廃止措置に取り組む米国内の原子力発電所を対象とし、それぞれにおける市民参画の状況を比較検討した。そしてそのうちDiablo Canyon原子力発電所およびPilgrim原子力発電所については、市民で組織された協議パネルである市民廃炉パネルに着目し、それを導入した背景および課題について分析している。両パネルは州法の根拠を有しないという限界を有するが、廃炉プロセスと並走しながら定例的に会合を開き、事業者・政府(州・市)と協議する機会が保障されており、廃炉政策に市民の視点を反映させる実質的な効果を有していることを確認することができた。 加えて本年度は2022年に出された福島原発事故国家賠償訴訟最高裁判決を素材に、原子力行政への予防原則の採否についても検討を加え、複数の論文を公表している。予防原則の採否は廃炉プロセスにおける市民参画の範囲にも多大な影響を与える可能性があり、現在両者の関係性を精査しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、廃炉プロセスの法的枠組みを現行法令や指針の分析によって整理することを中心に行った。その結果、立法過程における国会質疑や委員会報告等において、市民参画の導入を検討する議論や動きが特段みられず、また、市民の側からも参画を求める主だった声や動きがなかったということを示すことができた。その理由を特定することはできなかったが、おそらく原子力規制一般に内在する高度の専門性という一面が強調されたことが推測される。本年度はさらに、福島原発事故国家賠償訴訟最高裁判決の分析を通じて、廃炉行政を含む原子力行政に対して予防原則を適用すべきという結論を得ることができた。次年度から予防原則の採用を前提にした市民参画を想定し、市民参画の範囲を拡大する具体的方法を考察していく予定である。 本年度は比較研究として、米国カリフォルニア州Diablo Canyon原子力発電所およびマサチューセッツ州Pilgrim原子力発電所を対象としてそれぞれにおける市民参画の状況を調査した。両発電所は廃炉を議論する市民組織である、廃炉市民パネルを設置しており、パネルメンバーへのインタビューを実施することができた。その結果、両パネルはともに州法の根拠を有しないという限界を有するが、廃炉プロセスと並走しながら定例的に会合を開き、事業者・政府(州・市)と協議する機会を保障されており、廃炉政策に市民の視点を反映させる実質的な効果を有しているという実態を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、日本の廃炉の法制度の全体像を捉えることに加えて、廃炉における市民参画の重要性が認識されている米国を調査し、廃炉市民パネルを中心として、市民が廃炉プロセスに関わっていく具体的方法の実態を明らかにすることができた。そこで、今後の研究では、日本の廃止措置計画の特徴を整理した上で、米国の議論が当てはまるのか検証し、日本における市民参画の時期および方法を提示していきたい。市民を保護するという地方自治体の本来的役割に着目し、地方自治体が市民参画を保障・支援していく具体的方法について米国の先行事例から明らかにする。 日本では、福島第一原子力発電所の廃止措置が、核燃料が溶け落ちて塊となった固形物(デブリ)の取出や、処理水の海洋放出に移行してきたことで、廃炉は市民にとってより脅威を感じるものとなってきている。そこで、こういった不安・不信に係る市民の意見表明とそれに対する法的対応が裁判という事後的プロセスではなく、廃炉手続という事前プロセスのなかで認められるように、市民参画の可能性を引き続き探っていきたい。本年度は、廃炉完了予定が大きく遅延している茨城東海村原子力発電所や、廃炉の協議会を設置している福島原子力発電所等を訪れ、自治体や事業者、住民にインタビューし、それぞれが考える理想的な市民参画の時期および方法を明らかにしていきたい。
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