Project/Area Number |
23K01087
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
建石 真公子 法政大学, 法学部, 教授 (20308795)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 生命権 / トリアージ / 旧優生保護法 / 中絶 / トランスジェンダー / 人権条約 / 憲法13条 / 生命倫理 / 生殖医療 / 安楽死 / 強制不妊 |
Outline of Research at the Start |
日本国憲法13条「生命権」は、司法や立法によって保護される実定法上の権利か否か、具体的にはどのような権利なのかが不明確である。本研究は、この問題に関して第二次世界大戦後から生命権に関する解釈を積み重ねてきている人権条約の条約機関の判例や学説、インタビューを通じて解釈を明らかにし、13条の生命権解釈に架橋(比較法や司法対話を通じた人権解釈への影響)し、実効性のある権利解釈を提案する。近年の生殖医療や安楽死等の生死の決定、福島原発事故のような災害への国の対処、Covid-19禍の治療へのアクセス拒否等、生命権に関する新たな課題に対して立法や司法,行政に救済を要請しうる国の積極的義務が必要である。
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Outline of Annual Research Achievements |
「現代的人権課題における生命権保護」という研究課題は、従来の法制度における生命権の保護とは性質および局面の異なる文脈において生命権を法制度がいかに保護しうるか、を考えることである。従来、生命権は、人身の自由として刑事訴訟手続きにおける生命の保護、また死刑の是非の問題として議論されてきた。しかし現代では、そうした問題に加え、医学による生命や生殖への介入による人権侵害の問題の解決が求められている。本研究は、現代的課題として「医学による生命への介入」を取り上げ、2023年度は、COVID-19禍において、医師が、複数の重症者の間で人工呼吸器を装着する人を選別し再配分する事を認める「重症者トリアージ」という提言がなされたことの問題、生殖に対する介入として旧優生保護法などによる「強制不妊」やトランスジェンダーの人々に対する半強制的な性同一性障害者特例法の定める「生殖能力の喪失要件」の問題、さらには生殖に関わる女性の権利との関係で「代理懐胎」の問題について、日本とフランスとの比較法的な観点から検討した。 検討からは、重症者トリアージや旧優生保護法にもとづく強制不妊手術のように直接に生命の危機や生命を生み出す生殖能力の喪失を強制するという問題に対して、日本の法制度においては、生命権によって其れを防止することが困難であるという状況が明らかになった。その理由は、第一に憲法上生命権を保護している13条は、長い間、包括的な規定であって具体的な権利を引きだす規定ではないと解釈されてきたこと、生命権は、公権力などによる恣意的な生命のはく奪に対して個人を保護する規定であり、医療者対患者のような、私人間における権利問題、また医師患者関係のような、そもそも実際的に対等ではない関係において「治療」に法制度が介入することの難しさがあげられる。第二に、生命権を保護する人権条約の適用の消極性があげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、課題に関して①COVID-19禍におけるトリアージと生命権、②終末期における意思決定とトリアージの問題、③代理懐胎と女性の生殖に関する権利、④強制不妊をめぐる旧優生保護法とトランスジェンダーの問題、⑤生命倫理と国際人権法、の5編の論文において問題点を明らかにした。 また二つの国際学会で、終末期と生命権及び患者の権利というテーマで報告を行い、研究交流の機会を得、比較法的な観点からの検討に進展をみた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、前年度に明らかになった課題のうち、日本法制度における生命権に関する解釈をより精緻に検討する必要がある。また、日本が批准している国際人権規約の6条の定める生命権の解釈の進展も文献や判例などで調べることが必要であるため、その検討を行う。 最終年度の2025年度は、学会報告などで現代的課題に対する生命権保護に関して一定の結論を明らかにすることが課題である。
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