Project/Area Number |
23K01122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05040:Social law-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中川 寛子 北海道大学, 法学研究科, 教授 (10301863)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | レバレッジ / Google Android / デフォルト / データ集積 / 囲い込み / 同等性条項 / 人為性 / デジタル・プラットフォーム / デジタルプラットフォーム / アフターマーケット / 市場の上での競争 / 自己優遇 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、伝統的に「市場の中での競争」における抱き合わせをめぐって蓄積されてきたレバレッジ関連の理論が、DPFによる「市場の中での競争」及び「市場の上での競争」にかかる抱き合わせや自己優遇に応用できるか、その限界はどこにあるか、を明らかにする。また、市場の上での競争に関して、アフターマーケットやプライス・スクイーズ等の理論がどのように応用できそうか、の解明を試みる。とりわけ、①DPFによる抱き合わせの、セオリー・オブ・ハームや正常な競争手段を逸脱する人為性を、伝統的な理論との接合により精緻化することを目指し、②DPFがレバレッジする「力」とは何か、③自己優遇の不当性、等の解明を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度には、欧州一般裁判所によって下されたGoogle Android事件判決(Judgment of 14.9.2022, Case T-604/18)をめぐる議論の検討を中心に、研究を進めた。同事件では、Googleがアプリストア、検索アプリ、検索ブラウザを抱き合わせたことが問題視された。そこで、同事件においてどの市場におけるどのような力をどのようにレバレッジしていたのか、レバレッジがどのように機能していたかの検討を行った。Googleはいずれの市場においても市場支配的地位を有していたことから、従たる市場における競争制限を起こすタイプのレバレッジではなく、市場支配的地位にある全ての市場での地位・力を相互にレバレッジし、全体における参入障壁を引き上げる戦略が採用されたこと、さらに、各種契約条項を用いてモバイル機器メーカーに対し自己の検索アプリをデフォルトに設定させ、Googleにデータを集積させる施策を複合的に行っていたことがわかった。 判決及び議論の大半は、抱き合わせのメカニズムだけではなく、デフォルト設定をいかに成功させたかに集中している。そのため、従来型の抱き合わせによる排除のメカニズムに加えて、検索アプリをデフォルトに設定することがいかに強い排除効果を発生させるか、という、デジタルプラットフォームならではの排除のあり方を理解するに至った。 その他、DeNAによる囲い込み事件(公取委排除措置命令平成23年6月9日)、Booking.comによる同等性条件(公取委確約認定令和4年3月16日)についての評釈 を執筆した。これらは、『経済法判例・審決百選(第3版)』に掲載が確定している。また、マイナミ空港サービスによる排他的取引事件(東京高判令和5年1月25日)の評釈を執筆し『令和5年度重要判例解説』への掲載が確定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Google Android事件については、決定文・判決文合わせると大部であるうえ、議論が集中していることもあり、その解明には時間を要した。但し、時間はかかったものの、今日最大クラスのデジタル・プラットフォームでありかつその様々な行動が懸念されているGoogleの戦略について、当該事件における概要がつかめたことから、研究自体の進捗は概ね順調といえる。しかし、論文の完成にまでは至らなかった点で、進展は「概ね」順調にとどまると考えた。 また、DeNA事件とBooking.com事件の評釈を執筆することで、デジタル・プラットフォームによる囲い込みや同等性条項といった、デジタル・プラットフォームに特徴的な行為に関する理解が進んだことは、大きな進捗といえる。とりわけ、同等性条項のwide型, narrow型両方のセオリー・オブ・ハームについて理解が深まったことは、大きな進捗であった。 さらに、マイナミ空港サービスの事件について検討することで、排除行為における「人為性」とはどのような概念か、について、検討を深めることができた。人為性は、排除行為における基本概念であるが、十分に議論が蓄積されているとは言い難い。判決自体は事例判断であり問題も多いものの、人為性概念の精緻化を図る作業自体は非常に有益であったように思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度においては、Google Android事件の検討を通じて明らかになったことについて論文執筆を進める。まずは、同事件におけるGoogleの行為の全体像を正確に論述することが重要となる。 その上で、デフォルト・バイアスの強相補的な意義について、より精緻な理解を進めたいと考えている。そのためには、行動経済学の知見を深める必要がある。心理学等にも研究を広げる必要性も想定している。まずは、Google Android事件を手がかりに、何らかのアプリ等のデフォルト設定があることで、ユーザーがいかなる反応・行動を取るのか、それを利用した仕組みがどのようなものであり、どのようにして競争者排除につながっていくのか、そのセオリー・オブ・ハームを精緻に示したいと考えている。このことは、自己優遇等における自己サイトの優先的な表示等による排除のメカニズム解明にも資すると考えている。 複雑に絡み合ったエコシステムの中で、どのような仕組みが「力」を生むか、そしてそれをどのようにレバレッジすることが、データを集積させ、また競争者の排除につながるか、そのメカニズム解明を進めていきたいと考えている。
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