Project/Area Number |
23K01133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05040:Social law-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
渕川 和彦 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (00711227)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | アルゴリズム / デジタルプラットフォーム / ランキング操作 / 優越的地位の濫用 / レバレッジ / 差別的な取扱い / 不可欠性 / 巨大IT企業 / 間接的競争侵害 |
Outline of Research at the Start |
従来、経済法は売手側の独占行為、共同行為を中心に規制してきた。しかし、輸送手段、情報通信技術の向上により大型小売業が発展し、量販店、スーパーマーケット等が大きな交渉力を獲得するに至っている。さらに、近年、事業者と消費者等の複数の市場の当事者間の取引の基盤を提供するプラットフォーム事業者が膨大なデータを集約することで大きな交渉力を獲得しており、買手事業者としてのプラットフォーム事業者の行為が独占禁止法上問題となり得る。そこで本研究は、大規模小売業をはじめとする購買力の一方的な行使に関して、第三者効果を論じる間接的競争侵害説を再検討することで、優越的地位の濫用規制の利用可能性を検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究実績として、まず、第22回情報科学技術フォーラムの「アルゴリズム運用と法律の関係」に関するパネリストとして招待され、「経済法におけるアルゴリズムの設定及び変更行為の規制」について報告を行った。デジタルプラットフォーム事業者が自ら運営するプラットフォームにおいて自身も事業活動を行う場合の自己優遇については、市場支配力を形成・維持・強化する場合には競争法上違法となる判例が現れていることを明らかにした。また、ランキング操作に関して優越的地位の濫用をはじめとした独禁法上の違反行為が認定された場合には、違反行為に関するアルゴリズムの一部が開示される可能性があることを示した。また、2023年アジア競争協会第15回年次大会「アジアにおける競争法執行の現代的課題」において、「Regulations of Unilateral Conducts in Japan」というテーマで食べログ事件東京地裁判決及びダイレックス事件東京地裁判決を取扱い、レストランのポータルサイトを含むプラットフォーム事業者による一方的なアルゴリズムの変更が優越的地位の濫用に該当し得ること、そして、取引の継続が困難となることが事業経営上大きな支障を来すため、従業員派遣や閉店セールや火災に関する金銭の提供など、大規模小売業者が納入業者にとって著しく不利益な要請等を行っても、これを受け入れざるを得ないような場合には取引上の地位の優越性と不利益行為を認め優越的地位の濫用が認められることを明らかにした。最後に、2023年ASCOLA ASIAでは、「Self-preferencing in Korea and Japan」というテーマで日韓の、巨大IT事業者による自己優遇の規制に関して日韓比較を行い、レバレッジ、差別的な取扱い、そして不可欠性という3つの判断要素に着目する新たな規制アプローチの有効性について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の進捗状況は、おおむね順調に進展している。EU競争法及び韓国競争法について、市場支配的地位の濫用規制、買手市場支配力規制に関するヒアリングを実施し、我が国独占禁止法における優越的地位の濫用に関するヒアリングを実施することができた。まず、欧州競争法について、2023年2月にロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ校のLianos教授にヒアリングを行い、欧州競争法におけるデジタルプラットフォーム市場分野における規制を中心にヒアリングを行い、日本におけるデジタルプラットフォーム市場規制との情報交換を行った。また、Ruth Taplin教授と編著で” Competition Law Regulatory Change in Relation to the Gatekeeping Role of Digital Platforms: Japan, UK, EU and USA”というタイトルで書籍を出版することが決まり、出版に向けて打ち合わせを行った。本書籍では、AIアルゴリズムと競争法による規制を検討し、その中で優越的地位の濫用規制の意義について検討する予定である。また、韓国競争法については、Yo Sop Choi教授を大阪公立大学客員研究員として招聘して共同研究を行い、その成果を2024年1月のASCOLA ASIAで自己優遇に関する日韓比較を通じて優越的地位の濫用規制の検討を行うことが出来た。また、第22回情報科学技術フォーラムにおいて、食べログ事件判決の是非について、経済法、情報法、実務の観点から、事前規制及び事後規制の組み合わせの重要性を明らかにした。2023年アジア競争協会第15回年次大会において、中国、韓国をはじめとしたアジアにおける競争法研究者、実務家に対して、食べログ事件判決及びラルズ事件判決を通じて優越的地位の濫用規制の我が国の現状とその課題について明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
Ruth Taplin教授と編著で執筆する"Competition Law Regulatory Change in Relation to the Gatekeeping Role of Digital Platforms: Japan, UK, EU and USA"を11月に脱稿予定である。巨大IT事業者がAIアルゴリズムを活用する事業者を統合したり、出資や提携することで、デジタル・エコシステムを形成することが指摘されている。また、巨大IT事業者による自己優遇であったり、評価の一方的な変更等が問題となることがあり、巨大IT事業者及びローカルなデジタルプラットフォーム事業者をどのように規制するべきかについて論じる予定である。また、2024年10月に日本経済法学会のシンポジウム「デジタル経済と新たな規制の展開」において「AIアルゴリズムの活用とその競争法上の規制」について報告を行う予定である。我が国独占禁止法における不公正な取引方法は、違反行為を競争制限効果が生じる萌芽段階で規制することから、必ずしも厳格な市場画定は求められない。また、自由競争減殺は競争を回避又は排除することにより競争の実質的制限に至らない程度の制限効果が認められることで足りることから、エコシステムを背景としたAIアルゴリズムを用いた反競争行為に対しても有用であると考えられる一方で、過剰規制にならないよう慎重を期する必要があることについて論じる。また、2024年7月に第19回ASCOLA年次大会(ヴィルツブルグ、ドイツ)において、自己優遇に関する日韓比較の共同研究の成果を報告する予定である。日韓比較においては、日本の自己優遇に類する事例である食べログ事件を取り上げ、韓国のNAVER事件やKAKAO Mobility事件も同様の事例等を比較し、自己優遇に対する新たな規制アプローチを明らかにする予定である。
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