Project/Area Number |
23K01170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
梅澤 彩 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (90454347)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 養子 / 里親 / 出自を知る権利 / 面会交流 / 養子縁組 / 親子の交流 / 権利保障 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、民法・家族法の観点から、子の最善の利益と福祉を主軸として、(1)里子・養子の出自を知る権利と産みの親のプライバシーに係る権利について、その法的性質と根拠を整理し、(2)子の出自を知る権利の保障と記録の在り方について、より具体的で実現可能な制度の在り方を検証するものである。本研究では、さらに、(3)里親・養子縁組の関係当事者間相互の情報開示と交流、産みの親と育ての親による子育ての協働の可能性について、その法的性質および根拠を探求し、子の福祉および関係当事者の支援に資する政策について検討・提言を行う。その際、すでに(3)に係る法制度を展開しているニュージーランド家族法を比較対象とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の基礎となる「出自を知る権利」および面会交流の法的性質・法的根拠について研究を行った。具体的には、国内外における匿名出産・内密出産をめぐる法制度および現状と課題を参考に、出自を知る権利の意義・保障の在り方(情報管理システム・管理情報の範囲および情報開示の在り方等)について検討を行った。検討の際の情報源は、主として、日本・フランス・ドイツの法制度に関する文献および専門家からの情報提供による。とりわけ、日本における匿名出産・内密出産をめぐる現状と課題については、これらに関する行政の実態に詳しい専門家および慈恵病院が設置した「こうのとりのゆりかご」に預け入れられた当事者とともに複数回にわたる勉強会を実施した。 また、里子・養子の出自を知る権利と親子の交流・生みの親の実態については、これらに関する行政の実態に詳しい専門家および当事者からの情報提供や、報告者が所属する「養子と里親を考える会」における研究会報告・会誌から得られた情報等をもとに、当事者および行政等の関係機関の意識や実態を把握・整理した。 上記のような研究活動の結果、現時点においては、生みの親と育ての親による子育ての協働の可能性については、消極的に評価せざるを得ない。しかしながら、現在、家族法改正の議論において面会交流の当事者を拡大する方向での議論等が進められているところ、生みの親と子との交流の可能性・交流の在り方に関する検討を手掛かりとして、今後も研究を展開する予定である。 なお、研究成果の一部については、シンポジウム(「社会的養護の実際と課題-親権・面会交流を中心に-」上智大学生命倫理研究所・南山大学社会倫理研究所2023年度共催シンポジウム、「出自を知る権利と親子-家族法の立場から-」熊本県弁護士会子どもの人権フォーラム「出自を知る権利について考える」)等において発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「出自を知る権利」および面会交流の法的性質・法的根拠に関する検討については、ほぼ当初予定どおりに進めることができた。これらに関する研究成果は、「研究実績の概要」に記載した通り、シンポジウム・講演等において公表することができた。ただし、いずれも口頭報告であり、文章化することができなかったため、2024年度以降、資料・論文等のかたちで纏め上げる予定である。 また、2023年度は、ニュージーランドにおける現地調査(2024年度実施予定)に向けての質問項目・訪問先の選定等を行う予定であったが、これらについては、遅れが生じている。現在、ニュージーランドにおいて「1955年養子法」(Adoption Act 1955。以下、「養子法」という。)の改正が予定されており、法改正に向けての手続が進行中である。 本研究の研究計画を立てた当時は、第1回Public engagement等(2022年8月時点において第2回目のPublic engagementが終了している)の議論内容を反映した改正法案に係る関連情報を入手・整理したうえで、現地調査の内容を検討する予定であったが、法改正に係る議論の進展が遅く、調査内容・調査先の絞込みが困難な状況にある。さらに、ニュージーランドにおける養子の出自を知る権利・生みの親との交流等を検討する際には、「1985年成人養子縁組情報法」(Adult Adoption Information Act 1985)が重要な意義をもつが、同法についても、養子法改正の影響がどの程度あるのか、今後の展開を見守る必要があるといった状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、前年度に続いて、ニュージーランドにおける「1955年養子法」(Adoption Act 1955。以下、「養子法」という。)改正に関する議論の状況、および養子法改正が与える「1985年成人養子縁組情報法」(Adult Adoption Information Act 1985)への影響等を調査しながら、質問項目および訪問先の選定等を行う。養子法改正の動向に留意しつつ、同国におけるフィールドワークを実施する予定である。 フィールドワークでは、応募者と長年にわたり交流のあるニュージーランド・ビクトリア大学のBill Atkin教授(民法・家族法の第一人者)、オタゴ大学のMark Henaghan教授(同)、出自を知る権利および面会交流支援の第一人者である同・カンタベリー大学のKen Daniels教授(ソーシャルワーク)、社会的養護・養子縁組等に関する問題を管轄する「子ども省」(Oranga Tamariki)の関係者、養子縁組に関連する民間団体等に対してインタビュー調査を行い、同国における法制度およびその運用実態を把握する。さらに、養子法改正の状況を踏まえ、可能であれば、法務省の関係者にもインタビュー調査を行いたいと考えている。 フィールドワークで得られた調査結果の分析・評価に際しては、日本における養子法制だけでなく、厚生労働省の新たな社会的養育の在り方に関する検討会が公表した「新しい社会的養育ビジョン」(2017年)、子どもの権利条約も視野にいれて比較検証を行う予定である。なお、調査結果等については、研究会・学会報告・論文等において報告する予定である。 また、2025年度は、これまでの研究活動の成果を踏まえて、里親・養子縁組制度における子の出自を知る権利と親子の交流を保障し、子育ての協働を支援するための具体的な制度の在り方を検討・公表する予定である。
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