The Study on the Diverse Remedial Mechanisms in Tort Law
Project/Area Number |
23K01197
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
楪 博行 白鴎大学, 法学部, 教授 (20331332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池村 好道 白鴎大学, 法学部, 名誉教授 (80184448)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 不法行為損害 / 救済の多様性 / 行政の関与 / 日米比較 / 不法行為 / 救済形成での行政の関与 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、不法行為被害への行政の関与等多様な方法での救済実現の可能性を考察する。不法行為被害救済の原則を損害賠償とする日本では、救済の遅延化等の問題が発生した。一方で、アメリカでは従前より証券詐欺被害では行政的救済と私的救済が併用され、さらに不法行為被害の救済に保険や行政による信託など多様な方法が採られてきた。 そこで本研究では、まずアメリカにおける証券取引における民事と行政による併存的救済を契機に、同国での不法行為被害救済での多様な救済方法の妥当性を個別に検討する。その上で、日本への適用可能性を探り、不法行為被害への多様な救済方法の提示とその理論的枠組みを構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究を開始した昨年度は、第1にアメリカの不法行為被害救済に対する私人による法実現の限界と、第2にその代替方法として行政による救済形成への関与について分析を行った。 第1については、アメリカにおける不法行為損害への填補賠償と懲罰的賠償から検討を加えた。前者については、管轄裁判所により被害者が受領できる損害賠償に相違があり、必ずしも完全な填補賠償を受領することができず原状回復が困難となり得る。一方で後者は不法行為への制裁と抑止の目的をもつが、認容されるには故意が必要である。不法行為損害の発生原因の多くは加害者の過失のため、懲罰的賠償の対象外となる。そのため、私人のみによる不法行為損害への法実現は困難といえる。 第2については、アメリカの証券法制定を端緒に行政の私人による法実現への介在経緯を探った。1933年の連邦証券法には、アメリカ証券取引委員会 へ証券募集の登録とこの義務の違反に民事責任が課せられることが定められた。しかし、立法過程から民事責任規定の趣旨と制定理由は不明であった。証券取引での不正を背景に、ルーズベルトの大統領選挙公約に投資家保護が含められおり、不正行為の抑止のため行政が介在することになったと理解できる。ところで、医薬品および医療機器も連邦食品医薬品局の規制を受ける。この根拠となるのが1938年の連邦食品・医薬品・化粧品法であり、新薬および医療機器販売前の認可のみを対象とし、薬品などを原因とする損害への民事責任を問うものではない。 連邦証券法および連邦食品・医薬品・化粧品法は行政による規制対象は異なる。しかしいずれの規制対象も広域にわたる損害を発生させるものであり、かような場合には損害救済に行政の介在が妥当となり得る可能性を見出せる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、全体研究計画の第1段階であり、第1に不法行為救済での私人による法実現の限界を、填補賠償および懲罰的賠償から検討を加えた。とりわけ証券詐欺事案など大規模化した損害には私人のみでは法実現が不可能であることが示された。アメリカでは、従前より不法行為被害の予防には懲罰的賠償が有効と考えられてきた。これは損失補填を目的とする填補賠償とは異なり、違法行為に対する制裁と抑止の目的をもつからである。そのため、それが認められるには故意が必要である。しかし、多くの不法行為は過失により発生するため、懲罰的賠償は不法行為損害に対応できる賠償方法であるとは断定できず、私人による法実現の限界がここから示されるのである。以上示されたように、本検討テーマの研究は一定の結果を示すことができたといえる。 次に、アメリカの証券法案と証券取引法案の立法過程を通じて、証券取引での違法行為への救済が行政と私人が併用された理由を考察した。証券取引における民事責任は、コモン・ローから独立して1933年に成立した連邦証券法に規定された。民事責任は合衆国議会で議論されておらず、ルーズベルト大統領の選挙公約とその後の福祉国家政策を背景として自明ととらえられたものと推定できる。また連邦食品・医薬品・化粧品法も証券登録の規制を連邦食品医薬品局に委ねるが、民事責任が制定法ではなくコモン・ローに拠っている。民事責任の根拠を巡る本法と証券法の間での相違がいかなる意味をもつかの結論は未だに検討中ではあるが、現在のところ本検討テーマの研究は計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、当初研究計画のうち第2段階を実行する。まず、アメリカにおける不法行為被害への多様な救済方法が示す問題と不法行為被害への行政関与での問題を分析し、各々についてその解決策を検討する。次に、日本における不法行為法と行政法の併存可能な領域での行政の関与程度について、以下の諸点につき考察を加える。第1が、アメリカの不法行為損害への救済方法を分類化し、具体的な不法行為に対する救済方法をマトリックス化することである。第2が、日米比較の前提として、日本での規制権限の不行使の違法性につき、非申請型義務付け訴訟における行政介入請求権、および行政手続法における行政指導請求権の視点から検討することである。第1については研究代表者が、そして第2については研究分担者がそれぞれ担当する予定である。 以上の当初計画に沿った研究の推進に加え、今後3か年をかけてアメリカの不法行為損害の概念が出現した歴史的背景を探る。これは比較法的検討の前提となるものである。本年度はまずローマ法が伝来した紀元後約400年までのローマン・ブリテン、その後のアングロ・サクソン時代におけるローマ法の影響を探る。次にノルマン朝およびアンジュ―朝までのコモン・ローの誕生の過程を分析する。イングランドにおいて不法行為損害の救済がいかなる法的根拠でなされてきたかの分析に着手する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)