Project/Area Number |
23K01248
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関谷 昇 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (00323387)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | アルトジウス / 主権 / 統治 / 政治 / 団体 / 代表 / 補完性原理 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、プロテスタントの拠点であった東フリースラントのエムデン(神聖ローマ帝国北西部)で活躍したヨハネス・アルトジウス(1557-1638)の政治思想を本格的に考察するものである。彼は、宿敵ボダンとは異なる新たな主権論の軸に、水平的・重層的・分権的な政治秩序を構想していた。そこには、アリストテレスやローマ法の受容、中世団体論の影響が色濃く見られ、絶対主権の支配ではなく、主権者(立法者)と統治者(執行者)との双方向的な関係のダイナミズムが見出される。究極的な価値対立の時代において、いかなる政治を通じて共生の秩序を具現化しようとしたのか、主権国家のオルタナティヴとして、その核心に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、アルトジウスの政治学の主著『政治学(Politica)』に焦点を合わせたアルトジウス研究の資料収集に努めるとともに、その研究動向を包括的に整理した。 『政治学』において構想されている政治秩序は、もっぱら「生活共同体(consociatio)」が軸となっているが、それは中世から連続する団体論を正面から受容するものである。その先駆けは、ドイツの法学者ギールケであったが、それはさらに連邦主義やカルヴィニズムの社会契約と結びつけられながら、多層的な政治秩序や補完性原理へと結びつけられている。一方、 近年の研究動向は、主権と統治との緊張関係に焦点がある。この背景には、立法権を中心とした主権論とそれに従属する統治者という図式に対するとらえ直す近代政治思想研究の展開がある。主権と統治は、むしろ相互関係のダイナミズムとしてとらえられるのであり、その視点からすれば、絶対主権と法の支配とを対抗的に理解するは大きな見直しを迫られる。アルトジウスの団体論や代表概念は、そうした視点から改めて注目されている。 こうした研究動向をめぐる研究成果については、「アルトジウス研究の諸潮流」(『千葉大学法学論集』第38巻第4号、2024年、109-128頁)において公表した。これは、『政治学』に焦点を合わせたものであるが、今後調査・研究を進める『ローマ法学』と『権利と裁判』をめぐる研究動向と合わせて、アルトジウスの先行研究を包括的にとらえるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述した『政治学』に焦点を合わせたアルトジウス研究の他に、『ローマ法学』と『権利と裁判』といった法学に関するアルトジウスの著書も存在しており、そのテクスト読解と研究動向の調査も進めているところである。これらの作業は、団体論に対するローマ法の影響、さらには「政治」観をめぐる変化をとらえる上で必要不可欠ものとなっている。しかし、これらの作業は、想定していたよりも多くの時間が必要となっており、それらをめぐる研究動向の整理についても進行中となっている。 研究計画では。オックスフォードを中心とした海外研究拠点での調査や研究者との交流を行う予定であったが、これらの作業を進めてからの方が有益であることから、海外研究については次年度に回すことにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
アルトジウスの『ローマ法学』『権利と裁判』のテクスト読解を進めるとともに、それらに焦点を合わせた諸研究の収集・分析を行う。なお、これらについては、まず国内でできる作業を可能な限り進めることとし、それを踏まえた上でオックスフォード大学を中心に、さらなる調査・研究を行うことを予定している。アルトジウスの法学をめぐる研究動向については、昨年度の研究成果発表に引き続き、公表する。 次に、政治学・法学の研究動向を踏まえながら、アルトジウスが、各生活共同体の自治において主権者と統治者にどのような位置づけを与えようとしたのか、代表人格論を中心に解明を試みる。また、それらが「政治」観の変化にどのような影響を与えたのか、ボダンやリプシウスと対比を試みながら、アルトジウス固有の特徴をあぶり出すことを試みる。
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