Childcare with Universalism and Low-Income Targeting in France
Project/Area Number |
23K01255
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
千田 航 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (80706747)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 家族政策 / フランス / 福祉国家 / 子育て支援 / 普遍主義 |
Outline of Research at the Start |
サービス業中心の知識基盤型社会では働き続けるために人的資本への投資が重要である。そのため、多くの国は保育サービスなど就学前教育を充実させることで、子どもへの社会的投資を展開している。しかし、財政上の制約などからすべての子どもには提供できず、結果として中高所得層に保育サービスの提供が偏る。すべての子どもへサービスを提供するならば、この偏りを是正する必要がある。フランスでは低所得層が利用しやすいよう保育所の利用調整を行っている。本研究では、認可外保育所なども含めた保育サービス全体を支援する体制が確立されたことで、保育所の「低所得ターゲティング」戦略で政策当事者が合意できたことを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、すべての子どもに保育サービスを提供するための政治的戦略を解明することにある。具体的には、認可外保育所なども含めた保育サービス全体を支援する体制が確立された段階を経て、就業を伴っていない低所得者にも保育サービスを利用すべきだとする保育所の「低所得ターゲティング」戦略で政策当事者が合意できたことを明らかにすることで、誰にサービスを提供するかに関わる普遍主義と選別主義の対立を緩和する政治的戦略を示すことが目的であった。 フランスにおける保育所の利用調整はそれぞれの自治体ごとに異なるが、低所得層を優遇する点数付けを多くの自治体で行っている。自治体ごとに利用調整の方法が決められていったのは、自治体ごとに基準を自由に設計できるようになった分権化以降、1980年代であると考えられる。この時期は社会党政権であった。その意味で、左派による福祉国家再編の新たな戦略として「低所得ターゲティング」を提示できる可能性がある。 現在の保育サービスの拡充傾向は右派も左派も政権公約に掲げるものであり、その違いは不鮮明である。本研究で「低所得ターゲティング」が左派による戦略であると明らかになれば、新たな政治的対立軸として福祉国家研究に大きなインパクトを与える独創性をもつ。 今年度の研究実施計画では、普遍主義と「低所得ターゲティング」との関係について理論枠組みを構築することと精緻化することが目標であった。そのために必要となる文献や資料の収集、学会や研究会への参加を重ねた。具体的な研究成果を挙げたという状況ではないが、フランスの保育サービスにおいてなぜ低所得者に対して相対的に利用可能な状況にあるのかという問題を説明する枠組みは完成しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献や資料の収集および学会や研究会への参加を通じて、普遍主義に対立する概念を所得に限らず受益者を一部に限定する残余主義(Residual)とし、社会保障を低所得向けか高所得向けかで整理する「ターゲティング」の軸を打ち出すことで、普遍主義と低所得向けの支援(「低所得ターゲティング(Pro-poor)」)が対立せずに共存可能な分析ができるという理論枠組みが構築されようとしている。 今年度研究実施計画では理論枠組みの精緻化までを目標としていたが、具体的な事例との関係での精緻化はできていない。また、実際のフランスの子育て支援における低所得ターゲティング戦略の導入についても分析も十分に進んでいるとはいえず、さらなる文献や資料の収集が必要となる。 また、本来であれば進めておきたかった関係領域の研究者との研究打ち合わせも学会や研究会以外の場では行えておらず、他の研究者からのフィードバックという点では遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画では、2024年度に目的達成のためフランスでの現地調査を行う計画となっている。そのなかで、所得を積極的に考慮した保育所利用調整が社会党政権のどのタイミングで実現できたのかを政府資料・自治体資料を用いて明らかにする予定である。 しかし、重大な問題としてフランスでの現地調査を行う予定であった夏時期にパリオリンピック・パラリンピックが開催されるため、この時期に滞在して現地調査を行うことは宿泊先の手配および予算の関係上困難だと言える。また、現在までの進捗状況で説明したように、理論枠組みの精緻化という点では研究実施計画からやや遅れた状況にあり、前年度の文献や資料の収集の継続や新たに関係領域の研究者との研究打ち合わせなどを行っていく必要がある。 したがって、2024年度は前半で理論枠組みの精緻化を目指した研究を中心に行っていき、徐々にフランスの子育て支援の事例研究の調査へと移行していく。その後、2025年2月頃にフランスでの現地調査を行うこととし、それまでの文献や資料に基づいた政治過程の構想を実際の政府資料・自治体資料を突き合わせることで研究成果の基盤を作っていく。 また、成果報告に向けて、現地調査以前の資料を中心に学会報告や研究会報告を行っていくことで最終年度につなげていくことができるだろう。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)
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[Book] 揺らぐ中間層と福祉国家2023
Author(s)
高端正幸・近藤康史・佐藤滋・西岡晋編
Total Pages
290
Publisher
ナカニシヤ出版
ISBN
9784779517495
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