Project/Area Number |
23K01263
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
浅見 靖仁 法政大学, 法学部, 教授 (60251500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 朋子 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (50783601)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | タイ / カンボジア / 選挙 / 前進党 / 貢献党 / 投票行動 / 下院議員選挙 / 開票結果 / 政治 / 国会議員 / 投票 |
Outline of Research at the Start |
タイの国政選挙と地方選挙を詳細に分析し、政治的対立軸の変化とその原因を明らかにする。補助事業期間中に行われる下院選挙、県議会選挙、市町村議会選挙、バンコク都知事選挙の投票日前後にはフィールド調査も行う。理論面に関しては、スタイン・ロッカンが提唱した社会的亀裂と政治的対立軸の関係に着目するアプローチを新興民主主義国に適用できるように動態化することを目指す。 十分に信頼できる世論調査が行われていない新興民主主義国の選挙結果についても、センサスデータや質的調査で得られた情報と組み合わせることによって、比較政治学的分析に資することができる実証的分析を行うための手法を考案することも目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、研究代表者が5月9日から17日までタイで現地調査を行い、5月14日に行われた下院議員選挙に向けての各政党の選挙運動や有権者の投票行動、市民団体による選挙監視活動などを観察するとともに、関係者に聞き取り調査を行った。これまでのタイの国会議員選挙では公表されてこなかった投票場ごとの開票結果もタイの全県の約半数について入手した。 研究代表者は6月14日から23日までタイで2回目の現地調査を行い、5月の選挙で第1党となった前進党と第2党の貢献党の連立交渉について聞き取りを行うとともに、5月の調査では収集しきれなかった県の投票所ごとの開票結果を入手した。6月の現地調査ではバンコクだけでなく、農村部も訪問し、地方レベルでの前進党と貢献党の関係についても情報を収集した。 研究代表者は、7月13日から31日まで3回目の現地調査をタイとカンボジアで行った。タイでは首都バンコクのほか、6月の調査では訪問できなかった北部や西部の県も訪問して聞き取り調査を行った。またカンボジアで7月23日に下院議員選挙が行われたため、投票日の前日から3日間カンボジアを訪問し、与党だけでなく野党の支持者からも聞き取り調査を行うとともに、公務員の選挙活動について重点的に情報を収集した。 研究代表者による現地調査によって得られたデータは共同研究者と共有し、共同研究者は膨大な量にのぼるタイの下院議員選挙の投票所ごとの開票結果の統計学的分析を進めた。統計学的分析結果の一部は、11月25日に京都大学で開始されたアジア政経学会の秋季研究大会において「タイの有権者の投票行動の地域間格差:2023年5月の下院議員選挙における投票所レベルの開票データの分析に基づく考察」というタイトルで発表した。研究成果の一部は、朝日新聞、NHK、日本経済新聞、読売新聞などのインタビューに答えることによって一般社会にも還元した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2023年5月に行われたタイの下院議員選挙では、選挙管理委員会が投票所ごとの開票結果を開示した。タイの国会議員選挙について投票所ごとの開票結果が開示されたのは今回が初めてである。今回の選挙ではタイ全国に95,249か所の投票所が設置された。投票所あたりの平均投票者数は約415人である。 当プロジェクトの構想段階では、投票所ごとの開票結果を選管が開示することは発表されていなかったため、選挙区ごとの開票結果を用いて分析を行う予定であったが、投票所レベルの開票結果が入手できたことにより、当初の想定よりも格段に解像度の高い分析ができることになった。 ただし今回選管が公表したのは、各投票所の担当者が手書きで記入した開票結果報告用紙を撮影した画像ファイルだけで、そこに書かれている数字をデジタル化したものは公表されていない。膨大な数の手書き の書類に書かれた数字を入力してデータベース化することは容易なことではなく、投票所ごとの開票結果を詳細に分析した研究はまだどの研究者も発表していない。 研究代表者と共同研究者は手分けして、開票結果の入力作業を進めるとともに、入力が終わった選挙区について量的、質的な分析を進めている。2023年11月に開催されたアジア政経学会の秋季大会では、タイ東北部、北部、中部から1つずつ選挙区を選び、投票所レベルの開票結果を比較することによって、タイの有権者の投票行動に与える要因を詳細に分析した結果を発表した。その後、開票結果の入力作業をさらに進めており、2024年7月にタイのブラパー大学で開催される第15回Internationl Conference on Thai Studiesで、研究成果を英語で発表する準備も進めている。 詳細な選挙結果を入手したことにより、当研究プロジェクトは、2023年度に当初の計画以上に進展することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年5月に行われたタイの下院議員選挙の投票所ごとの開票結果の入力と分析作業を継続するとともに、2023年度には調査できなかった選挙区における各政党の候補者や有権者の動きについての質的調査も行う。 タイでは、都市部と農村部で有権者の投票行動が大きく異なると言われてきた。従来は、各選挙区について選挙区全体の開票結果しか公表されてこなかったため、都市部と農村部の有権者の投票行動の違いは、都市部の人口が多い選挙区と都市部の人口が少ない選挙区の開票結果を比べることによってしか、実証的に分析できなかった。しかし2023年の選挙については投票所ごとの開票結果が公開されたため、1つの選挙区の中でも市街化地域と非市街化地域に分けて分析でき、中小の地方都市とその周辺の農村部の比較も可能になり、都市部と農村部の有権者の投票行動の違いについてより解像度の高い分析ができる。 都市型政党だと言われてきた前進党が2023年の選挙において、選挙前の大方の予想を大幅に上回る得票を得たことは、地方においても有権者の投票行動の「都市化」が徐々に進んでいることを示すものだと思われる。しかしバンコクでは33の選挙区のうち32の選挙区で勝利した前進党が、バンコク以外の小選挙区では約5分の1の選挙区でしか議席を獲得できなかったことに示されているように、農村部の有権者の投票行動の変化には地域ごとにかなりの違いがある。そうした違いがどのような要因によってもたらされているのかについて、投票所ごとの開票結果の量的分析とフィールドワークによる量的分析を組み合わせて今後も考察を進めていく。
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