Project/Area Number |
23K01277
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 06020:International relations-related
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大石 晃史 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 研究員 (60814944)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 紛争 / ネットワーク / 数理モデル / 国際関係論 / 感染症 |
Outline of Research at the Start |
紛争は一部のアクター間の小競り合いが他のアクターを次々と巻き込みながら大規模化することが少なくない。では、紛争はいつどのように拡がるのか。それを防ぐためにはどうすれば良いのか。本研究では、紛争をアクター間で伝染する感染症として捉えることでこれら問いに答えることを試みる。具体的には、国家間や国内での紛争拡散の特徴を捉えた紛争感染モデルを構築する。そして、そのモデルを詳細にシミュレーションすることで、どのようなネットワークが紛争拡散を促進するか、その抑止のためにはネットワークおよび拡散プロセスへのどのような介入が効果的か検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は本課題の中心となる紛争拡散の基礎モデルの検討を行い、またその相互作用自体のミクロ的な性質の分析を行った。 第一に、基礎モデルのデザインについては、政治学およびネットワーク科学の文献を幅広く調査し、どのようなモデルを出発点として解析するべきなのかを丁寧に検討した。特に国際関係論・比較政治学における戦争・政争の拡大・連鎖に関する既存の事例分析・理論的考察・計量分析、およびネットワーク科学におけるハイパーグラフ・符号付きグラフ・ネットワーク上の拡散現象・パーコレーションの先行研究などについて紛争拡散モデルとの関連性の観点から調査を行った。その結果、紛争拡散を通常のグラフ上のノード間の感染・拡散現象と捉えるよりも、ハイパーグラフ上における(ハイパー)エッジ間の感染・拡散として捉える方がベースラインのモデルとして機能する見込みが高いことが分かった。また、ゲーム理論・政治学で活発に研究されてきた連合形成ゲームの均衡解などがハイパーエッジ上の相互作用の有力な候補であることも分かった。 第二に、相互作用のミクロ的な性質を解析するために、連合形成の長期的挙動がノード間の異質性(パワーバランス)にどのように依存するのか数値シミュレーションによって分析した。その結果、エッジレベルでの紛争拡散プロセスについて、いくつかの非自明な性質が明らかになった。例えば、エッジレベルでの紛争の収束は必ずしもノード間のパワーの差が大きいほど早い訳ではないことが明らかになった。これは紛争下における連続的・逐次的な連合形成の複雑な性質を反映しているものと考えられる。その詳細なメカニズムの解明、マクロ的な帰結の分析、そして実データとのすり合わせについては今後行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り、初年度に研究全体のベースラインとなるモデルの検討を十分に行うことができた。当初ベースラインになるであろうと想定していたモデルからの変更はあったものの、これは研究実績概要に記載した通り初年度における幅広い先行研究の調査の結果であり、研究プロジェクトの進行としては問題ではなくむしろ成果であると認識している。ただし、ベースラインモデルの検討に当初の想定よりも時間を費やしたためにモデルの解析については、初年度の進捗は予定よりもやや遅れることとなった。モデルのミクロ的な相互作用については、その具体的な候補やその性質について数値計算を開始することができ、また非自明な挙動の発見など一定の成果があったが、その背後のメカニズムについての解析はまだ不十分で、マクロ的な解析についても第二年度以降での課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度においては、初年度の解析で発見されたエッジレベルでの非自明な挙動のメカニズムを明らかにする。そのために、エッジレベルでの紛争の連鎖プロセスについてハイパーグラフの次元ごとに分けるなどの方法で細かい分析を進める予定である。その結果として、エッジレベルでのメカニズムがあまりにも現実の政治学的な解釈と整合しないようであれば、モデルの修正が必要になる可能性もある。エッジレベルでの挙動が十分に政治学的にも妥当であることが確認できた場合は、初年度には殆ど取り組むことができなかったマクロ的な挙動の解析に進む予定である。 マクロ的な挙動の解析にあたってはハイパーグラフ上のカスケードやパーコレーションとして紛争拡散の性質を解析することから始めたいと考えている。ランダムなハイパーグラフ上での紛争拡散においてカスケードやパーコレーションのような挙動が見られるのか、もし観察される場合は平均場的な描像でどこまで理解できるのかといった点に注目する予定である。また、このような解析でモデルのマクロ的な挙動に不自然な点がないことを確認しつつ、現実の紛争との定量的な比較をする準備を進める予定である。
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