Project/Area Number |
23K01316
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07010:Economic theory-related
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
釜賀 浩平 上智大学, 経済学部, 教授 (00453978)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 社会厚生評価 / 存亡リスク / 人口倫理 / 公理的分析 / 厚生経済学 |
Outline of Research at the Start |
世界的感染症拡大,大規模自然災害,放射能汚染などの問題は,リスクが現在及び将来世代の人々の厚生のみならず生存・人口規模にまで及ぶ「存亡リスク」の問題と呼ばれる.この問題に対処する政策評価には,人口規模の変化を考慮したリスク下の社会厚生評価が必要である.本研究は人口変化を伴う存亡リスク下の社会厚生評価を公理的に分析する.すなわち,存亡リスク下の社会厚生評価方法をいくつか定式化し,それらが満たす望ましい諸性質を明らかにする.その際,特に,衡平性と効率性のトレードオフに焦点を当てる.本研究により,様々な存亡リスクに直面する現代社会の政策評価を,理論的及び規範的基礎づけに立脚して行うことが可能となる.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,リスクが現在及び将来世代の人々の厚生のみならず生存・人口規模にまで及ぶ存亡リスクと呼ばれるリスクが存在する場合の社会厚生評価方法を事後アプローチによって構築し,その規範的基礎づけを公理的分析によって与えることを主たる目的としている.こうした研究目的を達成するために,研究の進め方を二段階に分け,第一段階では人口規模に変化が生じないリスク下での社会厚生評価方法を事後アプローチによって構築して公理的分析を行い,ここで得られた成果を第二段階で人口規模に変化が生じるリスク下での社会厚生評価方法に拡張する手順で進めることを計画している. 研究期間の初年度である令和5年度は,一連の研究計画の第一段階にあたり,人口規模に変化が生じないリスク下での社会厚生評価方法を事後アプローチによって構築して公理的分析を行った.特に,リスク下での社会厚生評価方法を事前アプローチではなく事後アプローチによって分析する目的の一つである,事後の衡平性に焦点を当てて評価方法の構築と分析を行った.具体的には,優先主義と呼ばれる社会厚生評価方法と充分主義と呼ばれる社会厚生評価方法それぞれについて,事後アプローチによってリスク下の社会厚生評価方法として定式化し,それぞれの規範的基礎づけを公理的特徴づけの命題として与えた.リスク下の社会厚生評価方法は様々な評価方法が提案され公理的分析もなされてきたが,本研究で明らかにした事後アプローチによる優先主義と充分主義の社会厚生評価方法の特徴は,いくつかのバリエーションが考えうる分離可能性公理のうち,最も論理的に強い要請を満たすという点にある.このことは,社会厚生評価が既に存在していない過去世代の利害に影響を受けないという実用上の特徴を意味している.この研究成果はワーキングペーパーとしてSSRNに登録し,国際査読つき雑誌の査読を受けている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記したとおり,本年度は一連の研究計画の第一段階にあたり,人口規模に変化が生じないリスク下での社会厚生評価方法を事後アプローチによって構築して公理的分析を行うことが目標とされている.このテーマについては,優先主義と充分主義の二つの社会厚生評価方法を事後アプローチによってリスク下の社会厚生評価方法として定式化し,また,それらに公理的特徴づけを与えることでそれぞれの規範的基礎づけも明らかにすることができている.この成果はSSRNのワーキングペーパーとして公開しており,国際査読付き雑誌に投稿して査読を受けているところである.また,更なる推敲と改善を念頭に,次年度(令和6年度)に社会的選択理論の国際学会にて報告を行うことも決定している.こうした点から,研究計画の第一段階として達成すべき成果としては,最低限のものは十分に達成できていると判断できる. また,第一段階としてさらに現在取り組んでいる研究として,事後アプローチによる充分主義の定式化として異なるバリエーションを検討しており,評価方法の定式化を完了し,その規範的基礎づけとなる公理的特徴づけの命題を与える作業に着手しており,この点からも当初の研究計画に沿っておおむね順調に研究が進展していると判断できる. 研究計画の第二段階として,第一段階で得られた結果を人口規模に変化が生じるリスク下での社会厚生評価方法に拡張する作業にも並行して着手している.第一段階の研究を通じて,事後アプローチを採用して存亡リスク下の社会厚生評価を分析する際の技術的な課題も把握できており,そうした課題に対処するための予備的な考察として,事後アプローチによる存亡リスク下の社会厚生評価を分析するための厚生主義的な分析枠組みを理論的に構築する作業は既に完了しており,この点からもおおむね順調に研究が進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の二年目に当たる令和6年度は,一連の研究計画の第二段階を推進することに注力し,人口規模に変化が生じる存亡リスク下での社会厚生評価方法を事後アプローチによって構築して公理的分析を行う.現在までの進捗状況で記したとおり,第一段階として行ってきた人口規模に変化が生じないリスク下での社会厚生評価方法の事後アプローチによる分析は順調に進んでおり,成果をまとめた草稿をワーキングペーパーとして公開し,国際学会での報告も予定されている.研究計画の第二段階では,そこで定式化された社会厚生評価方法を,人口規模に変化が生じる存亡リスク下での社会厚生評価方法として事後アプローチによって拡張された定式化を与えることを始めに取り組む. この作業を行うにあたり,人口規模に変化が生じる存亡リスク下での社会厚生評価方法を理論的に扱うための枠組みを構築することから開始しなければならないが,その作業はおおむね完了しており,人口規模の変化を表現する厚生主義的分析枠組みの用意は整っている.この枠組みを用いて,優先主義や充分主義を事後アプローチによる存亡リスク下の社会厚生評価方法として定式化し,その規範的基礎づけを与えるための公理的特徴づけを理論的に分析するのが今後の方針である.この研究を行うにあたっては,可変人口の社会的選択理論の枠組みで既に得られている知見を応用するなどして,特に,臨界水準の効用値といった概念を用いて評価方法の定式化を行なっていく.また,定式化された評価方法に公理的特徴づけを与える際には,第一段階で得られた公理的特徴づけの結果を応用するとともに,臨界水準の効用値に関する評価の整合性条件を存亡リスク下の社会厚評価方法に対する公理として定式化することで分析を進める予定である.
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