Project/Area Number |
23K01397
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07040:Economic policy-related
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
堀 雅博 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50284667)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 家計消費 / 財政再建 / 恒常所得仮説 / 高齢化 / アベノミクス |
Outline of Research at the Start |
本研究は、高齢化や潜在成長力の低下が、マクロ需要の最大構成項目である家計消費に与える影響について新たな知見を見出すことを目的とする。具体的には、経済学における消費行動の標準理論である「恒常所得仮説」をベースとしつつ、①過去四半世紀の我が国世帯の消費性向の推移、及びその世代間での差異をどう説明できるか、②アベノミクス期以降に見られた消費性向の低下の要因は何か、③将来的に消費を回復させる経済政策はどうあるべきか、等の問いに答えるべく、我が国世帯の個票データを用いた実証分析を行い、研究論文にまとめる。分析を通じ、少子高齢化と潜在成長力の低下に直面する日本の家計の消費行動を理解する材料を提供したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、複数の統計調査、アンケート調査の個票を用いた実証分析を通じ、日本社会の高齢化や潜在成長力の低下が家計消費に与える影響についての新たな知見を見出すことにある。2023年度においては、①こうした実証分析を行うためのベースとなる理論モデルの検討、②必要なアンケート調査(2024年度と25年度で実施予定)を行うための調査票の企画・検討、及び、統計調査の個票利用のための申請手続きの下準備を行った。 理論モデルについては、消費行動の標準理論である「恒常所得仮説(ライフサイクル仮説)」をベースに、世帯所得の構成が一時所得比率が高まる方向に変化していること(高齢化や高齢者労働参加比率の高まり、女子労働力比率の高まり、非正規労働者の増加等)が家計の平均消費性向の低下を説明するモデルを構築した。また、モデルを世代重複型に拡張した下で、親世代が子供世代の将来の生活を心配する状況では、マクロ経済成長の鈍化自体が親の子供の将来に対する心配を高めることで(親世代の)平均消費性向の低下(遺産相続を目的とした貯蓄の増大)をもたらす可能性を示唆するモデルも構築できた。 アンケート調査の準備作業では、近年、マクロ経済の分野でも広く用いられるようになってきている情報提供実験型のRTCについて、その可能性を検討した。また、日本の財政状況の悪化(政府債務の累増)が家計消費に与える影響について調査するための質問項目の検討を行った。 最後に、個票データベースの構築部分については、『家計調査』、『家計消費状況調査』、『中高年者縦断調査』、『国勢調査』について、分析利用項目の検討、申請手続きの準備等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論面では、世帯の所得構成を恒常所得部分と一時所得部分に分割して、その構成比率の変化が家計の消費(貯蓄)行動に与える影響を考察するモデルを構築し、近年我が国で生じている非正規労働の増加や高齢労働者の増加が世帯消費性向の低下につながる可能性を示唆する結果を導き出せた。また世代重複型のモデルでは、親が(自らの生活水準との相対で評価した)子供の将来の生活状況を気にかけている場合、将来への成長期待の低下が、親世代の消費性向の低下につながる可能性を示唆するモデルが構築できた。これらの理論モデルは、2024年度以降に実施予定の実証分析の基礎となるものであり、その点では概ね計画通りの進行となっている。 一方、計画していたアンケート調査については、マクロ経済学の分野における情報提供実験型ランダム化比較試験(RCT)についての先行文献の収集、実際に行う場合の問題点の検討、日本の経済状況の変化、とりわけ高齢化の進行や財政状況の悪化(政府債務の累増)が家計消費に与える影響を調査する質問項目の検討、関連する先行研究のサーベイ等を行ったものの、年度内に計画していた調査票の確定、及び第一回調査の実施までには至らなかった。 また、個票データベースの構築部分についても、統計調査の個票利用申請に向け、それぞれの個別調査(「家計調査」、「家計消費状況調査」、「国民生活基礎調査」、「国勢調査」、「中高年者縦断調査」等)について、利用項目の検討を進めたものの、必要変数等の確定に手間取り、実際の統計の利用申請手続きに入る段階にたどり着けなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度の成果をベースとしつつ、日本の経済社会の高齢化及び成長力の低下が家計貯蓄率に与える影響に関する実証分析を行うためのデータベースの構築作業に注力する。一つには、分析に欠かせない統計調査の個票入手を急ぐ必要があり、2024年度前半は統計調査(「家計調査」、「家計消費状況調査」、「中高年者縦断調査」、「国勢調査」等)の個票データ利用申請作業を進めたい。また、本研究を計画期間中に完了するためには、プロジェクト後半期(2025~2026年度)においてデータ分析・論文発表に集中できることが必要なので、アンケート調査についても、2025年度前半までに実施する必要がある。そのため、2024年度秋ごろまでに調査票の設計・作成を終え、同年度後半から2025年度のうちに調査を実施・完了させたい。 また、構築した理論モデルについては、まだ関連分野の研究者の十分な評価を頂いていない段階に留まっているので、24年度中に簡潔なノートにまとめ、その内容の妥当性について他の研究者の意見を仰ぐ機会を設けたい。 25年度後半以降は、その時点までに構築した我が国世帯に関するミクロデータベースの分析、及び分析結果に基づく研究論文の執筆、更に成果物の学会報告等に取り組む。また、研究成果について一定の評価が得られる段階に至れたならば、ディスカッション・ペーパーにまとめて公開する他、学術誌に投稿する等して、研究成果を内外の研究者や、広く国民一般にも知ってもらえるような広報・情報提供活動を行いたい。
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