Project/Area Number |
23K01440
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07050:Public economics and labor economics-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
土居 丈朗 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60302783)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 法人税 / 外形標準課税 / 企業金融 / 企業価値 / 厚生分析 / 最適資本構成 / マイクロシミュレーション / 企業行動 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、日本で2010年代に行われた法人実効税率の引下げと外形標準課税(事業税付加価値割と資本割)の拡大が、設備投資や雇用、要素所得の分配や資金調達といった企業行動にどのような影響を与えたかについて、日本企業のパネルデータを用いた計量分析を行う。具体的には、法人税改革の実施をイベントとして捉えて、自然実験的な状況を活用し、法人税改革の影響を描写できる動学的一般均衡モデルに基づき、反実仮想的なマイクロシミュレーションを行って、改革後の状態と改革を実施しなかったら実現したであろう状態とを比較することで、改革の個々の施策が与えた影響を定量的に示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2010年代に日本で法人実効税率の引下げと外形標準課税(事業税付加価値割と資本割)の拡大を行った法人税改革が、日本企業の設備投資や雇用、要素所得の分配や資金調達など企業行動に与えた影響を明らかにすることである。 2023年度の研究実績は、次のようなものである。まず、日本の法人税改革の効果を分析できる動学的一般均衡モデルを構築した。効用を最大化する家計が財を消費し、財を生産する企業は、継続企業(going concern)の前提に基づき長期的に経営を継続することを想定し、短期的な利潤を最大化するのではなく、長期的な企業価値を最大化する。そして、外形標準課税も扱えるようにモデル化した。その理論モデルに基づいたシミュレーション分析を行って、法人実効税率の引下げと外形標準課税の拡大を実施した場合と、外形標準課税の拡大の代わりに消費税率の引上げを同じだけ税収が上げられるように行った場合とを比較することで、経済厚生(家計の効用の集計値)の優劣や企業価値の大小を比較した。この比較分析の結果、外形標準課税の拡大よりも消費税率の引上げの方が、経済厚生も企業価値も高いことを明らかにした。これらの分析結果をまとめた論文が、査読付き英文学術誌"Keio Economic Studies"に掲載された。 また、本研究の2年度目以降の研究につなげるべく、経済産業省「企業活動基本調査」や財務省「法人企業統計調査」や日経NEEDS財務データを用い、企業財務のパネルデータの構築を進めた。これらの企業データは、本研究が対象とする法人税改革の実施前と後の時期を含むとともに、資本金が1億円超と1億円以下の企業が十分な数含まれており、今後の計量分析で用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由として、次の点が挙げられる。2010年代に実施された日本で法人実効税率の引下げと外形標準課税(事業税付加価値割と資本割)の拡大について分析できる動学的一般均衡モデルを用いて厚生分析を行った研究についてまとめた論文が、査読付き英文学術誌に掲載された。また、経済産業省「企業活動基本調査」や財務省「法人企業統計調査」や日経NEEDS財務データを用いたパネルデータの構築が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に示した研究実施計画通りに研究を推進する予定である。本研究で構築した日本企業のパネルデータを用いて、外形標準課税の拡大を含む法人税改革をイベントとした計量分析を行い、法人税改革前後で設備投資や雇用、要素所得の分配や資金調達などの企業行動がどのように変容したかについて明らかにする。 法人税改革が与えた影響を検証するにあたっては、自然実験的状況を活用した分析を行う点である。企業の行動変容は、法人税制以外にも企業会計等他の制度の変更や国際経済などの経営環境の変化にも影響を受けるため、その因果効果の識別は容易ではない。しかし、法人関連税制の税率変更は、10年程度に1度といった頻度でしか行われないことから、因果効果の識別に適した自然実験的状況が生じているといえる。しかも、外形標準課税は外形対象法人(概ね1億円超の「大企業」)にのみ課税されることから、企業のパネルデータを用いて、外形対象法人を処置群、外形非対象法人を対照群としたDID(difference-in-differences)法を用いることで、外形標準課税が雇用や労働所得への分配、自己資本比率などにどのような影響を与えたかを明らかにできる。 また、法人税制が、資本金が1億円以下の「中小企業」と1億円超の「大企業」とで扱いが異なることから、回帰非連続デザイン(regression discontinuity design: RDD)を法人税制の効果の推定に応用し、より厳密な因果効果の推定が可能となる。DID法やRDD等を用いて、法人所得税負担が軽減されることで、設備投資や雇用がどの程度増加したり自己資本比率がどの程度上がったりするかを推定する。また、外形標準課税が拡大することで、労働分配率や自己資本比率がどの程度下がるかを推定する。
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