Project/Area Number |
23K01464
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07060:Money and finance-related
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
熊本 方雄 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (30328257)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | ユーロ圏 / インフレ率格差 / 実質為替相場格差 / リージョナル・インバランス / 高齢化 / Balassa-Samuelson効果 / 貿易財・非貿易財 / 最適金融政策 |
Outline of Research at the Start |
本研究においては,①ユーロ圏各国間におけるインフレ率格差が,実質金利および実質為替相場の格差を通じ,景気循環の同調性と短期的なリージョナル・インバランスにどのような影響を与えたか,②ユーロ圏各国におけるインフレ率格差がどのようなミクロ構造的要因によって生じているか,さらに,③インフレ率格差が存在する通貨同盟下での最適な金融政策を理論的,および,実証的に分析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の2023年度においては,理論モデルのビルディングとこれに基づいたデータセットの構築を行った。 理論モデルにおいては,ユーロ圏内における実質為替相場の格差を人口構造の差異(高齢化の程度)で説明するモデルとして,2期間世代重複モデルを,①若年世代と老年世代が貿易財および非貿易財に対し異なる選好を持ち(老年世代は非貿易財に対しより高い選好ウェイトを持つ),かつ,②貿易財部門と非貿易財部門間で労働移動が不完全である状況に拡張し,その結果,貿易財部門の生産性の上昇が,高齢化の程度,および,労働移動の不完全性の程度を通じて,実質為替相場に与える影響を分析した。これは,従来のBalassa-Samuelsonモデルを拡張する理論モデルとして位置づけられる。 さらに,この理論モデルを踏まえた実証分析を行うためのデータセットの構築を行った。具体的には,主にデータベースEUKLEMS(オランダのグローニンゲン大学が中心となって構築した、欧州各国の産業レベルにおける産出,投入(資本,労働,エネルギー,原材料,サービス),生産性,価格指数の国際比較のためのデータベース)を用い,ユーロ圏12か国(オリジナル11か国とギリシャ)の貿易財部門,非貿易財部門の生産量,価格指数,賃金,労働生産性に関するデータセットを構築した。今後は,これに基づき,実証分析を進める予定である。 また,上記の理論モデルを応用し,短期的な実質為替相場格差をインフレ率の持続性の格差や貿易財部門と非貿易財部門間の労働移動の不完全で説明するDSGEモデルの構築も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実質為替相場の短期的な格差を分析する前に,構造的な要因を分析するため,人口構造(高齢化の程度)が,若年世代と老年世代の間の非貿易財に対する選好の差などを通じ,実質為替相場に与える影響を分析する世代重複モデルのビルディングを行った。 また,上記の理論モデルにおいては,貿易財部門と非貿易財部門間の労働移動の不完全性を導入しているが,この定式化は,短期的な格差を分析するためのDSGEモデルにおいて応用している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目である2024年度の前半においては,1年目に作成した理論モデルから導出されたインプリケーションに基づき,実証分析を行う。具体的には,各国の貿易財部門,および,非貿易財部門の生産性が,高齢者比率,および,労働移動の伸縮性を表す変数との交差項を通じて,実質為替相場に与えた影響をPesaran(2006)によって提唱されたCommon Correlataed Effects Pooled estimatorの手法を用いて実証分析を行う。この手法は,ユーロ圏各国のデータ間の横断面における相関を考慮する上で有用な手法となる。また,各産業の雇用データを用い,労働移動の伸縮性を表す変数を作成する。 後半においては,短期的な実質為替相場格差をインフレ率の持続性の格差や貿易財部門と非貿易財部門間の生産性の格差で説明するDSGEモデルを構築を進める。具体的には,価格,および,賃金に粘着性のあるニューケインジアン・モデルにbackward-lookingな価格設定を行う企業の存在を導入し,モデル構築を行う。その際,貿易財部門と非貿易財部門間での労働移動の伸縮性が与える影響も考慮する。さらに,モデルに基づき,カリブレーション分析を行い,インフレ率の持続性や労働移動の伸縮性の変化が,実質為替相場と経常収支に与える影響を分析する。また,実証分析においては,ベイジアンの手法を用い,ユーロ圏各国のインフレ率の持続性,および,労働移動の不完全性に差があるかどうかを推計し,カリブレーションの結果と整合的であるかどうかを検証する。
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