Project/Area Number |
23K01482
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07070:Economic history-related
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大月 康弘 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70223873)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | ノブレス・オブリージ / 慈善 / 近代化 / 前近代社会 / イギリス / 篤志病院 |
Outline of Research at the Start |
19ー20世紀イギリス社会の事例に即して、ノブレス・オブリージ(N.O.)現象の近代化について研究する。前近代社会において王侯貴族をはじめ名望家層による寄進によって成立していた慈善施設の経営基盤が、経済社会の近代化過程でどのように変容したか、に照準を合わせる。特に、王族によって設立された「病院」を事例に分析する。資産集積のあり方、運用資金の調達の仕方(増設の際の資金調達方法などを含む)、施設管理のあり方、勤務する医師・職員の雇用のあり方、等について、その変容過程を分析、国家財政との関係性の変化等にも顧慮して、現代でも重要な社会的役割を果たすノブレス・オブリージの経済分析視角を定立する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
ヨーロッパ世界におけるノブレス・オブリージ(以下N.O.)の存立構造が経済社会の「近代化」によってどのように転成したか、を分析している。前近代での存立基盤をティピカルに切り出し、近代化過程における転成過程について考察・究明する目論見である。N.O.でカバーされる領域は広い。本研究では、①中世(前近代)社会での皇帝/王による宗教的寄進財・施設に注目し、②中世世界での寄進財の経営のあり方を切り出し、③経済社会の近代化に伴うその転成過程、また④国家との関係性(税との関係)の変化、に照準を合わせ作業を進めている。前近代の寄進財・施設が「公共的役割」を担っていたことは明白だが、そのような施設は「近代化」の中で福祉施設として国家化ないし中間団体となっていった。社会経済構造が変化する中で、施設経営にいかなる変化が起こったか。この観点を考察の主眼として、イギリス19世紀社会に取材し前近代的事例の「近代化」過程を追跡している。令和5年度はまず資料収集・分析を進め、一定の定量・定性分析を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は、以下の2つの作業シークエンスを並行して進めている。 (A)前近代的社会での寄進財・施設の経営構造分析 (B)19-20世紀初頭の英国における寄進財・施設の運営構造分析 (A)では、前近代ヨーロッパ世界におけるN.O.が当時の社会経済に果たした役割、また現実面での国家・社会内での他セクターとの関係性を浮き彫りにしている。この分析を行うことで、近代化過程で転成するN.O.現象の理念的側面でのいわば「揺らぎ」を捉えることができると期待している。 (B)では、「永遠に続く財政難perennial financial difficulties」に陥っていた19世紀半ばのロンドンにおける病院群に注目し、かかる「篤志病院」の財源(の変遷)に関する解析に着手した。20世紀への転換期ごろ同地では、病院日曜基金( Hospital Sunday Fund)や王立病院基金(King’s Hospital Fund)が設立された。病院の多くが困難を抱えていた証左であり、史料から当時の病院経営の実態が浮かび上がりつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
病院施設が、彼らの「財政難」をどのように認識し、市民に知らせ、財政的困難を解消しようとしていたのか。本研究では、この問題視角から施設の年次報告書(Annual Report)の分析に取り組むこととする。また、施設の新たな財源模索を網羅的に検討し、併せて国家財政(税制)との関係から情報を整理した研究も見当たらないところから、検討項目とする。 当面、王族の寄附により設定されたN.O.施設・財としてまず「シャーロット王妃産科病院」Queen Charlotte’s Lying-in Hospital(1752年創設)を取り上げ、事例研究を推進する。この施設は、王族をパトロンとする施設であったが、やがて自立的な経営体として19世紀を過ごした。有力パトロンの代替わりも関係した可能性があるが、やがて「常に財政的困難」な状態に置かれた。この寄進財・施設事例の運営の経過を、関係諸史料を分析して立体的に明らかにすることを、本研究での当面の目標としたい。同時に、事例をとりまく「時代の変化」を洞察していく。
|