Project/Area Number |
23K01502
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07070:Economic history-related
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
櫻木 晋一 朝日大学, 経営学部, 教授 (00259681)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 貨幣考古学 / 出土銭貨 / データベース / 領国銭貨 / 寛永通寳 / 長崎貿易銭 / 日本近世 |
Outline of Research at the Start |
①出土銭貨については、主に発掘調査報告書に記載されたデータと拓本を調査し、領国銭貨と古寛永通寳の出土状況を把握する。必要があれば、各教育委員会等に収蔵されている出土銭貨の実見調査をおこなう。 ②当該期における銭貨の生産と流通に関する文献史料を博捜し、内容を検討することでその概要を把握する。 ③長崎貿易銭の元豊通寳については、東南アジアと日本国内での出土状況を把握するとともに、文献史料の記載内容も併せて検討することで、その生産と流通に関する実態解明を試みる。また、AIによる画像認識技術(ディープラーニング)を使った銭銘の判読法を開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本テーマ研究の初年度なので、中世日本で流通していた銭種の実態を把握するため、出土銭貨に関する基礎データの整備から着手した。全国の一括出土銭データベースについては、1998年に鈴木公雄氏が作成してから約四半世紀が経過しているため、都道府県ごとに新出資料の有無について確認をおこないながらデータの更新作業をおこなっている。博多遺跡群の個別出土銭については、2005年以降の出土銭貨データを追加しており、報告書に記載されていない出土銭も存在するため、福岡市埋蔵文化財センターに収蔵されている資料の悉皆調査をおこなっている。これによって、中世から近世初頭にかけて日本の玄関口として機能していた都市「博多」における流通銭貨の実態を明らかにできる。 遺跡別の実見調査としては、熊本県砥川古銭に含まれていた寛永鉄銭797枚について古銭学的細分類をおこない、どこで鋳造された寛永鉄銭が肥後地域で流通していたのかを明らかにした。これまで寛永鉄銭の流通に関する実証研究は存在せず、この地方では仙台石巻銭、久慈銭、亀戸銭、伏見銭が多く、このことはこれらのタイプの鉄銭が大量に鋳造されていたことを示しているものと考えられる。また、群馬県前橋市教育委員会で保管されている総社村東03遺跡の一括出土銭の緡銭を実見調査し、可能な限り銭種の判読をおこなった。概ね一緡は97枚で構成されており、確認できた最新銭が南宋銭であることから、14世紀初頭までに埋められたものと判断できる。 近世都市「長崎」の個別出土銭についてのデータ集成を開始した。このことで、海外への窓口として機能していた「長崎」の特徴を貨幣から明らかにできるものと考えている。また、17世紀中期に長崎で鋳造され、東南アジアなどに輸出されていた長崎貿易銭を生産地側史資料から研究することに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍が明け、ようやく本格的な調査活動を開始できたという状況であり、当初予定していた実地調査がやや遅れている。例えば、大隅国で鋳造されていたことが明らかな加治木洪武通寳について、九州内での出土地分布はほぼ把握できているものの、鋳造地遺跡の調査やそこから出土した鋳造関連遺物の現地調査が実施できていない。また、大分県竹田市や岡山市二日市遺跡など、初期寛永通寳の鋳造地に関する実地調査には未だ着手できないでいる。 その原因のひとつは、他の貨幣史研究プロジェクトリーダーとして最終年度の仕上げ作業に忙殺されていたことがあげられる。具体的には、2023年6月に日本学士院から英文のカタログ『JAPANESE ANCIENT COINAGE Ⅰ』を出版したので、校正等最終段階の作業に多大なエネルギーを割かなければならなかったことと、イギリスのRoyal Numismatic Societyから2023年メダルを日本人としては初めて受賞したことで、12月11日にロンドンで英語による受賞記念講演をおこなわなければならなかったことがあげられる。 また、出土銭貨の基礎データ整備から始めたことにより、アルバイトを使って入力作業をおこなっているものの、収集する情報量が膨大なためにかなりの時間を要していることもあげられる。さらに、博多遺跡群の個別出土銭調査では、銭貨が錆着するなど未処理の資料もかなり含まれており、それらの分離や判読のための処理に時間がかかっていることがある。
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Strategy for Future Research Activity |
未執行分の研究費は繰り越しをしているので、その研究費も使って予定していた調査を加速して進めていく。特に今年度は、遺跡や教育委員会などの現地に足を運ぶ実見調査に主眼を置く。 ①加治木洪武通寳の生産地と鋳造関連遺物に関する調査と、九州内での出土状況調査は2024年度に必ず実施する。②長崎市「魚の町遺跡」の調査で出土した叶手元祐通寳に対する文化財科学的分析が施されているので、近世初頭の領国銭貨については出土分布調査とあわせて金属組成分析の資料数を増やす努力をするために、文化財科学的分析をおこなってくれる研究協力者を探す。③長崎市内の個別出土銭のデータベ―スを完成させ、そこから読み取れる流通銭貨の特色を論文化し「長崎学」の成果物のひとつとして公表するため、資料収集に努める④九州歴史資料館が所蔵している福岡県柳川市「上町遺跡」出土銭の実見調査を実施し、叶手元祐通寳と加治木洪武通寳の混入率を明らかにすることで、近世初期における九州地域の領国銭貨の生産と流通実態を明らかにしていく。⑤調査途中となっている前橋市総社東村03遺跡の緡銭の調査を完結させる。⑥時間的余裕があれば、研究対象地域を日本全国に広げ、近世初頭の領国銭貨と寛永通寳に関するデータを収集していく。
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