Project/Area Number |
23K01597
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07080:Business administration-related
|
Research Institution | Kyoto Seika University |
Principal Investigator |
小泉 真理子 京都精華大学, マンガ学部, 教授 (60468527)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | 伝統実演芸術 / 能楽 / コスト病 / 経済的自立 |
Outline of Research at the Start |
長い歴史の中で培われてきた伝統実演芸術を、我々が継承していくことは使命である。しかしながら、自助努力ではその文化を維持することは難しい。オペラ、オーケトラ等の欧米の伝統実演芸術は、労働集約的であるために、経済成長下において経済的自立が困難になることが実証的に示されている。そのため、欧米を中心として、公的助成等の経済支援がないと伝統実演芸術は存続できないと信じられている。その一方で、なぜか日本では自助努力により公演を継続することができている。そこで本研究は、日本の伝統実演芸術の中で最も長い歴史を有する能楽を対象とし、日本の伝統実演芸術が長年に亘りなぜ経済的に自立できているのかを明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は4年の研究計画のうち、初年度にあたる。そのため本年度は、研究を着実に進めることに加えて、次年度以降に向けて研究遂行方法のブラッシュアップにも注力した。本研究の課題の一つとして、能楽における独自のマネジメント手法を把握するための研究実績が非常に少ないことがある。そのためまずは、伝統実演芸術の中では研究が一定に蓄積されている、フランスのオペラについて、その経営の歴史的変遷と現状について調査を行った。その上で、能楽との比較分析を開始したところである。調査にあたっては、先行研究に加えて、フランスへの劇場訪問や関係者のインタビュー調査、研究協力者とのディスカッション等を行った。 研究成果のうち、主なものを挙げると下記の通りである。 ・日本文化の独自の仕組みと捉えていた制度の他文化における類似制度の発見 家元制や世襲制は、能楽において、芸の伝承や、劇場・舞台セットや衣装の手配、配役といったあらゆる面で、多大なる影響を与えている独自の制度であり、持続的な経営へのインパクトは大きいと捉えている。本方針に大枠では変わりはないが、フランスのオペラにおいても、一部世襲制がみられることが判明した。このような共通項を深耕すべきことが明らかになった。 ・プロデューサーの役割の多様性の把握 能楽においては、実演家の主役であるシテ方が経営を取り纏めるプロデューサーの役割をも果たしている。一方で、フランスオペラでは、実演家とプロデューサーは特化した別の職として成立している。別人がプロデューサーを担っているため、多量のそして多様な業務が可能となり、当該芸術全体への影響範囲も大きくなる。具体的には公演収支だけでなく、各時代における実演家の地位や、社会における当該芸術の位置付けにもプロデューサーが寄与していた。このプロデューサーの役割の違いがコスト病回避にいかなる影響を与えているかについて今後分析していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「次年度使用が生じた理由と使用計画」に記したように、研究の遂行順序に変更が生じたものの、「研究実績の概要」に記した通りの一定の成果が得られたこと、そして研究を推進していく上での大きな課題はなかったことから、「概ね順調に推移している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず次年度は、能楽のマネジメントの独自性に寄与する制度や仕組みの抽出についてさらに掘り下げて調査・分析していく。 本年度は、フランスのオペラ経営に関する研究を調査したことで、能楽に比して一定の実績があることがわかり、能楽の経営について特徴を抽出する上でいかなる観点や視点が必須かについて大いに参考になった。 フランスのオペラにおいて、戦争といった社会のパラダイムの転換や、各時代における為政者の方針は、その芸術の役割を単なる文化としての鑑賞から、例えば、権威や階層の確立、情報伝達の手段、社交の場、武術の鍛錬や健康管理といったように様々に変化させてきた。この芸術の役割の多様性は、能においてもみられることであるが、現在明らかになっている情報は多くはない。また分析手法として、文章だけでなく、舞台の様子を描いた絵画を用いることもオペラに関する先行研究より有効であることがわかり、援用していきたい。 そして研究開始当初より計画していた、能楽の公演における収入/費用の構造分析や、能楽の切符代や一般物価指数等に関する実証分析を行っていく予定である。
|