Project/Area Number |
23K01651
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07090:Commerce-related
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
櫻井 秀彦 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (70326560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森藤 ちひろ 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10529580)
岸本 桂子 昭和大学, 薬学部, 教授 (50458866)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 自律的消費 / 適正消費 / 継続消費行動 / 過剰消費 / 医療用医薬品 / 一般用医薬品 / 促進要因 / 阻害要因 |
Outline of Research at the Start |
期待される成果を得るためには、適正かつ継続的な消費が必須となるような財・サービスの消費行動に関する研究は、日本では研究の蓄積は乏しい。 本研究では過剰や過少でない適正消費の継続行動(以下、遵守行動)に着目し、研究領域横断的に分析枠組と影響要因を検討し、海外との比較調査を行って媒介効果も含め影響構造を検証し、日本人に適合した適正消費継続行動モデルを再構築する。 消費者行動論や医学・健康行動科学領域の国内外の知見を横断的に検証し、自律的で適正な消費行動支援の知見・方略を示すことで、国民のQOL向上の一助となる成果を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、全体の4つのリサーチクエスチョン(以下、RQ)のうち、「RQ1: 遵守行動のうち、過少消費、過剰消費、継続消費に影響する要因とその影響度合は日本人ではどのように異なるのか。」と「RQ2: 制約の大きい a)医療用医薬品と、一般消費財に近い b)健康食品(サプリメント等)で上記の影響要因や影響構造(影響経路や影響度合)はどのように異なるのか。」(過少や過剰については必要に応じ c)一般用医薬品(OTC薬)も検討)の2つのRQを検討した。消費者か処方医どちらの選択かも検討可能とすべくOTC薬と処方薬の比較で「花粉症治療薬」と「ドライアイ点眼薬」の2つを研究対象とした。 まず、「花粉症治療薬」では、①処方薬のみ服用患者、②OTC薬のみ服用患者、③併用服用患者の3群での調査を行い、服薬状況やQOL、治療満足度、生活習慣、ヘルスリテラシー等の群間比較と、併用に関連する要因の検討を行った。その結果、併用患者は生活習慣に問題があり、QOLが低いことが示された。また、社会生活関連のQOLや発症時の過剰使用などが併用に関連することが示された。よって、花粉症患者において併用を回避させるためには、治療薬に関して、併用が必ずしも症状の改善にはつながらず、むしろ過剰服用となるリスクもあるため、医療者に相談した上でOTC薬を購入する必要があることを指導することに加え、生活習慣の改善指導なども重要であることが示唆された。 次に「ドライアイ点眼薬」でも、同じ①~③の3群で検討した。その結果、「VDT作業時間の長さ」「コンタクトレンズの装着」「医療職からの指導の不十分さ、もしくは消費者の認識不足」等の要因が併用や過剰消費に関連した。また、OTC薬使用者の中には受診や処方薬での治療を実施すべき消費者が多く潜在している可能性があるなど、自律的かつ適正な消費の推進においては未だ課題が多いことも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、計画通りにRQ1とRQ2について、過剰消費や、医療的に禁じられている併用などの行動に関連する要因を明らかにするため、健康食品でなく、OTC薬を対象とし、処方薬使用者との比較検討を行った。なお、申請者らのこれまでの研究の蓄積もなされてきたことと、外国為替レートの急激な変動から、国際調査費用が高騰する可能性が高くなったことから、国内でのプレ調査は行わず、調査内容などを十分に練った上で、次年度に日米英での調査を一度に行うこととした。 成果は先に示した通りであるが、複数の学会発表実績と3本の査読付研究業績として公刊できた。また、上記以外にも、継続消費の関連要因を、高血圧、糖尿病、脂質異常症、花粉症、不眠症の5つの疾患の治療薬服用患者(疾患重複無)を対象にした調査データで分析を進めることができた。その中で、パス解析で幾つかのモデル構造を検討したが、健康行動に関する海外の先行研究が示唆するような自己効力感のヘルスリテラシーなどの媒介効果は、日本人における医薬品継続医消費行動に関しては、適合度の観点からは認められなかった。これは自己効力感と主観的ヘルスリテラシー(以下HL)や他の要因を健康行動の理論モデルを基に検討した櫻井・森藤・岸本(2023)での複数のモデル分析の結論を支持するものであった。 更に、分析を進めたところ、自覚症状のない疾患の場合、効力予期(自身の行動への自信)の醸成が重要となり、自覚症状ありの疾患の場合、結果予期のみパス係数が有意となることから、効果を認識しない場合には服薬継続から脱落する可能性が示唆されるなど新たな知見も得ることができた。併せて、疾患によらず基本的な情報取得能力である機能的HLの高低で継続行動が予測可能であることも示唆された。これらは2年度目の期間内に開催される、消費者行動や社会薬学などの学会で報告することが決定しており、論文業績化を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目である今年度は、「RQ3: 国際比較では、上記RQ1とRQ2での程度(下位尺度得点などの水準)や、影響要因とその影響構造は日本人と比較してどのように異なるのか。」という本研究のメインとも言える国際比較調査を実施する。 初年度の成果やこれまでの研究の蓄積を踏まえ、国内尺度はバックトランスレーションを経て国際比較を行う。現状では同じ英語圏だが、医療制度が全く異なる英国(税方式(無料)、かかりつけ医登録)と米国(民間保険会社主体)と、日本(社会保険方式で医療機関へはフリーアクセス)の3か国で比較する計画である。多母集団同時分析で英・米国人と日本人の相違について検証する。特に、医学領域等で健康行動に影響するとされた数多くの要因を横断的に検証し、自己効力感が継続消費の強力な規定因となるのか、消費者(患者)エンパワメントとして括られ海外では正の影響を示すとされた情報・知識獲得意欲 (information search, knowledge development) が日本人では逆に負の影響を示し、顧客参加 (participation) は有意な影響を示さない等の発見事実は同じ測定尺度と疾患での調査データでも、申請者らの知見は支持されるかを検証する。併せて、これら影響要因の前提とされるHLも分析モデルに組込み、海外では自己効力感を介しての媒介(間接)的にのみ影響するとされるのに対し、日本人ではその影響は直接的であり、かつ限定的とした申請者らの知見についても再検証する予定である。 最終年度はRQ1~RQ3を再検証して分析モデルを再構築し、対象財の幅を広げて調査し、対象財共通の影響構造と相違等を確認する。その結果を基に医師や薬剤師等からヒアリング調査を行い、具体的な支援策を提唱することを目指したい。
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