Project/Area Number |
23K01724
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鶴巻 泉子 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (70345841)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | エスニシティ / ナショナリズム / 国境地域 / 移民 / イスラム / カタルーニャ / スペイン / フランス |
Outline of Research at the Start |
本研究はフランスとスペインにまたがるカタルーニャを事例に、移民子孫のマグレブ系若者に対する他者化を「社会的距離化(Tucci)」概念を用いて分析する。各地域は同じ言語を持ち「カタルーニャ主義catalanisme」運動も存在するが、国家に対する関係は異なる。本研究は(1)教育領域と労働領域における若者の不平等な処遇の経験を質的調査を通じて収集し、(2)それを「社会への参加様式指標」とTucciが呼ぶ教育と労働に関する基礎的統計分析等の資料と対照することを通じて、地域の重層的空間がどのように「社会的距離化」の違ったパターンを生むかを比較、ナショナル/エスニックな差異と社会関係再編を問題とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は西欧マイノリティ地域に生まれた移民出自の若者が、教育/労働領域においてどのように社会から排除/包摂されるのかを、国境を挟む二国間で比較する。具体的にはフランスとスペインにまたがるカタルーニャを事例に、マグレブ系若者に対する他者化を「社会的距離化」概念を用いて比較分析し、その距離化の様式の違いを考える。令和5年度には特にフランスのペルピニャン市に調査を集中することとし、若者の教育と労働の場における排除経験を質的調査を通じて収集、他方ではこの二つの領域について行政資料、統計的資料を収集した。若者支援団体と求職中の若者、行政の若者支援部局、統計局における聞き取り調査と、移民出自の若者の居住区の中学校での参与観察を行い、以下の分析結果を得た。 1統計資料分析 労働領域においては①経済的停滞の続くペルピニャン地域では若者の失業率が際立って高く、中でも移民出自者(居住地区により判断)と女性に排除の力が強く働く。就職困難は②学歴の低さに比例して増大する。同時に「エスニック・エコノミー」領域が発達しインフォーマル経済にシフトして生計を立てる人々も観察された。国境地帯の環境がインフォーマル経済を支える。③地域の状況は若者(特に高学歴の若者)への移動圧力を生み、多くの若者がトゥルーズやモンペリエ等の大都市へ流出、移動手段を持たず残留する若者はますます低学歴化、経済的に不安定化する。 2質的調査データ分析 求職中の若者と支援団体等の聞き取りからは、エスニシティを分断しつつヒエラルキー化する地域特有の「人種化圧力」の存在と、この圧力が教育/労働領域においてマイノリティに不利な方向に働くことが確認された。地域内要因(カタルーニャ文化の政治的利用、ジタンやアルキ等他のエスニック集団の乱立)と国境地域的要因(「スペイン・モロッコ人」やスペイン人の流入)も、マイノリティの排除と強く結びつく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度には、4-8月に文献と統計資料の収集を行い、9月に両地域での予備調査の後、ペルピニャンで本調査、そして3月にジロナ(+サル市)を中心とした本調査という予定であった。しかしペルピニャン市では質的調査の進展が困難を極めた。行政やその関係者が全く聞き取りに応じてくれず、地区内での聞き取りも全く進まない状況だった。市政を運営する極右政党の意向とも重なりコンタクトが全く深まらない中、2024年3月の調査でようやく民間団体と教育領域に伝手が得られ、学校での参与観察も実現した。若者の生活支援団体、就職支援団体、サンジャック地区文化団体、住民、求職中の若者、サンジャック地区の中学校で参与観察を行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)フランス側での調査 令和6年度にはペルピニャンで調査の継続後に、ジロナでの調査を本格的に開始する。 ペルピニャンにおいては民間団体への協力をさらに求めつつ、今度は実証研究であまり取り上げられない集団(特に低学歴者とジタンの人々)へのアクセスを目指す。 (2)スペイン側での調査 令和6年度にはジロナにおいては、調査を2回予定している。①行政の協力をどれだけ得られるかで調査内容と調査方法が大きく変化するため、協力依頼を慎重に行いつつ、求職中の若者や民間団体とのコンタクトも同時に得るよう努力する。またフランス側で得た、スペインから移住したモロッコ系の人々とのコンタクトをスペイン側でコンタクトを広げるために最大限活かす。②統計資料の収集も二国間比較では非常に重要となるが、両国ではそのまま比較できる統計ばかりではないことがわかったため、スペインのカタルーニャ統計局(バルセロナ)において、事前の面談調査も必要となると考えている。
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