Project/Area Number |
23K01744
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小松 丈晃 東北大学, 文学研究科, 教授 (90302067)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 無知学 / リスクガバナンス / 社会システム論 / リスク社会論 / 無知 / 組織論 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「リスクガバナンス」のフレームワークの中に無知研究の視角を統合しつつ、この枠組みを、理論的に練り上げることを目的としている。この課題に取り組むために、(1)修正・変更が加えられ続けているリスクガバナンス論の展開状況を整理し、あわせて(2)近年の「無知研究」を、(社会学史を振り返りつつ)社会学的観点から捉え直す。その上で(無知研究とリスクガバナンス論との対話が手薄である理由の一つとして組織論的な観点の不十分さがあると思われるため)(3)組織論なリスク研究ならびに社会システム論(特にN.ルーマンのそれ)に着目し、これを媒介にしつつ、上記「目的」の達成を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、東日本大震災以後の日本でも急速に注目を集めるようになったリスクガバナンスフレームワーク(以下、RGFと略)を、近年の「無知研究」あるいは「無知学」の知見を統合しつつ、練り上げることである。本研究課題の一年目にあたる2023年度は、まず、RGFの彫琢に長年携わってきたカスパーソンらが述べるとおり、リスクの「選択」(どのリスクが「重要」と見なされるか)が、リスク管理や評価を進める上で最大の「難問(conundrum)」の一つであることから、「スポーツ」を事例にとりつつ、そうしたリスクの「選択」が、(ルーマンの社会システム論で言うところの)「リスク変換」の過程によって強く規定され、特定のリスクが視野の外に置かれうる(「無知」が構成される)可能性を指摘した。これは、本研究課題全体にとって、RGFと無知研究の接点がどこにあるかを確認する上で重要である。また、レンが指摘するように、RGFでは「コミュニケーション」が核心に位置づけられるため、コミュニケーション(およびコミュニケーションメディア)概念の根本的な刷新をはかったN.ルーマンの理論を詳細に検討するとともに、特に(科学システム)のメディアである「真理」に焦点をあて、メディアの「インフレーション」「デフレーション」がもたらす問題等を明らかにした。この点は、RGFでいう「内的コミュニケーション」や「外的コミュニケーション」を検討する上で重要な視点を提供しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、リスクガバナンスフレームワークにとってもっとも重要な難題の一つといえる「リスクの選択」という観点から、特定のリスクが視野の外に置かれうる(無知が「構成」される)可能性を、社会システム理論の「リスク変換」概念によって明らかにし、リスクガバナンス論に無知研究の視点を接続させるポイントの一部を明らかにしえたという点で、また、リスクガバナンス論の核心といえるコミュニケーション概念について、リスクガバナンス論とは異なる視点からではあるが、入念に検討しえた点で、本研究課題の遂行にとってしかるべき進捗がみられたといえる。ただし、リスクガバナンスフレームワークの、現在にいたるまでの形成・修正の過程を、その修正の含意に注目しつつ整理するという作業は十分にはなしえていないため、「おおむね順調に進展」との評価が妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に一部未着手の部分が残されたので、それを引き継ぐかたちで、リスクガバナンスフレームワークの、現在にいたるまでの形成・修正の過程を整理し、これまで確認してきた、「無知研究」と接続するためのポイントをより明確にする。そのためには、本研究課題のもう一つの柱となる、無知学(agnotology)あるいは無知研究(ignorance studies)と総括される研究動向をできるだけ幅広く目配りし、社会学的な観点から、これらを整理する作業が必要となる。後者については、これを特集記事として組んだ雑誌も刊行されたりしているが、まだ不十分なところがあるので、N.ルーマンやU.ベックの学説をはじめ、意図せざる結果や「潜在性」概念に関する理論的蓄積、M.ダグラスの制度論、M.グロスやP.ヴェーリングの研究、さらには「記憶と忘却」の社会学の研究成果等を主に参照しながら、研究課題に取り組んでいく予定である。
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