Project/Area Number |
23K01774
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Seisa University |
Principal Investigator |
細田 満和子 星槎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (00640161)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 特任准教授 (40510235)
杉原 正子 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 政策医療企画研究部, 研究員 (70889188)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | ピアサポート / 当事者・市民参画 / 生きられた知識 / 社会的処方 / サイエンス・ショップ / 当事者参画医療モデル / 患者役割 / 健康社会学 |
Outline of Research at the Start |
医療技術・機器の発展により、病いや障がいを持ちながら就学・就労したり、地域生活を送ることを望む人が増えている。それに反して企業・学校・地域といった社会の側の受け入れは十分に整っているとはいえず、当事者の社会参加は大きな課題とである。そこで病いや障がいの当事者が相互扶助を行うピアサポートが注目される。家に引きこもりがちとなる患者の孤立や孤独を防いだり、患者・医療者間のコミュニケーションの溝を埋めたり、病気との向き合い方やセルフケアのアドバイスを得られるといった効果がピアサポートには期待される。本研究では、ピアサポートの現状と課題を明らかにし、広く実施される仕組みを考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
経験ある患者当事者によるピアサポートは重要性が認められつつあり、医療や医学研究や医薬品開発における当事者市民参画への関心も高い。しかし、医療者にも患者にもピアサポーターや当事者市民参画は十分に認知されておらず、普及や実用化に向けては課題が多い。本研究では、日本におけるピアサポートや医療への当事者市民参画の現状を明らかにしつつ、諸外国における実態を調査し、日本への示唆とすることを目的とした調査研究を実施している。2023年度はピアサポートを実践する当事者3団体(一般社団法人ピーペック、NPO法人学びあい、NPO法人みんなのポラリス)に注目し、現場に同席したり、インタビューを行ったりした。また、ピアサポートを制度として医療に組み込んでいるイギリスとオランダとアメリカにおいて現地調査を実施した。以上から本年度の実績として、下記の査読付き論文(3団体に所属する当事者・研究者・医療者)、ならびに医療系メールマガジンの論文を挙げることが出来る。 ・細田満和子・葉山靖明・水口迅・宿野部武志・小林幸治・杉原正子、共生社会における当事者市民参画で行う研究の意味、星槎大学紀要 共生科学研究No. 19、PP.47-59,2023。 ・細田満和子、 孤立・孤独に対処するコミュニティーのチカラ、 イギリスに見る医療とコミュニティーが協働する共生社会への挑戦、 m3 医療維新 、 2023年12月3日 (日)配信、https://www.m3.com/news/iryoishin/1178187 ・細田満和子、孤立・孤独を生まない地域づくり―神奈川県大磯町のお寺の取り組み、 m3 医療維新、2024年2月4日 (日)配信、https://www.m3.com/news/iryoishin/1189582
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、日本におけるピアサポート当事者の実態ならびに海外におけるピアサポートや当事者市民参画の実態を調査し、日本への示唆を考察する。本年度は、日本の3つの当事者団体にオンラインで情報収集をしたり、イギリスやオランダの大学を中心に当事者市民参画やピアサポートを促す仕組みづくりについて現地視察とともに関係者にヒアリングを行ったりした。 イギリスでは、オックスフォード大学で実施している、GLAM(Garden, Library and Art Museum)の「社会的処方」について調査を行った。GLAMは大学の所有する複数の庭園や図書館や美術館を社会的処方の場として活用し、当事者同士で孤独や孤立の解消をサポートし合う試みである。地域社会との連携として2023年9月には「Oxford Inside Out」が開催し、教員、職員、研究者、大学院生、地域住民、地域企業、ボランティア団体、行政職員などが集い、地域の課題とその解決への取り組みについて話し合った。オランダでは、ワーヘニンゲン大学の実施するサイエンスショップに関するヒアリングを行った。サイエンスショップは地域住民やNPOなどが抱えている問題や社会的課題を研究者や専門家に相談し、課題解決のための情報共有や調査研究をするものである。特にサイエンスショップの一環として実施されたがん患者会と大学研究者との共同研究についてヒアリングをした。 このようなピアサポートの医療福祉における重要な役割の事例調査で、新しい患者役割を定式化しつつ、日本の医療・福祉の現場でピアサポーターが機能するため大学やNPOや行政などがピアサポートを支援したりファシリテートしたりする団体が必要であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度に収集したデータをもとに、日本脳卒中学会と日本脳損傷者ケアリングコミュニティの幹部クラスの医師とメディカルスタッフ(合計10名)を対象に、当該内容に関するヒアリングを行ってピアサポートの課題と可能性を検討し、人材養成の方法、医療チームの要件、制度化する際の条件などを考察する。 2025年度は、日本版ピアサポート導入による当事者参画モデル構想する。そしてこうした研究成果を国内外学術誌、及び書籍として本プログラムの必要性を発信し、学会発表とともに、日本版ピアサポート導入に向けたシンポジウムの開催、勉強会などを実施する。さらに、当事者団体との協働も含め、引き続きピアサポートの普及を進めていく。 これまでの当方らが実施してきたアンケートやインタビュー調査研究(ピアサポートが当事者の主観的健康度、不安、孤独・孤立、対人関係、就労などにいかなる影響を与えるか、ピアサポートを行う上での課題は何なのかなどといった調査)を通して、暫定的ではあるが、ピアサポートを行うための研修、継続性を高めるための報酬や制度、ピアサポートの周知などが課題となっていることが分かってきている。本研究においては、ピアサポーターの専門性、医療や福祉の専門職との関係性について検証し、ピアサポートを医療に組み入れている諸外国の事例を参考にしながら、課題や解決法は何があるかを深く掘り下げ、日本での展開を検討する。
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