Project/Area Number |
23K02044
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08030:Family and consumer sciences, and culture and living-related
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
横山 佳子 京都女子大学, 家政学部, 教授 (70264752)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 薬剤耐性菌 / 野菜 / 野菜加工品 / 腸内細菌目細菌 / 薬剤耐性菌制御 |
Outline of Research at the Start |
「薬剤耐性菌」問題は、新型コロナウイルス感染症に続く脅威として国際的に取り組むべき喫緊の課題となっている。本研究は食品の中で世界的に研究報告が少ない「野菜」およびその加工品に着目する。腸内細菌目細菌を分離し、薬剤感受性の測定とESBL、AmpC、MBL産生菌、CREおよびコリスチン耐性菌の分布状況を検討する。また野菜加工品の製造において、各種殺菌剤における薬剤耐性菌の制御効果について検討する。さらに家庭レベルも視野に入れ、食酢なども検討材料とする。本研究は、家庭への薬剤耐性菌の持ち込みの減少、ヒトの体内への侵入経路の遮断、野菜加工品製造過程における微生物制御に寄与することを目標とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
「薬剤耐性菌」問題は、新型コロナウイルス感染症に続く脅威として国際的に取り組むべき喫緊の課題となっている。わが国においても「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2023-2027」を策定し公表している。薬剤耐性菌対策は医療現場での対策とともに食品や環境における対策も必要となっており、ヒト・動物・環境といった垣根を超えた世界規模でのワン・ヘルスアプローチのもとで対策を進める必要がある。 食品においては、食肉を中心とした薬剤耐性菌の分布状況に関する報告が多い。本研究は、食品の中でも世界的に極めて報告が少ない「野菜」に着目し、特に生鮮野菜および野菜加工品(カット野菜など)中の薬剤耐性菌の分布状況を検討している。野菜は生で食べる機会が多いこと、生活習慣病対策である「健康日本21(第三次)」では、一日の野菜摂取量の目標を350gとしていることから需要が増加することが予想される。また、食の簡便化からカット野菜などの需要が伸びている。本研究では研究期間を考慮し、腸内細菌目細菌に着目をして研究を進めている。 令和5年度は、野菜または野菜加工品から腸内細菌目細菌を分離し、主にヒトの細菌感染症の治療薬として使用する抗菌薬について、微量液体希釈法を用いた最小発育阻止濃度(MIC)測定により、薬剤感受性を数値化している。本課題では特に臨床的に重要視されている薬剤耐性菌である基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌、AmpC型β-ラクタマーゼ産生菌、メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生菌、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)、コリスチン耐性菌(CL)に着目し、野菜由来株のMICの結果から耐性パターンを把握し、それぞれの薬剤耐性菌の耐性パターンに該当するかどうかを検討している。コリスチンはCRE感染症の治療薬として使用されるが、生鮮野菜・加工品とも耐性菌が多く分離されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、市販生鮮野菜50検体(葉茎菜類25検体、根菜類8検体、果菜類12検体、スプラウト類5検体)、生食用野菜加工品48検体(袋入り、スティック状、薬味セット)を試料とした。処理試料数は概ね当初の計画通りである。各試料における一般細菌数を計数し、食品衛生学的な評価を行った。日本惣菜協会が定める非加熱惣菜の衛生管理基準を参考に評価したところ、スプラウト類、カットネギなどが基準値(100万以下/検体1g)を上回った。グラム陰性菌を分離し、同定キット(ニッスイ・IDテスト)により同定を行い、腸内細菌目細菌をスクリーニングした。各試料内で同一クローンと推定される菌株を重複菌株として除外し、生鮮野菜から88株、野菜加工品から90株分離した。同定結果より、生鮮野菜ではEnterobacter cloacae、野菜加工品ではRahnella aquatilisが多く検出された。分離株を試験菌として微量液体希釈法により薬剤感受性試験を行った。抗菌薬はヒトの細菌感染症で使用される薬剤を選択し、アミノグリコシド系2剤(GM, AMK)、キノロン系2剤(CPFX, NFLX)、β-ラクタム系5剤(CTX, CAZ, IPM, MEPM, AZT)、ポリペプチド系1剤(CL)の10剤を用いた。生鮮野菜では91%、野菜加工品では93%の菌株が薬剤耐性菌であった。さらに2剤以上の抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌は、それぞれ77%、88%であり、野菜加工品由来株の方が多剤耐性率が高い傾向であった。抗菌薬ごとの耐性率は、生鮮野菜および野菜加工品由来株ともIPM以外の抗菌薬で類似の傾向であり、AZTの耐性率が最も高く約70%であった。抗菌薬の耐性パターンより、生鮮野菜ではAmpC型β-ラクタマーゼ産生菌、CRE、野菜加工品ではこれらに加えESBLと推定される菌株が見られ、コリスチン耐性菌も多く検出された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は引き続き、試料からの細菌分離・同定、薬剤感受性試験および遺伝子保有状況、新たに薬剤耐性菌と殺菌剤の効果について検討する。 1、試料からの細菌分離・同定、薬剤感受性試験および遺伝子保有状況 当該年度の前半に実施する。生鮮野菜およびカット野菜を中心とした野菜加工品を用いる。各30検体ずつを行う予定である。試料から腸内細菌目細菌を分離、同定キットにより菌種を決定した後、微量液体希釈法にて薬剤感受性試験を行い、最小発育阻止濃度(MIC)の測定を行う。薬剤感受性試験に使用する薬剤は前年度と同様4系統10剤を使用予定である。遺伝子保有状況は、ESBLやMBLについてはディスク拡散法を用いて簡易的に検討の後、PCRにて遺伝子保有の有無を検討する。AmpC、CRE、コリスチン耐性については、文献を参考にプライマーを作成し、PCR法にて遺伝子保有の有無を検討する。 2、薬剤耐性菌と殺菌剤の効果 当該年度の後半は、1で得られた薬剤耐性菌の中から多剤耐性を示す株を選定して試験菌とし、「大量調理施設衛生管理マニュアル」で推奨されている殺菌剤の薬剤耐性菌に対する効果の検証および家庭レベルを想定して食酢やレモン汁等を用いて、微量液体希釈法による最小殺菌濃度(MBC)を測定する。薬剤耐性菌への殺菌剤の効果を検証し、野菜に分布する薬剤耐性菌制御における最適な使用濃度や使用条件について検討する。得られた結果について、抗菌薬と殺菌剤との交差耐性の現状や各種殺菌剤が野菜加工品の製造過程で実用化できるかどうかも含めて考察する。2の内容は、研究期間の最終年度(令和7年度)も引き続いて行う予定である。 研究成果については、令和6年度に前年度の成果を学会発表予定である。また論文作成の準備を行う。
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