Project/Area Number |
23K02061
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
深見 奨平 宮崎大学, 教育学部, 講師 (30883649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 勇一 岡山大学, 教育学域, 講師 (00897134)
佐藤 宗大 日本女子大学, 人間社会学部, 助教 (40981155)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 篠原助市 / 教育学説 / 新カント派 / ナトルプ / 国家 |
Outline of Research at the Start |
教育学の専門分化が急速に進む中で、その学的性格の再規定が試みられてきた。しかし、現状は隣接諸科学との比較を通して、教育学に固有な学的性格の不在を際立たせるにとどまっている。こうした学術的背景を踏まえ、本研究は、篠原助市の教育学体系の形成過程において新カント派哲学がどのような役割を果たしたのかを明らかにすることを目的とする。このために、篠原助市文庫の史資料を手掛かりとしながら、戦前・戦後にかけての新カント派の受容過程を分析する。この研究を通して、新カント派としての篠原助市の教育学体系を提示するとともに、「教育学の学的性格とはどのようなものであるのか」という問いへの応答を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、篠原助市の教育学体系の形成過程において新カントは哲学がどのような役割を果たしたのかを明らかにすることであった。2023年度は戦前から戦後にかけての篠原教育学体系の展開過程を明らかにすること、およびその背景で新カント派がどのような役割を果たしたかを明らかにすることを課題とした。 この検討課題に対する研究の成果は下記の通りである。 第一に、日本教育学会第82回大会で「日本の教育学は新カント派をどう読んだのか―篠原助市文庫の書誌調査から―」と題する発表を行った。本発表は、京都教育学部付属図書館の篠原助市・陽二文庫において行った書誌調査に基づき、篠原の新カント派(とりわけナトルプ)受容の特質を論じたものである。篠原が積極的にナトルプ受容を行ったことは先行研究においても広く認識されていたが、その受容の様態が選択的であり、そこに篠原独自の教育学的な意図を見出した点が本発表の重要な成果である。この発表の内容は、その後『岡山大学大学院教育学研究科研究集録』第184号に論文として公表された。 第二に、中国四国教育学会第75回大会で「篠原助市教育学におけるナトルプの位置」と題する発表を行った。本発表は、上の第一の発表で見出された篠原のナトルプ受容の特徴をより具体的に把握すべく、ナトルプの諸論稿と篠原の時期ごとのナトルプ読解を対照的に分析したものである。この分析により、篠原が一貫してナトルプの『社会的教育学』(1899)における理想主義的な「人道」の実現に関心を向ける一方、その後の『社会理想主義』(1920)におけるナトルプの転回は等閑視していたことがわかった。さらに、篠原がナトルプをあくまでカント哲学の延長上で選択的に読解しているかの趨勢も示唆された。これらの成果は、先行研究の篠原理解を新たにするとともに、日本における新カント派の「受容」の実態を示すという点で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の検討課題は、戦前から戦後にかけての篠原教育学体系の展開過程を明らかにすること、およびその展開を支えた背景として新カント派がどのような役割を果たしたかを明らかにすることであった。これらの課題に対して、2023年度は篠原助市・陽二文庫の書誌調査や文献調査を行い、特に篠原のナトルプ受容を軸として一定の進捗が得られた。ただし、篠原助市・陽二文庫の所蔵状況等の事情により、後者の検討課題については未完遂の点がある。 具体的には、ヴィンデルバントやリッカートなどといった、ナトルプの他に篠原教育学の展開において重要な役割を果たしたと考えられる新カント派の思想の受容という点である。篠原の中心的な教育観や戦前・戦後の理論的連続性という点で、ナトルプに焦点化して2023年度の研究を始めたことにより大きな進捗が得られた。しかし、新カント派の中でもいわゆるマールブルク学派に属するナトルプのみならず、西南ドイツ学派に属するヴィンデルバントやリッカートからも、教育学の学問論や教育観において引用や参照が見られる。篠原がこれらの人物の思想をいかに受容したかの検討が未完遂である。要因としては、篠原助市・陽二文庫におけるナトルプ関連の蔵書の多さと、文庫のなかに篠原助市と息子の陽二の蔵書が混在していたことが挙げられる。特に後者の要因は、蔵書を分析する上で誰がいつ読んだものかを慎重に選別する必要を生じさせ、当初の計画以上の時間を要することとなった。 他方で、蔵書分析に滞りが生じた分、戦前・戦後の篠原自身の思想の理解を深めることができた。特に、2024年度から本格的に取り組む計画であった篠原教育学における教育と国家の関係については研究成果を論文にまとめており、現在査読投稿中である。そのため、総じて言えば研究全体としてはおおむね進捗に遅れはないと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の検討課題は、篠原教育学体系の展開を支えた背景として新カント派がどのような役割を果たしたかを明らかにすること、および同時代の教育学者らの新カント派受容との違いを明らかにすることであった。そのために、前年度から引き続いて篠原助市の新カント派受容について研究を深めることと、他の専門領域との知見の交流を開始することが本年度の主な推進方策である。 篠原助市の新カント派受容という点については、2023年度に検討したナトルプ受容との異同に注意しながら、ヴィンデルバントやリッカートといった西南ドイツ学派の思想の受容を調査する。これらの人物の著書に関する篠原の大まかな読書歴は既に整理されているため、2024年度は該当するヴィンデルバントやリッカートの著作を収集しつつ、彼らの議論と篠原が彼らを参照する箇所との対照分析を進めていく。この研究による成果を学会発表および論文にてまとめていく。 他の専門領域との知見の交流については、現在、哲学・思想史の領域を中心に日本の学問における新カント派受容の研究が盛んになされている。そのような領域の研究者とのコネクションも形成されつつあり、2025年度の本格的な研究交流に向けて、協働での研究会を企画していきたい。
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