サンフランシスコ都市圏の日系人教育問題発生史:差別とアイデンティティーの錯綜事情
Project/Area Number |
23K02121
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Hyogo University |
Principal Investigator |
岡本 洋之 兵庫大学, 生涯福祉学部, 准教授 (50351846)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 初期在米日系移民(在米日本人) / 在米華僑差別 / 在米日本人差別 / 吉川巌 / 蒙古事件 / 竹川藤太郎 / 自由民権運動 / 山梨県教育史 / 日本人の海外移住 / 海外在住日本人の子どものアイデンティティー / サンフランシスコ都市圏 / 日本人への人種差別 / 日本人コミュニティ内での差別問題 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、今後増加するであろう日本人の海外移住を見すえ、日本人が移住先で直面するに違いない、子どものアイデンティティーの問題を考えるのに資するため、1869~1908年前後のサンフランシスコ都市圏に焦点を当て、日系移民の教育問題発生事情を明らかにする。 日系移民たちは、 ①厳しい人種差別に直面しつつ、同胞内でも差別問題を抱えていたと思われ、 ②そのもとで子どもたちを日本人とアメリカンのどちらに育てるのかに苦悩したと思われる。 この2点が錯綜した様子を解明することが、本研究の目的である。方法としては、まずは民権系在米邦字紙の記事分析から始め、しだいに現地に根を張った人々に関する文献実証に研究を移す。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、両側股関節症手術と回復訓練のため、当年度初めより7月末まで入院し、8月は主治医より在宅を指示されていたので、9月に本研究を開始した。 研究開始後は、ただちに埼玉県入間市博物館、長野県飯田市立中央図書館と和歌山市民図書館で北米移民関係諸資料を閲覧した。その結果、研究代表者は、在米日本人が日露戦勝後に自らのアイデンティティーに自信を深めたとする先行研究に疑問を感じ、在米日本人への差別はかかる自信をもたせぬほど深刻だったのではないかとの考察を、12月2日に大阪公立大学教育学会大会にて発表した。 その後は差別問題考察を深めるため、研究の対象時期をやや遡り、愛知県知立市図書館で新井勝紘氏の諸稿を閲覧した。その結果、①1880年代後半のカリフォルニア州法は、貧しい華僑の流入を背景に、黄色人種が、白人と婚姻することや、大学に入学することを禁じていた結果、その被害は州内の日本人に及んだ、②同州在住の弁護士・吉川巌は、日本人を黄色人種に含むのは不当な差別だとして連邦大審院への提訴を準備した、③これに対し亡命民権家・竹川藤太郎は、吉川の戦略を華僑差別として難じ、日本人は自分たちがどの人種に属するかに関係なく、自らへの差別に抗議すべきだと主張した、の3点がわかった。 以上より研究代表者は竹川の思想追究を志し、彼の故郷・山梨の県立図書館・博物館で関係資史料を閲覧して、①同県では明治最初期に課税をめぐり発生した農民一揆に対し、刑死2名を含む大規模弾圧が行われた、②この経験が、県内各紙に対し、論説の表現を迂遠にして検閲者の催眠を促す対政府抵抗戦術を採らせた、③竹川は10歳代前半に民権運動に加わっていたと見られる、④彼による上記吉川批判の稿にも迂遠な表現があることから、竹川の米国での活動には山梨の地域性が見られる、の各点を考察した。以上の内容を、今後研究代表者は各学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように、本研究は、研究代表者の入院等のため、予定よりも5ヶ月遅れて9月に開始せざるを得なかった。しかし研究開始後は、各地の図書館・博物館における資史料閲覧とその考察を順調に進められているので、区分は「遅れている」とせず、「やや遅れている」にとどめた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年間の研究期間のうち、研究を開始した2023年9月から、来たる24年夏までの1年間は、「研究実績の概要」で述べた竹川藤太郎研究を行うことにより、19世紀終わりごろの在米日本人がおかれた社会的位置の把握に努める。 その後は研究の重点を、彼・彼女らの子どもたちの状況に移す。史料としては、スタンフォード大学がウェブサイト"Hoji Shinbun Digital Collection"に出している日本語新聞等を用い、そこに記された在米日本人、とくに子どもたちの生活実態を解読していく。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)