Project/Area Number |
23K02159
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
広瀬 悠三 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (50739852)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2027: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 信頼 / 赤ちゃん / 存在論 / 空間 / 対話 / ブーバー / 教師 / 教育的関係 / 世界市民 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「教育的関係における信頼の理論と実践に関する研究」である。本研究は、教育的関係における信頼は、教育者から子どもへの過剰かつ法外な信頼という垂直的な信頼と、子どもどうしが友情において結ぶ水平的な信頼を基盤として、人間に対して時空間を含み込んで総体的に作用するものであることを解明する。その際、日本の特殊な文化的文脈における信頼も研究の対象範囲に加え、しかし日本的な特殊な信頼にとどまらない奥行きをもつ一般的な信頼を、教育実践の現場において見られる信頼から逆照射的に検討することで、単なる机上の空論を超えた、現実的な力をもつ教育的関係の基盤としての信頼を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はまず、空間的特質をもつ信頼の特徴についての論文が、国際学術誌に掲載された。そこでは、信頼が個人の個別的な性格や感情、信念にのみ依拠して生まれるのではなく、人間の間の関係性、さらには人間と事物との関係性においてこそ、醸成されることが明らかにされ、それが世界市民的教育の鍵を成す対話の可能性の条件になることが示された。 また赤ちゃんを教育哲学的に分析することを通して、赤ちゃんの根本には他者との信頼という関係が埋め込まれていることを示し、そのことによって、赤ちゃんを始原とする人間存在がHomo Fidens(信頼する人間)であることを定式化して示した。このことによって、人間は社会生活を営む上では信頼し合う必要があるという、社会合理的説明ではなく、そもそも人間存在自体に信頼ということがはじめから含まれているということが明らかにされた。この研究によって、信頼は、われわれが身につけるべき社会的スキルではなく、人間がそもそも生きる上で存在論的に前提的に自らの内に存在するものであるという認識に立ち、そのことによって教育実践やカリキュラムの改革などを行うことが可能になると思われる。その際重要となることは、人間の存在論的な信頼の性質を、できるだけ妨げない方策や働きかけをするということである。 さらにこのような存在論的な信頼を、マルティン・ブーバーの対話的個人の特質として解明することを試みた。ここでは、ブーバーが現代を「信頼の危機の時代」と捉えながら、信頼が対話とどのような位置にあるのか明示していなかったことから、ブーバーが対話と信頼をどのように関係づけていたのかを考察した。その結果、ブーバーは、信頼は対話の前提条件でも、また対話の結果でもなく、対話そのものとして捉えていたことが明らかにされた。このことから、信頼は存在論的に人間の実存を根本的に支えている可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、大きく分ければ、空間的特質をもつ信頼の性質と信頼の存在論的特性の二つを明らかにすることができた。とくに前者は、信頼を個別的な理解から解き放ち、新たな信頼の考察へと向かわせる鍵となり、このような研究をまとめることができた点は、今後の研究の進展に大いに資すると思われる。また、信頼は、世界への信頼などとして捉えられることもあり、包括的かつ抽象的な意味が従来はあまり検討されてこなかったが、本年度はそのような信頼を存在論的な信頼として、つまり、存在と存在を成り立たせる対話それ自体としての信頼として考察することができた。従来の信頼研究では、このような信仰に連なる信頼は、考察の対象から除外されてきたが、本研究ではその最も内奥の一部を解明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、存在論的な信頼を、さらに赤ちゃんやブーバーの対話といったものに限定することなく、検討し、より包括的かつ総体的にそのような存在論的な信頼を解明することが求められる。そのためには、ボルノウの信頼論でまだ明らかにされていない箇所をさらに考察することと、人間中心主義を超えた信頼のあり方をさらに吟味することが求められる。またそのような文脈で、世界市民的教育の鍵概念の一つとして信頼が存在することを解明することが求められる。
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