The theoretical and practical study on the "boundary-crossing" nature of school education for social jusitice
Project/Area Number |
23K02191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09020:Sociology of education-related
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
澤田 稔 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00367690)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 公正 / 越境性 / 批判的教育学 / カリキュラム / 教育方法 / 多様な教育機会 / 社会的公正 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「社会的公正を志向する学校教育」という理念の学術的背景として主たる2つの研究分野として批判的教育学及び社会的公正に関する政治哲学=正義論を取り上げ、両者間を行き来しながら整理し、その中で、本研究におけるもう一つの鍵概念である「越境性」に関する探求の意義を、日米における教育現場のフィールドワークから得られるデータの分析も踏まえながら明らかにすることを目的とする教育学研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、社会的公正 (social justice) を志向する学校教育とはどのような教育かという問いに対する一定の可能かつ妥当な解を学術的に探求することを目的とし、そうした教育の理論的定式化のみならず、その実践的可能性及び課題の明確化にあり、またその際、越境性 (crossing borders/boundaries)という観点に照準する点に、その特質がある。 当該年度の研究では、主として理論的定式化に関する研究を進めて、学会ラウンドテーブルでの口頭発表、及び’学会誌論文の公刊に至った。その内容としては、政治哲学者ナンシー・フレイザー(Nacny Frazer)の理論的道具立てと、米国における批判的教育学の研究蓄積を援用し、社会的に公正な教育を支える理念を、コンピテンシー(現代社会で重視される能力論)、及び、インクルージョン(多元的により包摂的な学校教育)、デモクラシー(学校教育における、学校教育を通じた民主主義)の3つに整理するとともに、これらの諸理念の政策的・実践的具現化を目指す際に理念間の境界間で生じる葛藤関係・ジレンマの意味を掘り下げる考察を試みた。 実践事例研究に関しては、講演や口頭発表の一部で、その成果を取り上げて紹介し、その講演録に基づく論考を文章化して公刊した。そこで主に取り上げたのは、米国ボストン市にあったMission Hill Schoolの実践事例であった。また、日本における社会的に公正な教育の政策的・実践的実現を目指す上で、従来型の公教育の枠に収まらないいわゆる多様な教育機会における越境性を視野に収めざるを得ないという課題意識から、日本国内で、不登校支援を謳う私立学校や、障害を持つ生徒とそうではない生徒が共に学ぶことを重視する実践を展開している公立高校などで、定期的にフィールドワークを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に理論研究に関しては、前年度までの科研研究の蓄積を十分に生かした考察を進めることができ、それまで自分の理解にあいまさが残っていた概念連関をより明確化して整理できるようになり、その考察結果を口頭発表や論文の刊行に結びつけることができたことが、本年度の研究の順調さの理由である。具体的には、N.フレイザーの理論的枠組みに移居して、社会的公正の実現に向けた過程を、不公正の不断の是正として理解し、これに向けた「変革的治癒策」と「肯定的治癒策」、この中間的・越境的戦略としての「非改革主義的改革」のあり方とそれらの関係を公教育の文脈に適用した議論を明確化するとともに、「再配分・承認・代表の政治」を教育学的に「コンピテンシー・インクルージョン・デモクラシーという理念の政策化・実践化」として再解釈し、これを社会的公正を志向する教育として定式化することができたことを意味する。 他方、実践事例研究に関しては、米国における主たるフィールドとしていたMission Hill Schoolが2022年で閉校措置となったため、調査の継続ができなくなった。しかし、この閉校措置問題自体が、社会的公正を志向する教育をめぐるポリティクスの問題であることが、現地調査等によって明らかになった。また、当該年度における日本国内における実地調査は、後期中等教育に偏ったため若干の課題を残したと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
社会的公正を志向する教育(社会的に公正な教育)のカリキュラム・教育方法論に関する理論的定式化は、一定程度進められたと考えているが、その最も主たる論文は英語による刊行となったため、日本語でも発表することによって、より多くの読者を得て、有意義な批判や助言を受けられるようにしたいと考えている。また、この研究における鍵概念である「越境性」に関する考察は、まだ多くの課題を抱えているので、これに関する理論研究もさらに推し進める必要がある。具体的には、社会的公正を志向する教育の主要構成要素としてのコンピテンシー・インクルージョン・デモクラシーという各理念間で生じる葛藤関係=ジレンマに関する理解の精緻化を、ある種の社会学的知見(社会システム論)の援用によって図ること、さらに、越境性概念に関しては、従来の公教育において排除的な処遇に直面してきた多様な背景を持つ人々を明示的に包摂できるようにするとともに、従来の公教育内部に一定程度包摂されていた人々に対するより多様で応答的(responsive)な教育のあり方に関する規範科学的理論研究を進める必要がある。 実践事例研究に関しては、次年度は、義務教育段階の公立学校での実地調査を(できればアクション・リサーチも視野に収めて)試み、従来の教育機関内部における包摂性・応答性の向上の図り方を具体的に明確化する作業を進めたいと考えている。同時に、一条校以外の団体・組織における実地調査も可能な限りで増やしていきたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)