Project/Area Number |
23K02229
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09030:Childhood and nursery/pre-school education-related
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
松島 のり子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (20727622)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2027: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 保育環境 / 児童福祉施設最低基準 / 幼稚園設置基準 / 保育要領 / 物的環境 / 保育の環境 / 保育用品 / 「環境を通して」 / 1960年代 |
Outline of Research at the Start |
日本で保育施設の普及と保育内容に関する基準の整備も進んだ1960年代を対象とし、保育の物的環境について、1)制度の規定や政策の議論、2)遊具や玩具等の実態、3)保育用品の研究・開発の動向、4)保育実践の実際について、実証的に明らかにする。 1)では、幼稚園や保育所の施設・設備に関する制度の、制定経緯や議論に着目する。2)では、保育の場にはどのような遊具、玩具、道具、用具があり、保育の環境が構成されていたのかを描き出す。3)では、保育用品に関する学術研究やメーカーの商品開発の動向を検討する。4)では、保育の物的環境が実践で子どもや保育者にどのように用いられ、保育が営まれてきたのかを紐解く。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、保育の物的環境を規定し得る制度・政策に関わって、幼稚園設置基準(1956年)や児童福祉施設最適基準(1948年)と、文部省『保育要領―幼児教育の手びき―』(1948年)の内容から、保育の物的環境に関する規定や記述を確認した。 制定当初の児童福祉施設最低基準は、保育所の設備として、「乳児室又はほふく室には、室内滑台、椅子ぶらんこ、歩行器及び手押車」(第50条4)、「保育室又は遊戯室には、楽器、黒板、机、椅子、積木及び絵本」(第50条7)、「屋外遊戯場には、砂場、滑台及びぶらんこ」(第50条9)を備えるよう定めていた。他方、制定当時の幼稚園設置基準は、幼稚園の園具及び教具として、「机、腰掛、黒板」「すべり台、ぶらんこ、砂遊び場」「積木、玩具、紙しばい用具、絵本その他の図書」「ピアノ又はオルガン、簡易楽器、蓄音機及びレコード」「保健衛生用具、飼育栽培用具、絵画製作用具」を備えなければならないとした(第10条)。 両基準から、乳幼児の保育環境に備える設備としてすべり台とぶらんこ、幼児に焦点化すると、机、椅子、黒板、砂場、積木、絵本、楽器が共通していた。 これらの多くは『保育要領』でも言及されている。たとえば、「壁にはめこんだ黒板は、幼児に最も人気がある。床から半メートル上にすると幼児が大きい絵を描くのによい」、机は「長方形の小さいものが便利である。必要に応じて〔中略〕いろいろの形にして使用できるからである」など、子どもが実際に使う場面を想定して記されていた。『保育要領』には、ほかにも屋内外に備える遊具等が具体的に挙げられている。実際の保育の場での整備状況は検証を要するものの、いかなる保育環境が想定されていたのかを窺い知ることができる。のちの「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」も視野に入れながら、基準の制定・改正との関連についても引き続き調査していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
児童福祉施設設置基準(1948年)と幼稚園設置基準(1956年)の制定内容に加え、『保育要領―幼児教育の手びき―』(1948年)にも視野を広げて史資料の検討を始めたところ、保育の物的環境に関して充実した記述内容がみられ、関心が広がる契機となった。保育の物的環境は、遊具に限って一例を挙げるだけでも、ジャングルジム、砂場、すべり台、ぶらんこ、三輪車、ゴムまり、シャベル、いす、積木、机、楽器、絵本、絵の具、粘土、はさみ、のりなど、実に多様であり、主として屋外で使用するか室内で使用するかの想定もメーカー開発には重要な点になると考えられる。そのため、制度・政策の分析における視点も精緻化を図り、よりていねいに検討していきたいと考えている。また、『保育要領』については、その基盤が戦前期の資料にあることが先行研究によって明らかにされており、『保育要領』と戦後の保育環境にかかわる制度規定との関連も関心事である。 そして、保育所と幼稚園に関する前述の2つの基準については、制定に至る過程はもとより、その後1960年代にかけての改正の内容とその過程を追う必要があり、その作業がまだ十分に着手できていない。事実を正確に把握するとともに、制定・改正された当時の時代状況や幼稚園・保育所の普及状況などとも照らし合わせながら、分析・考察を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、主に制度規定に関する内容把握に取り組んできた。2024年度は、これら史資料の分析とともに、関連資料の収集・分析を進め、保育環境に関わる制度規定や政策の動向について明らかになったことをまとめたい。その際、幼稚園や保育所において実際に設備を整えるうえで重要な費用面にも目を配り、当時の時代、幼稚園や保育所をとりまく状況にも即して制度のありようを検討していく。 さらに2024年度は、保育の物的環境を成す保育用品の開発・研究の動向について明らかにしていくため、1960年代を主たる対象として、保育用品に関する研究論文や雑誌の記事、広告等の史料収集を始める。あわせて、保育用品メーカーによる史資料の調査を進める。同時に、実際に保育の物的環境を成していた遊具、玩具、道具、用具にはどのようなものがあったのか、文書資料や写真資料の調査を行う。文書資料については、これまでの研究活動のなかで手にした関連資料を再度紐解き、保育の物的環境の視点での分析を行う。あわせて、新たな史料発掘にも努め、分析を進める。 以上により、幼稚園や保育所が普及していく1960年代において、保育施設での使用を想定した保育用品はどのような変遷を遂げてきたのか、どのような保育実践を想定して保育用品がつくられてきたのか、保育の物的環境にはどのような保育観が反映されていたのか、という点について、保育実践との関連性を意識しながら明らかにしていきたいと考えている。
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