大阪府の民族学級を核とした生活・総合の授業実践と学校カリキュラム
Project/Area Number |
23K02385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09040:Education on school subjects and primary/secondary education-related
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
磯田 三津子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (10460685)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 米国のエスニック・スタディーズ / 多文化教育 / 外国人・児童生徒教育 / 大阪府の教育 / 在日外国人児童生徒教育 / 民族学級 / 生活科・総合 / カリキュラム / 大阪府 |
Outline of Research at the Start |
大阪府には在日コリアンや外国につながりのある子どもたちを対象とした放課後の教室がある。なかでも、在日コリアンの子どもたちを対象とした教室は民族学級と呼ばれてきた。本研究では、民族学級の教育実践がどのように生活・総合に関連付けられ、各学校の外国人教育のカリキュラムが構成されてきたのかについて大阪府の小学校を対象に明らかにする。そして外国につながりのある子どもたちの文化や歴史を包含したカリキュラムの意義と教育実践の在り方について、アメリカの「文化に対応した指導」(culturally responsive teaching)の理論を中心に考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5(2023)年度は、アメリカのエスニック・スタディーズの近年の動向を踏まえその理論と実践の特徴について検討した。アメリカでは1970年代半ば頃より人種・民族に加え、社会階層、障がい、性などを含めた多様な生徒が等しく教育にアクセスすることをめざす多文化教育の実現が大きな課題となり、エスニック・スタディーズへの関心は薄れていった。ところが今日、再びエスニック・スタディーズの教育的意義が注目されているようになってきている。 その背景には1998年より開始されたアリゾナ州ツーソン統一学区(Tucson Unified School District、以下、TUSDと称す)におけるラティンクスの生徒を対象としたエスニック・スタディーズのプログラムの成果にある。しかし、2010年5月、TUSDのエスニック・スタディーズのプログラムは、人種・民族間の分裂を促す危険性があると禁止された。 TUSDでエスニック・スタディーズが禁じられる一方で、カリフォルニア州やオレゴン州など多様な人種・民族が暮らすいくつかの州のカリキュラムには、エスニック・スタディーズが位置づけられるようになった。都市に焦点を当てるとサンフランシスコ、シカゴなど都市でエスニック・スタディーズの教育実践が行われている。エスニック・スタディーズは人種・民族の分離という政治的理由によってその実践がしばしば批判される一方で、人種・民族マイノリティの子どもたちへの意味が認められている。こうしたエスニック・スタディーズの意味を理解することは人種・民族マイノリティの教育のあり方を考える際に重要である。本研究では、今日のアメリカにおけるエスニック・スタディーズの特質を明らかにすることを通してその教育実践にどのような意義があると主張されているのかを考察し、人種・民族の分裂を促すという批判をどのように克服できるかについて提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、大阪府の特徴的な教育実践である外国につながりのある子どもの文化や歴史を放課後のクラスで学ぶ国際クラブの教育的意義と、国際クラブを核とした外国人集住地域を中心としたカリキュラムの特徴について明らかにすることである。そこで、令和5(2023)年度は、大阪府の外国の子どもを対象とした教育実践である国際クラブの意義を明らかにするための理論的根拠を明らかにするために研究を進めた。本研究では、多様な人種.民族の教育を1960年代より取り組んできたアメリカのエスニック・スタディーズに関する教育理論を対象にした。エスニック・スタディーズの理論を考察した結果、次の3点が明らかになった。第一は、エスニック・スタディーズがカウンター・ナラティブとして従来の教育内容を問い直し、差別や偏見が生ずる原因を探求できる学習ということである。第二は、人種・民族マイノリティをめぐる歴史や今日の社会状況に関する体験的な学習を行うことを通して、生徒が置かれている現状と未来をより良く変化させるように生徒をエンパワーメントする可能性があるということである。第三は、こうした学習が結果として人種・民族マイノリティの生徒の学習参加を促し、学力を高める成果があるということである。 大阪府の教育に関しては小学校3校、中学校1校、高等学校1校の調査を進めた。令和5(2023)年度は、それぞれの学校のカリキュラムの特徴についての資料収集と校長への聞き取り調査を行った。また外国人集住地域で行われている小学校の生活・総合的な学習の時間の授業については継続的に参観した。それらの資料等は令和6(2024)年度の研究につなげる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6(2024)年度の到達目標について、第一は、大阪府の在日外国人児童生徒教育と学校教育に関する先行研究を詳細に検討することである。第二は、大阪府の外国人集住地域、人権教育を積極的に行っている学校の校長への聞き取りを行い国際クラブが外国につながりのある生徒と日本人の双方にとってどのような意味があるのかについて考察することである。第三は、生活・総合を中心とした在日外国人児童生徒教育の実践状況を理解するために全国在日外国人教育研究協議会、大阪府在日外国人教育研究協議会といった教師が実践報告を行う研究集会に参加し実践の傾向を明らかにすることである。同時に、そこで配布されている報告書のバックナンバーの中から実践事例を収集し生活・総合の授業の特徴について考察することを通してその授業と学校カリキュラムの関係について複数の小学校をモデルに明らかにすることである。 以上の到達目標に向けて、令和6(2024)年度は、大阪府内の外国につながりのある子どもたちが多く通う複数の小学校の校長に聞き取りを行う。聞き取りの内容は、第一に、それぞれの小学校で構成されている在日外国人児童生徒教育及び、人権教育のカリキュラムを通して子どもたちに何を育成したいと考え学校づくりを行ったいるのかについて、第二は、放課後のクラスである国際クラブが外国につながりのある子どもだけではなく、日本人の子どもたちにどのような意味があると考えているのかについてである。以上の校長への聞き取り調査の内容をまとめ、考察し学会等で発表する。同時に、本研究では、昨年度から引き続き在日外国人児童生徒のカリキュラムを収集し、分析・検討を行う。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)