Project/Area Number |
23K02475
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09040:Education on school subjects and primary/secondary education-related
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
今野 日出晴 岩手大学, 教育学部, 嘱託教授 (10380213)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2027: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 学校資料 / 歴史教育プログラム / 自治体史 / 戦争体験 / 歴史実践 / 遠野物語 / 歴史教育 / 学校史 / 平和教育 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、戦争を体験した世代が少なくなり、「戦争体験」を継承することの意味が見失われているなかで、学習者と同じ世代の、子どもや若者の「戦争体験」に焦点をあわせることで、「戦争体験」を継承することの意義を実感しえるような歴史教育プログラムを提案するものである。①子どもや若者の「戦争体験」については、学習者と同じ学校や地域の史・資料から、新たな学習材を構想して、小中高と校種の異なる学習モデルとして開発する。②学習モデルの実践を踏まえて、普遍的な方法論を提起する。③「戦争体験」を継承することが、学習者が生きることにおいて意味のあるものであったかを確かめ、「戦争教育」としての可能性を構想する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、学習者と同じ世代の、子どもや若者の「戦争体験」を、各地の学校資料から導き出し、「戦争体験」を継承することの意義を実感しえるような歴史教育プログラムを開発することを目的にしている。各地の学校で実施することを可能にするために、今年度は、まず、代表的な学校資料を調査し、その現状から本研究の基本的前提と課題を見いだそうとした。 まず、師範学校の資料群として、筑波大学と東京学芸大学の状況を調査した。筑波大学附属学校教育局 教育長補佐 梶山正明氏、東京学芸大学史資料室 専門研究員 牛木純江氏の協力によって、師範学校資料の保存、公開、活用に関しての現状を調査した。いずれも、学校資料の悉皆調査によって、資料目録をつくるというところには至らず、資料室等で所蔵しているものー師範学校資料(文書や教具など)ーを整理しているという状況であり、悉皆調査、保存、公開については、今後の課題となっていた。また、県単位では、先進的な事例として、茨城県立歴史館史料学芸部長谷川拓也氏の協力に得て、その現状を調査した。茨城県では1995年度から、県内の小学校を対象に、各種の記録簿をマイクロフィルムに撮影し、収集・保存・公開する事業を進めている。特に、学校資料公開のためのガイドラインを議論し、公開のための基準を策定している点は注目される。 また、学校資料の活用という点では、遠野小学校を中心とする学校資料をもとに、遠野の教育文化の様相を、戦前の教育活動と文化運動との両面から明らかにすることができた。次の「進捗状況」で詳述するが、学校資料を軸に行政資料、新聞記事、教科書などを駆使して地域の歴史と記憶のあり方を描いたもので、歴史教育プログラムの方向性を定めるものとなった。盛岡一高、二高の調査に基づき、「地域と歩む教育」(『盛岡市史 現代 資料編下巻』2024年3月)に学校資料を収録した点も補足的な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦前期の学校資料は、尋常高等小学校、師範学校、青年学校、旧制中学、旧制高等女学校、国民学校などの校種によって、資料の性格が異なっている。師範学校の資料収集に関しては、筑波大学、東京学芸大学において、尋常高等小学校・国民学校、青年学校については、茨城県や盛岡市、北上市、遠野市の学校資料を調査することによって、その現状について(どのような学校資料が残りやすいか、資料を具体的に活用するための個人情報の扱いはどうするかなど)、一定の成果と課題を明らかにすることができた。 また、学校資料の収集と活用という側面では、遠野市に関して、学校資料を軸に、行政資料、新聞資料などを調査して、遠野南部家の南北朝期の勤王のあり方と、その記憶のつくられ方を明らかにすることができた。遠野南部家の「勤王五世」としての姿が『郷土読本』(遠野市立図書館蔵)『昭和11年度岩手県青年教科書』(国立教育政策研究所教育図書館蔵)、『国定教科書 高等国史上』(国会図書館)に記されることによって、地域の記憶として定着し、戦時下の学校教育で大きな役割を果たしていった。学校資料を軸に、新聞資料、教科書などと複合的に組み合わせて、地域の歴史とを叙述するという経験が、一つのモデルとなって、学校資料の収集と活用を目指した、今回の歴史教育プログラムの開発につながることを展望できた。特に、遠野市では、学校での教育活動と地域のさまざまな活動が連動して、近代の学校と教員の役割が明確になったことも、成果の一つである。また、具体的なプログラムとともに、理論的にも学校資料の重要性を位置づけることが必要となるが、本年度は「歴史総合」の資料論として、その見通しを提示できたことも、今後の歴史教育プログラムの理論的な土台をつくるものである。 以上の点から、本研究課題に関して、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の進展方策として、まず、学校資料の収集、保存、公開などの現状を、全国的に調査していくことにある。それは、地域の学校資料のみならず、教育行政や教員集団の史・資料も含めて、先進的に収集している地域の現状調査である(代表的には、京都市学校歴史博物館があり、2024年度の調査を予定している)。また、「戦争体験」に関する証言や口述資料等の収集にあたっている地域の調査も必要になってくる(代表的には、沖縄県での調査であり、2024年度の調査を予定している)。これらの調査をおこなうことで、前年度からの調査課題を補充していく。京都市学校博物館が難しい場合には、再度、茨城県歴史館の収集・公開・保存事業の進展状況を調査し、沖縄県が難しい場合は、広島県・長崎県など、平和教育の蓄積の厚い県を対象に調査する。 次に、岩手県においては、北上市の学校資料の調査があり、特に、戦前の「生活綴方」に関する資料や教員による教育文化の実情を探究することをめざしたい。こうした具体的な学校資料の調査によって、歴史教育プログラムの開発(そのための新たな教材の開発と確定へ)を進めていきたい。 以上のように、先進的に進められている学校資料の収集・公開・保存に関する事例調査と地域の具体的な学校資料による歴史教育プログラムの開発と二つの方向から、本研究課題を遂行していくことを企図している。
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