Project/Area Number |
23K02860
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10020:Educational psychology-related
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岩田 美保 千葉大学, 教育学部, 教授 (00334160)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 感情コンピテンス / 感情的社会化 / 社会的文脈 / 感情言及 / 感情語 / ポジティブ感情 / 三世代 / 仲間 / 感情発達 / 関係調整 / 社会的相互作用 / 他者理解 |
Outline of Research at the Start |
本研究の大きな目的は、『幼児・児童の他者理解』について、幼稚園児の仲間遊び場面や、児童の話し合い場面、3世代の家族の食事場面に着目し、社会的関係の中での子どもの感情言及が果たす関係調整機能のプロセスを通じて発達的検討を行うことである。本研究は、感情コンピテンスの視点をふまえ、幼児・児童が日常関わる、重要かつ多様な関係性にみられる感情言及の関係調整機能のプロセスを包括的に捉えることを目指す。それにより、社会的やりとりが可能にしうる、他者理解の発達過程の具体的解明につながる先駆的な成果が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は、『幼児・児童の他者理解』について、感情コンピテンスの視点をふまえ、社会的関係の中での子どもの感情言及とそれがもたらす関係調整機能のプロセスを通じて発達的検討を行うことである。今年度は、幼稚園での観察を継続して行い、これまでのデータの比較分析や、学童期の教室談話の基礎分析を進めるとともに、特に、家庭場面で子どもが日常関わる、重要かつ多様な関係性としての祖母を含む三世代会話における子どもの感情言及に対する感情的社会化のプロセスに焦点をあて検討を進めた。 ①幼稚園での仲間遊び場面での感情言及の関係調整機能:これまでの申請者の検討から、ポジティブな感情言及としての「おもしろい」「楽しい」(岩田,2019)および、「かわいい」(岩田,2022)への言及や、遊戯的なネガティブ感情言及(岩田,2021)が、仲間間の関係調整において有効な役割を果たしていることが示唆された。本年度は、ポジティブな感情言及についての研究成果について比較分析を行った。その一部について第35回日本発達心理学会大会にて発表を行った。 ②三世代会話における子どもの感情言及に対する感情的社会化機能:家庭場面での高学年期のきょうだい(長男A、長女B)、祖母、母を含む三世代会話における、きょうだいのネガティブ感情言及に対する祖母・母の感情的社会化機能について検討を行い、その研究論文が公刊された(家族心理学研究,2024)。祖母と母が共通の視点に基づき,社会化において重要と考えられる応答を協働的かつ焦点的に行っていること等が示され、感情的社会化を通じた感情コンピテンスの発達に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、園での観察を可能を継続して行うとともに、家庭場面の三世代のやりとりや、園・学校での子ども同士のやりとりの観察データについて、感情言及と関係調整に関わる分析を進めた。 現段階までの研究成果として、特に、三世代会話における高学年期の子どものネガティブ感情言及に対する感情的社会化機能に関わる検討を進めることができた(家族心理学研究,2024)。同研究は、感情的社会化に対する三世代のやりとりの重要性が指摘されつつも、これまで母子間等、二世代を対象とした検討にほぼ限定されていた状況や、実際のやりとりの観察に基づく研究が極めて少なかった状況に対して、観察データに基づく実証的な知見を提供しうるものとなる。特に子どもの感情言及と関係調整に関わる発達に母や祖母を含むやりとりが果たす役割や重要性を示唆する結果として、その意義は大きい。 また、園での仲間間の感情言及を含むやりとりについては、ポジティブな感情言及としての「かわいい」への言及と関係調整についての研究成果(岩田,2022)が近年公刊され、これまでの「楽しい」「おもしろい」への言及と関係調整に関わる研究成果(岩田,2019)等との比較検討が可能となった。その一部は第35回日本発達心理学会でも発表し、討議を行った。今後、比較検討の内容や、これらの感情言及に想定される、性差等の観点をふまえた分析を進め成果を発表していくことが必要となる。 児童期に関わる検討については、今年度は、高学年期の話し合いのデータに着目し、感情言及と関係調整の観点に基づき基礎分析を進めているところである。逐次得られた結果について、今後研究報告を行っていく予定である。 総じて、本年度については、特に三世代会話に関わる分析を中心に、ほぼ着実に進んでいる。こうしたことから、当初の研究目的に沿った研究の進行は概ね順調になされているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、幼児期の検討については、新たなデータの収集および、これまでの縦断的・横断的データやそれらの比較を通じ、感情言及を通じた関係調整のありようについて、さらに詳細に検討を行うこと、また、性差の観点をふまえ、検討を進めていくこと等が早急の課題となる。これまでの学会での討議等で得られた内容もふまえ、得られた分析内容については、逐次論文としてまとめていく。 児童期の検討については、高学年期の話し合いデータについて、感情言及や関係調整の観点から検討を進めていく。また低学年期の検討についても、整理を進め、予備分析を行う。また、三世代会話についての検討では、ポジティブな感情言及に関わるやりとりについて検討をさらに進めるとともに、二世代会話との比較検討を行う。 これらの分析結果については、日本発達心理学会や、日本教育心理学会、日本保育学会、等において逐次報告し、意見交換を積極的に行っていく予定である。こうしたことを通じて、社会的文脈での感情言及と関係調整に関する研究をより深め、幼児・学童期の社会的文脈における他者理解のプロセスについて考察を深めていく予定である。
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