Project/Area Number |
23K02867
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10020:Educational psychology-related
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
進藤 聡彦 放送大学, 教養学部, 教授 (30211296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 与志文 東北大学, 教育学研究科, 教授 (20231293)
舛田 弘子 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (40289731)
佐藤 誠子 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (20633655)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 社会認識 / 教科教育 / 知識操作 / ルール学習 / 教科学習 / 知識の構造化 |
Outline of Research at the Start |
本研究では教科学習において取り上げられる公式や法則などの一般化された知識(以下、ルール)を変形する「知識操作」によって得られる新たな知識とルールの構造化による学習の促進効果を明らかにすると共に、そのメカニズムを解明することが目的である。また、これまで取り上げられることの少なかった社会科領域のルールを取り上げるところに大きな特徴があり、従来の「ルール学習」研究や「知識の獲得メカニズム」に関する研究を拡張するものである。事前に想定している学習促進効果やそのメカニズムの解明の対象となる知識操作は、同値変形操作、命題変換操作、事例代入操作、変動幅操作、目標転換操作の5つである。
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Outline of Annual Research Achievements |
従来、自然科学領域に関する学習者の不十分な認識が数多く見出され、その修正のための教授方略が解明されてきた。しかし、社会科学領域の不十分な認識を取り上げた研究は少ない。本研究では社会科学のうち、経済学に関する不十分な認識を取り上げた。供給が一定の場合、商品やサービスの値段・料金は需要によって決まること、および商品やサービスの特定の客層への値引きは増益を目的としていることの2つについて、それぞれ「値段が高いのは需要があるからだ」(需要ルール)、「特定の客層への値引きは増益のためだ」(増益ルール)とルール化した。 その上で調査1として大学生に当該ルールが適用されるべき経済事象に関して需要ルールについては需要、効用、コストの観点からの説明の妥当性を、また増益ルールでは福利、増益の観点からの説明の妥当性をいずれも5件法で評定を求めた。その結果、需要ルールに関する事象ついてはコストの観点からの説明の評定値が最も高くなった。増益ルールに関する事象では増益の観点からの説明の評定値が福利のそれよりも高かったものの、福利の観点からの評定値も高かった。よって、2つルールに関する大学生の不十分な認識が確認された。研究2として社会人を対象に同一の調査を行った。結果は大学生と同様であり、社会経験が経済事象についての認識を促進することはなかった。さらに社会人に対して不十分な認識を修正する教授方略として、不十分な認識では当該経済事象を説明しにくい事例を提示することの効果を探った。すなわち、いずれのルールについても需要が期待できない事例を提示した後、再度上記の評定課題を課した。その結果、一部不十分な認識の改善効果が認められた。 この他に、不十分な認識をもつ者と適切な認識をもつ者の個人差を規定する要因として知識操作に着目し、知識操作に関わると推測される知識の機能に関する認識を測定する知識機能観尺度を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1つめの研究として経済学領域に関する2つの調査を通じて、商品やサービスの値段や料金がコストで決まるとする不十分な認識や、需要の価格弾力性を利用した制度である特定の客層への値引きを福利の観点から捉える不十分な認識の存在を明らかにした。また、そうした認識は大学生と同様に社会人にも見られたことから、社会経験によって改善するものではないことを示した。さらに、このような認識を修正するための教授方略として、不十分な認識では説明しにくい事例に基づいて問題解決させた。その結果、不十分な認識の修正効果が一部確認された。ここで行われた事例の提示は、代入操作の代理的知識操作にあたる。すなわち、知識操作とは「pならば(は)、qである」と記述可能な一般化された知識を変形する内的操作であり、代理的知識操作は第三者が学習者に知識操作を提示することにより、学習者自身の知識操作を導くことである。また、代入操作は知識操作のうち、ルールの前件pにさまざまな事例を入れてみることである。したがって、上記の結果は、代理的代入操作による代入操作が効果をもたらしたと捉えることができる。この結果から、適切な問題解決には知識操作が関わっていることが示唆された。そこで、2つめの研究として知識操作を規定していると考えられる知識の機能についての認識を明らかにすることを試みた。調査の結果、知識の機能についての認識は、事象や現象を理解するためのものとする知識機能観と、事象や現象について深く考えるためのものとする知識機能観の2つから構成されていることが明らかになった。そして、2つの下位尺度からなる知識機能観尺度を作成した。知識機能観尺度は、今後の学習における個人差の説明に使用できる可能性がある。 以上のように、研究課題に関して一定の新たな知見が得られたことから、概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
経済現象に関する前年度の研究結果を踏まえ、2つの研究を行う予定である。第1にこれまでの一連の研究で取り上げた「需要ルール」と「増益ルール」の獲得を代入操作の観点からどのような属性をもつ代入事例が有効かを探る研究を構想している。すなわち、大学生を対象に不十分な要因に着目した場合でも説明可能な事例でルールを説明する群、不十分な要因に着目した場合には説明できない事例で説明する群、不十分な要因に着目した場合でも説明可能な事例を用いて不十分な要因を適切な要因に矛盾なく位置づけて説明する群を設けて、当該2つのルールの理解促進効果を探る。また、問題解決にあたって深い理解を伴わないと解決が難しい誤前提課題による転移課題を設けて、ルールの理解の程度を3群間で比較する。 第2に問題解決における「需要ルール」と「増益ルール」の適用の可否と知識操作の関連、および知識操作と知識機能観の関連の解明を試みる研究を計画している。経済事象について適切な認識には知識操作によって得られる論理的に思考する認知プロセスが必要だと考えられる。したがって、知識操作の水準と問題解決の正否との間の相関関係が予想できる。一方、学習者の知識の機能についての認識は「理解のための知識」と「思考のための知識」の高低の組み合わせから4つに類型化できる。このうち、知識が理解のための機能をもつという認識が高く、なおかつ思考のための機能をもつとする認識の高い者は知識操作のような内的操作を行っていると考えられる。これらの予想を実験や調査を通じて確かめるとともに、結果から社会事象に関する適切な認識が形成される認知プロセスを明らかにすることを予定している。なお、これらの結果は学会発表および論文として投稿する予定である。
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