Project/Area Number |
23K03001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10040:Experimental psychology-related
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
牛谷 智一 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20400806)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 感覚間統合 / 比較認知 / 種間比較 / 生物学的起源 / オペラント条件づけ / ハト / Stream/Bounce運動 / 感覚間協応 / 多感覚マッチング |
Outline of Research at the Start |
ヒトと系統発生的に遠い鳥類を被験体として聴覚情報と視覚情報の統合を多角的に調べることで,ヒトの感覚間協応の生物学的起源を探る。具体的には,聴覚―視覚統合過程について,聴覚と視覚の間に自然な結びつきがあるか(聴覚視覚マッチング実験),また,運動刺激が音の付随によって衝突しているように見えるか(衝突事象実験)の2研究テーマでハトを調べ,ヒトの結果と比較する。進化的な遠縁の種であるハトにおいてヒトと同様の感覚間協応が観察されれば,感覚間協応が単なる神経構造上の偶然ではなく,進化適応の産物であることが示唆される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では,感覚間協応の進化を解明するための2実験を,ハトを被験体として実施している。 聴覚―視覚マッチング実験では,聴覚―視覚間の恣意的な関係を学習させる際,特定の結びつきが学習を促進するか調べた。ヒトと同様の感覚間協応があれば,高い音に対して明るい色,より高い位置にある物体,小さい物体をマッチングさせるのは容易で,逆に,暗い色,より低い位置にある物体,大きい物体をマッチングさせるのは難しいと予測できる。現在,最もシンプルな形での実験結果は,ハトにおける感覚間協応の存在を支持しないものであった。 音の付随する衝突事象実験では,Stream/Bounce運動の認識を利用する。Stream/Bounce運動,すなわち,左右両側から移動して中央で重なってまた両側に離反していく運動は,衝突してそれぞれ最初の位置に戻ったか,お互いすり抜けたか多義的だが,ヒトの場合は,すり抜けであると認識しやすい。これまでの実験では,ハトでも類似の結果であった。ヒトでは,円が中央で重なるときに音を同期させると,「衝突」と認識することがわかっているため,ハトでも同じように,音の同期によって「衝突」と報告するようになるか調べる。現在,ハトの訓練中である。 これらの実験では共に,ハトの聴覚特性と,ダイナミックな視覚的注意過程への理解が不可欠である。そのため,基礎実験として,ハトの聴覚特性を調べる実験を実施した。ハトは,高さの異なる2音を視覚刺激に結びつけて反応できることがわかった。また,同じく基礎実験として,ハトのダイナミックな視覚的注意過程を調べる実験を実施した。ハトは,継時的に変化する2画面間の変化を検出できたが,ヒトと同様に2画面間の空白や突然の刺激onset/offsetによって検出が阻害されることがわかった。これら基礎実験の成果は,国際会議にて発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
聴覚―視覚マッチング実験では,聴覚―視覚間の恣意的な関係を学習させる際に特定の結びつきが学習を促進するか調べるため,まずハトに聴覚刺激に対して視覚刺激をマッチングさせる訓練を実施した。基礎実験にて弁別できることがわかった2音を用い,各音に対して,円または十字図形にマッチングさせたが,その際,各図形の明るさ・大きさ・位置にバリエーションを設け,どの選択刺激へのマッチングが早く獲得されるか検討した。ヒトと同様の感覚間協応があるならば,高い音に対して明るく,小さく,高い位置に呈示された選択刺激にマッチングしやすく,低い音に対してはその逆になることが予測されたが,ハトは全体的にこの実質的一対多マッチングに困難を示し,現在のところ多感覚間協応は示されていない。 音の付随する衝突事象実験では, Stream/Bounce運動の認識を利用する。Stream/Bounce運動とは,左右両側から移動して中央で重なってまた両側に離反していく運動刺激のことで,円が中央で重なるときに音を同期させると,ヒトは「衝突」と認識することがわかっている。ハトでも同じように音の同期によって「衝突」と報告するようになるか調べるが,現在,ハトの訓練中で,訓練完了次第テストに移行する。この実験では,音がハトの注意を阻害する可能性があるため,まず基礎実験としてハトのダイナミックな視覚的注意過程も調べている。変化検出課題を訓練されたハトは,変化間に30 msのブランクを挿入しただけで正答率が大幅に悪化した。また,ブランクのように変化自体を短時間見えなくするのではなく,変化自体はそのままで変化と同期して短時間(30/60ms)チェッカーボードパターンを示すだけでも変化検出は阻害された。これらの知見を利用して,音の付随する衝突事象実験での刺激呈示時間などを決定し,ハトをテストする。
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Strategy for Future Research Activity |
聴覚―視覚マッチング実験では,最初の実験では明るさ・大きさ・位置の多様な選択肢劇へのマッチングをハトは学習せず,多感覚間協応の証拠は示されなかった。しかし,これは,実質的な一対多マッチングとなっている実験課題が,ハトには難しすぎた可能性がある。そこで,今後は,新奇個体を用いて一対一マッチングを訓練するが,感覚間協応的にcongruentな刺激(例えば,高い音に対して明るく,小さな,高い位置の選択刺激,低い音に対して暗く,大きく,低い位置の選択刺激)をマッチングさせるcongruent群と,その逆のマッチングの組合わせで訓練するincongruent群とにハトを分け,どちらの群の成績が早く向上するか調べる。 音の付随する衝突事象実験では,ハトの訓練が完了次第テストを実施する。ベースラインとなる訓練試行では,円が両側から接近してすり抜ける刺激と,両側から接近して中央の仮想のラインに触れた時点で折り返す衝突刺激の弁別を訓練している。具体的には,初期画面で輪郭が赤くなった円(標的円)を追跡させる課題で,初期画面の後に急速に赤い輪郭が消えながら運動した円が,すり抜けて反対側に移動するか,衝突して初期と同側に戻るかしたあと,ハトが標的円をつつくと餌報酬が与えられる。テストでは,中央で完全に2円が重なるように運動する刺激を呈示するが,その円の重なる時点で音を提示し,ハトが標的がすり抜けたと報告するか,衝突したと報告するか,ベースラインと比較する。さらに,音の同期性を崩した条件でもテストする。 本研究は,感覚間協応の進化仮説を,哺乳類とは脳構造の大きく異なる鳥類を用いて検討する世界で初めての試みである。核状の脳回路網を持つ鳥類でも見られれば,感覚間協応は,哺乳類,鳥類間で共通する環境の構造に適応するため進化してきた,といえるだろう。
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