実射影空間への標準的基本多面体の拡張を手がかりとする幾何構造の変形
Project/Area Number |
23K03096
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 11020:Geometry-related
|
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
秋吉 宏尚 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80397611)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2027: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
|
Keywords | 双曲幾何 / 基本多面体 / 実射影構造 / 基本領域 / 変形理論 |
Outline of Research at the Start |
本研究課題で中心的に研究する対象は3次元双曲多様体,すなわち,3次元双曲空間に自由かつ等長的に作用する離散群による商空間である.3次元双曲多様体の研究には,標準的な基本領域が効果的に用いられる.3次元双曲空間は3次元実射影空間への自然な埋め込みを持つが,本研究では,この自然な埋め込みを用いて標準的な基本領域を実射影空間の凸集合へと拡張する.これは先行研究における問題解決のための素朴な手法として導入されたものだが,得られた凸集合の組み合わせ構造には多様体の深い性質が潜んでいるようである.本研究では「拡張された標準的基本領域とはいったい何なのだろうか?」という問いへの答えを模索する.
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は,双曲多様体に対するフォード領域やディリクレ領域という標準的基本領域を,双曲空間の外部空間である実射影空間に拡張したときに得られる“拡張された標準的基本領域”の基礎理論を構築し,幾何構造の推移やクライン群のなす空間の大域的性質の解明へと応用することである.そのために,理論的な探求のみならず様々な数値実験による興味深い具体例の検証も同時に進めていく予定である. 今年度は,まず,先行研究により得られた結果として,有限体積完備双曲多様体がカスプを高々一つしか持たない場合,多様体上で基点を動かすときに現れ得るディリクレ領域の組み合わせ構造は高々有限種類であるという事実の発見があったが,その証明方法を詳細に検討することにより,複数のカスプが存在するときにも同様の事実が示された(国際研究集会にて発表済み,論文投稿中). さらに,主目的に向けた研究における基礎的知見を得ることを目的とし,上述の先行研究で示されたディリクレ領域の有限性を,中心的な興味の対象の3次元から次元を一つ落とした2次元双曲多様体に対して,数値実験を中心として詳細に検証を進めた.双曲正八角形から得られる向き付け可能な種数2の閉曲面は,その極値的性質から様々な場面で姿を表すBolza曲面を含めて4種類存在することが知られている.それらの全てに対して,基点を曲面上で動かしたときに現れ得るディリクレ領域の組み合わせ構造を数値的に全て決定した.この数値実験を通して,今後進める予定の3次元多様体に対する標準的基本領域の取り扱いで必要となるMinkowski空間内の多面体の取り扱いの基礎固めを進めることができた.また,この数値実験により得られた副次的な知見として,これまで(拡張)Bolza曲面以外には知られていなかった閉双曲曲面の直径に関し,数値的ではあるが詳細な情報を得ることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡張された標準的基本領域の実射影空間における性質として,双曲的対象の射影幾何的な性質に関する基礎的事項について,今年度はCayley-Klein幾何として双曲幾何をとらえる方向で,研究打ち合わせを通して整理しつつ,そこで得られた知見を数値実験として実装することによる応用を進めてきた.数値実験では,中心的に扱うデータをMinkowski空間モデルを用いつつ実装を進めている.特に,今年度は双曲構造の展開写像のアルゴリズムの整備に主眼を置いて進めてきた.その結果,双曲空間内の与えられた有界集合を被覆する標準的基本領域の展開像の全体を求めることが可能となった.理論上は真性凸集合であることが先行研究により示された実射影構造のある展開像などが具体例としてあるのだが,このアルゴリズムを用いることでその近似的描像を高い精度で得ることが可能になるものと期待される.今後詳細に進めていく必要のある数値実験の枠組みに関して必要な知見を順調に集めているところである. また,先行研究の続きとして行った有限体積完備双曲多様体のディリクレ領域の組み合わせに関する考察を精密化するという作業を通して,次の点が新たに明らかになった.Minkowski空間モデルでの考察から座標に関する特殊性を排除することが可能となり,考えている集合が実射影空間内のproperな集合であることの特徴付けが容易になった.また,双曲空間における凸集合の射影に関する性質を注意深く観察することにより,異なるカスプをつなぐ最短測地線にはある種の有限性が存在することがわかった.一方,ディリクレ領域を全ての基点に関して求めるというアイディアに基づいて行った閉双曲曲面の直径に関する数値実験は,リーマン面の研究における未解決問題に新しい視点からの寄与があり,分野を超えた研究情報の交換に大きく役立っている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度までに得られた有限体積完備双曲構造に関する標準的基本領域のCayley-Klein幾何的理解と知見を活用し,無限体積双曲構造に関する拡張された標準的基本領域の基礎的性質の研究を進めていく方針である.その手がかりとして,先行研究でも考察した穴あきトーラス擬フックス群の有理プリーツ多様体をさらに詳しく調べていきたい.先行研究では拡張されたフォード領域のみに着目したが,ディリクレ領域でも基点の変化と合わせてその性質を精密に調べていきたい.特に,今年度得られたディリクレ領域の双対的対象であるドロネー複体に関する知見を幾何学的有限な無限体積双曲多様体へと拡張することを目指す.その観察が領域の拡張により新たに生じる頂点や辺の周りでの凸性を示すために重要な役割を演じると期待している.さらに,無理プリーツ多様体に対しても拡張された標準的基本領域の特徴付けを拡張したい.Keen-Seriesの結果により,有理プリーツ群の列の極限として無理プリーツ群を捉え,すでに得られている特徴付けから一般の穴あきトーラス群に対する拡張された標準的基本領域の組み合わせ構造の記述が得られるものと期待している. 非常に興味深い研究対象であるライリー切片の外部空間の解析に向け,穴あきトーラス擬フックス群での特徴付けをライリー切片に含まれる群へも拡張していきたい.先行研究で行った拡張されたフォード領域の特徴づけでは,その双対的対象であるEPH分割に対するGueritaudによる研究が大きな役割を演じた.私の作間氏・和田・山下氏との先行研究で詳しく調べたライリー切片に含まれる群のフォード領域の組み合わせ構造に関する研究にGueritaudの手法を援用することでEPH分割の特徴付けへと結びつけ,さらに拡張されたフォード領域の特徴付けへとつなげるという構想のもと研究を進めていきたい.
|
Report
(1 results)
Research Products
(5 results)