Project/Area Number |
23K03126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 12010:Basic analysis-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾畑 伸明 東北大学, データ駆動科学・AI教育研究センター, 特任教授 (10169360)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 量子確率論 / 量子分解 / 量子中心極限定理 / 直交多項式 / スペクトルグラフ理論 / 距離行列 / 代数的グラフ理論 / 代数的組合せ論 / グラフのスペクトル |
Outline of Research at the Start |
量子確率論(非可換確率論)の指導原理は、統計性の源泉を非可換代数とその表現に求めることにあり、「量子分解」が一つの基礎概念になる。古典的な変数に量子分解を施すと互いに非可換な量子成分の和に分解するため、そこに現れる非可換構造に基づく様々な解析が可能になる。従前の量子分解は主として1変数直交多項式に並行して議論されてきたが、これを多変数化することが大きな目標となる。本研究ではグラフに関連する次の課題を通して目標の達成をめざす。これはネットワーク数理にも貢献する。 (1)成長グラフのスペクトルに付随する多変数直交多項式 (2)グラフの2次埋め込み (3)多変数直交多項式を特徴づける量子成分の非可換構造
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Outline of Annual Research Achievements |
量子確率論は非可換確率論とも呼ばれ、統計性の源泉を非可換代数とその表現に求めることを指導原理とする。そのための基本概念の一つが「量子分解」であり、古典的な変数を互いに非可換な量子成分の和に分解し、そこに出現する非可換性を用いて、本来は古典論に属する諸問題を非可換解析の枠組みで扱うことを可能にする。大きな目標は、これまで1次元分布に付随する直交多項式に並行して議論されてきた量子分解を、多変数直交多項式との関連を視野に入れて多変数化することにある。本研究では、そのためのマイルストーンとなる次の3課題を解決することを目的としている。 (1)成長グラフのスペクトルに付随する多変数直交多項式:強正則グラフの直積に対して隣接行列と補グラフの隣接行列の2変量の分布(同時スペクトル分布)と付随する2変数直交多項式が導出される。この結果を、アソシエーションスキームに基づいて一般化するために、様々な問題を検討している。 (2)距離行列のスペクトルと2次埋め込み問題:グラフの距離行列を用いて定義されるQE定数はグラフの新しい不変量として注目され始めた。グラフの構造に応じたQE定数の公式の導出、QE定数によるグラフの分類、特別なグラフに対するQE定数の具体的計算などが進展した。車輪グラフのQE定数をある種の多項式の最小零点として決定した。また、頂点数6のグラフのうち素な非QEグラフをすべて決定した。 (3)多変数直交多項式を特徴づける量子成分の非可換構造:多変数直交多変数に対して拡張された量子分解を適用して得られる量子成分の交換関係から、逆に確率分布を特徴づける問題を扱う。特に、多変数マイクスナー分布を手掛かりとしている。まず、1次元の場合は証明が完成し、特別な場合として正規分布、ポアソン分布、パスカル分布などが量子成分の交換関係で特徴づけられた。引き続いて、多次元への拡張に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題(2)では、グラフの新しい特性量として導入したQE定数の認知度が上がり、ポーランドやインドの研究者が新しい結果を出してきた。本研究としても、QE定数によるグラフの分類について(インドネシア)やQE定数の具体的公式の導出(ポーランド)について国際共同研究として成果が出始めた(arXiv論文)。これらは期待を上回るペースで進んでいる。一方、課題(1)では、アソシエーションスキームに基づく直交多項式の量子分解のための枠組みが十分ではなく、基本的な構造の理解を進めている段階にとどまっている。課題(3)では、アメリカの研究者との共同研究で1次元マイクスナー分布に対する結果が得られたので、これを多変数に拡張する作業を開始したところであり、より一般の多次元確率分布の扱いの見通しはまだ立っていない。 総じて、「おおむね順調に進んでいる」と評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(1)については、アソシエーションスキームの研究者との研究交流を深めて、代数的組合せ論と量子確率論の双方の立場から従前の知見を整理し、問題の正しい定式化を目指す。 課題(2)では、ポーランドおよびインドネシアの研究者との共同研究の成果が出始めたので、継続的に問題をよく整理してさらなる展開を狙う。前年度に引き続き、オンラインで議論しながら研究を進めるが、対面での議論の機会もとらえたい。 課題(3)では、従前よりアメリカの研究者と共同研究を進めてきたが、ようやく1次元の場合の特殊例が解決したところである。多変数の直交多項式は様々な場面で断片的に表れるので、そのような事例を収集しつつ、幅広く興味深い実例を収集することが必要になると考えている。
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